第6回「ムビシナ」参加シナリオ

こちらは第6回「同じ映画から作る千差万別TRPGシナリオ」「ムビシナ」へと投稿させていただくシナリオです。
今回の題材は「映画 聲の形」。
使用システムは毎度恒例「ふしぎもののけRPG ゆうやけこやけ」(追加サプリメント「よいやみこみち」使用)となっております。
それでは、下部よりどうぞ!


もののけみすてりぃ~聲なき月夜に兎鳴く

●登場人物
とても力の強い変化「美古兎」

耳に障害のある女の子「宮古 梢」

梢のクラスメイト「花咲 澄」

●必要時間2~3時間くらい

●【ふしぎ】と【想い】
このシナリオで語り手が各[場面]に使える【ふしぎ】は20点、【想い】も20点です。

●物語の概要
[場面]数:4つ

 それは満月の夜のこと、ある小学校のクラスの子供たちが、2人を除いて全員姿を消してしまいました。
 警察の捜査も始まり町が騒がしくなる中、PCたちは姿を消さなかった2人の少女「宮古 梢」と「花咲 澄」と出会い、クラスメイトが消えてしまった原因を2人が知っているらしいことが解ります。
 事件の原因が「美古兎」と名乗る兎の耳を付けた少女と、彼女に不用意なことを告げてしまった梢にあると語る澄。ですが、梢はどうもそれ以外にも何かを隠しているようで……?
 PCたちは2人に協力して、彼女たちのクラスメイトを見つけることができるでしょうか?そして、事件の真相とは……?

●はじめに

 このシナリオはゆうやけこやけのシナリオを何度か遊んだことがある人が語り部をした方が無難です。
 [けんか]をする物語ではありませんが、物語のラストはとても力の強い変化を相手に頭を使って話し合いをする必要があります。心に働きかけたり、夢に働きかける【特技】を持つPCがいると活躍できるでしょう。
 また梢と澄はそれぞれ微妙に異なる事件への見解を持っているのが同行する内に解りますが、この物語で大切なのは“どちらが正しいかを決めることではない”ということは覚えておくと語り手は楽になるでしょう。
 

●語り手の準備

 このシナリオには以下の3人のNPCが登場します。

▼とても力の強い変化「美古兎(みこと)」
へんげ4  けもの7  おとな2  こども4

追加特技
《なかよし》 《だっしゅ!》 《あそぼ!》

弱点
《さびしがり》 《せっかち》 《あまえんぼ》

山神としての特技
《きりのなか》 《にわかあめ》

 とても長生きをする中で、土地神様に匹敵するほどの力を身につけた変化です。本来ならば他の助けを受けなければ活躍しにくい兎の変化でありながら、単独で今回の事件を引き起こしているようです。
 土地神様に匹敵するほど高い能力値に加え《しらんぷり》で自分の知っていることをごまかしてみせたり、危険を感じたら《だっしゅ!》で一目散に逃げだしてしまうため、彼女から話を聞くには一工夫する必要があります。
 どうやら梢と澄は以前から彼女の知り合いだったようなのですが……?
  

以下の2人の能力値はどちらも
へんげ0 けもの1 おとな1 こども3
です。

▼耳に障害のある女の子「宮子 梢(みやこ こずえ)」

 最近町へと引っ越してきた小学生の女の子で、耳に重い障害があり、ほとんど聞き取りは出来ず、発話もはっきりとは出来ません。
 意思疎通の際は手話で、手話が分からない人にはスケッチブックを用います。あまり積極的な性格ではありませんが、クラスメイトとの付き合いも美樹に半ば投げている部分があったようです。
 クラスに編入してから、色んなトラブルに見舞われていたようで、変化たちにも最初は距離を取りがちです。

▼梢のクラスメイト「花咲 澄(はなさき すみ)」

 梢の転入してきたクラスの中心的な女の子で、とても感情豊かな性格です。思ったことはすぐ口にしてしまいますが、それは相手と自分なりに向き合おうとする姿勢の表れでもあります。
 梢の学校生活を手伝うようにクラスで任されていたようなのですが、その頑張りを認めてもらえないことや、肝心の梢が積極的でないことに鬱屈としたものがあったようです。
 事件の原因が美古兎と梢にあると主張しますが、どうも何かを怖がっているような節もあります。

 

最初の[場面]
場所:小学校の校庭
時刻:昼
どういう[場面]:PCたちが失踪事件について知り、宮古梢と花咲澄と出会う場面です。

 梅雨も明け、暑さがどんどん増していく夏のある日。
 PCたちは大人の人たちがあちこちを調べたり歩き回ったりしている、小学校の校舎を見つめていました。
 例年通りなら、昨日の夜は夏休みを利用して子供たちが一晩学校にお泊りをする日。ご飯を作ったり、ゲームをしたり、校庭でキャンプファイアーをしたり。PCたちもこっそり混ざりこんだりして楽しんできました。
 ところが何故か今年はそれらが行われず、せっかくの満月だったのに残念だ、日を間違えたかなと覗きにやって来ると、大騒ぎになっていたのです。
 PCたちが大人の人たちから直接話を聞くのは難しいでしょう。動物の姿では現場から追い出されてしまうでしょうし、変身しても子供だけでうろうろしているのを注意されてしまうかも知れませんし、仮に話は聞けても重要な話まではしてくれないでしょう。
 「ゆうやけこやけの世界なら、変化について詳しい警官の人とかいないかな?」と思うかも知れませんが、流石に都合よくここでは登場してくれませんしね。
 《まねっこ》で大人の人に変身する、《こそこそ》や《ぬきあし》で気付かれないように話を聞く、《こころのぞき》でこっそり心の声を聞くなど【特技】を使うと昨夜に何が起こったかぼんやりとですが解ります。

