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第六話~家族との価値観のすれ違い

このお話は、一人の女性が投資を理解しながら、ウォーレンバフェットの考えに触れ、自分なりの投資スタンスを確立していく物語(フィクション)です。

投稿6:家族との価値観のすれ違い

かおるは、母・節子との対話を経て、少し心が軽くなった気がしていた。母が話した「つながり」の大切さや、お金との向き合い方は、かおるにとって新しい視点だった。節子の「心の声に耳を傾ける」という言葉は、かおるの胸に深く刻まれていた。


その夜、かおるは夕食後の片付けを終え、真司がリビングでテレビを見ている横に腰を下ろした。

「ねえ、真司。」
かおるは話を切り出した。

「ん?どうした?」
真司はテレビから目を離さず、返事をした。

「この前、お母さんと話して、いろいろ考えたの。やっぱり私たち、効率ばかりを重視して、お金の使い方や投資に関して本当に大事なことを見落としてる気がするのよ。」
かおるは真剣な表情で言った。

真司は少し眉をひそめ、ようやくテレビの画面から目を離してかおるに向き直った。


「またその話か。効率的にお金を増やすことが悪いわけじゃないだろ?僕たちのやり方は正しいと思うけど。」
真司は少し困惑した様子で答えた。

「そうかもしれない。でもね、最近、効率だけじゃなくて、もっと考えなきゃいけないことがあるんじゃないかって思い始めたの。」
かおるは、言葉を選びながら慎重に話を続けた。

「たとえば?」
真司は少し不満そうな顔で尋ねた。

「たとえば…私たちは、手数料の安いインデックス投資をしてるけど、そこに何か大事な価値があるのか、最近疑問に思うの。お母さんが言ってたんだけど、お金ってただ増やすだけじゃなくて、どう使うかが大事なんだって。投資も同じよ。私たちが本当に応援したい企業に投資して、その成長を見守るのも大事なんじゃないかって。」

かおるは、母・節子から学んだ「つながり」の概念を少しずつ真司に伝えようとした。


「投資は感情でやるものじゃない。」
真司は短く答えた。

「手数料が低くて、効率的に運用できればそれでいい。感情に振り回されて、お金を無駄にするのは間違ってる。そんなことに振り回される必要はないんだ。」

その言葉に、かおるは少し悲しくなった。真司はかおるが話そうとしていることの意味をまだ理解していないようだった。

「でも、私たちがやっていることって、本当に私たち自身の投資なのかな?」
かおるは少し声を落としてつぶやいた。


「ただYouTubeやインスタで見た情報に流されて、手数料が安いからって理由だけで選んでる。それって、自分の意志でやってることとは違うんじゃないかって思えてきたの。」

「じゃあ、どうするつもりなんだ?」

真司は少し苛立ちを隠せないように聞いた。


「インデックス投資が効率的じゃないっていうのか?無駄に高い手数料を払って、感情に振り回された投資をするってことか?」

かおるは言葉に詰まり、何も言えなかった。確かに、真司の言うことも間違ってはいない。彼女自身も手数料の安さを重視し、効率的にお金を増やすことが重要だと信じていた。しかし、母との対話を経て、心のどこかでそれだけでは満たされない感覚を抱いていたのだ。

「私たちの考え方が違うのはわかってる。でもね、私はもっと自分自身の考えを持って投資をしたいのよ。効率だけじゃなくて、本当に自分が大切にしたいことにお金を使いたいの。」

かおるは静かに、しかし確信を持って言った。

真司はしばらく黙っていたが、やがてため息をついた。
「まあ、かおるがそう思うなら、それでいいんじゃないか。でも、僕は今のやり方を変えるつもりはない。」


「わかってる。あなたの考えも尊重するよ。」
かおるはそう言って、少しほっとしたような気持ちになった。


その夜、かおるは布団の中で、母の言葉と真司との会話を思い返していた。自分の考えが正しいのかどうかはわからない。

けれど、今の自分に必要なのは、自分の哲学を持つこと。お金を通じて、何に価値を感じ、どう人生を豊かにするのか——それをしっかりと考えることが重要なのだと、かおるは改めて感じていた。


次回予告
かおるが自分の哲学を模索する中で、さらなる気づきが訪れる。効率や手数料だけでは得られない、本当の価値とは何か?その答えに少しずつ近づいていく…。



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