●昨夜、学校にお泊りをしていたクラスの子供たちが、丸まる姿を消してしまったらしい。
●無事だったのはお泊りを休んでいた女の子が2人だけ。

 特技を使って情報を得るか、この場を移動しようとすると、女の子が2人、自分たちと同じように校庭の様子をこっそりうかがっているのに気付きます。
 話しかける場合、昨夜が楽しみで人間の姿になったまま戻るのを忘れていた……というように、人間の姿にコストなしで変身を終えていてもかまいません。積極的に物語を進めようとするPCには夢を遠慮なくあげましょう。
 様子を見る場合も、向こうもこちらが校庭を見ていることに気付いて接触をしてきます。2人の小学生「宮古梢」と「花咲澄」と[出会い]の処理をしてください。

「あなたたち……どこの子供?うちの学校にいたっけ……まあいいわ。早くこっちに来て。見つかったら私たちまで家に帰されちゃうわ」

 澄はそう言って、PCたちを自分たちの秘密基地へと案内します。また、失踪事件について調べていないのならここで澄の口から道すがら説明を受けます。
 この時、梢は澄の後ろに隠れ気味で、一切言葉を発しません。PCたちが話しかけても「曖昧に笑っている」等と返してください。
 2人と一緒に秘密基地へと移動したら、場面を終了してください。

[場面]の終了:梢と澄と知り合い、校庭を離れたら場面を終了します。


第2の[場面]
場所:梢と澄の秘密基地
時刻:昼
どういう[場面]:梢と澄の秘密基地で、失踪事件の真実?について聞かされる場面です。

 小学校から少し離れた、さびれた神社の裏手。そこに梢と澄の秘密基地はあります。
 秘密基地とは言いますが、子供が作って喜ぶタイプの珍しいものや面白そうなものは全然なく、適当に葉っぱや枝を組み合わせただけの簡素なものです。梢と澄にPCたちまで入ると、屈んでも狭くてぎゅうぎゅう詰めになってしまいます。秘密基地の殺風景さについて尋ねても、梢は曖昧に微笑むだけで、澄の方も「今はそれどころじゃないから」とごまかします。
 澄は消えてしまったのが自分たちのクラスメイトであると明かした後、「あんたたち、知ってる?なんでみんなが消えちゃったのか……」とPCたちに失踪事件の真相(?)を話し始めます。どうやら澄はそのことを誰かに伝えたくて仕方なかったようです。

●つい先日、この秘密基地で頭に兎の耳のようなものをつけた変な女の子と出会った。
●梢がその女の子にクラスメイトへの不満を漏らしたところ「美古兎」と名乗った彼女は「じゃあ何とかしてあげよう」と言い出した。
●満月の夜と重なる学校へのお泊りの日、2人には休むようにと告げると彼女は人間とは思えない速さで山の方に駆け去ってしまった。
●急に怖くなり、具合が悪くなったのもあってお泊りを休んだら、クラスメイトたちは姿を消してしまった。

 もしこの話が本当だとすると、恐らく事件は変化による仕業です。【けもの】か【おとな】で4以上を出すことが出来れば、PCたちは美古兎という名前のとても力が強いけれどほとんど土地神様や他の変化と関わることのない変化がいることを知っています。判定に成功したPCには[夢]をあげてください。
 梢にそれが事実か確認してみても、やはり梢は曖昧に微笑んでいるだけです。

「駄目よ。その子、耳が聞こえないの。言葉も上手に話せないのよ」

 ここでPCたちは梢が耳に障害を持っていて、発話もうまくできないということに気付きます。
 もしもPCたちが【おとな】で判定して8以上の数字が出れば、そのPCは梢が手話をしていたことを理解していたことにしても良いです。その場合、梢はそのPCに好意を抱いてくれるので【つながり】を1つ多めに取っても構いません。
 さて、事件に美古兎が関わっているのは確かなようですが、澄の話だけだと色々と疑問点があります。耳もよく聞こえないし発話も上手くできない梢がどうやってクラスへの不満を美古兎に伝えたのかとか、その時に澄はどうしていたのかとか……。
 言葉のことを聞くと澄は「え、えっと、そう、なんか大きな耳を動かしたら、心の声っていうの?何も言ってないのに宮古さんの気持ちを読み取ったみたいで……」と、どこか不自然な感じに答えます(これだと「梢が不満を“漏らした”」とは言えない気がしますね)。
 また澄がどうしていたかと問いかけると「わ、私は怪しい人が怖くて、宮古さんに帰ろうよ!って何度も言ったんだけど……」と答えます。
 梢に普通に聞いても、コミュニケーションは上手くいきません。【つながり】が2以上の強さである場合は【けもの】か【こども】で6以上の数字を出せば、こちらの意図を正確に梢に伝えることはできます。ただ梢は手話でもスケッチブックでも、基本的には澄の言った内容を繰り返すだけです。
 一応の真相を知ることが出来たら、この場面を終えてください。

[場面]の終了:澄から真相(?)を聞いたら場面を終えてください。


第3の[場面]
場所:梢と澄の秘密基地~美古兎の住む山
時刻:昼~夕方
どういう[場面]:梢と澄から本当の事件の真相と、互いの気持ちを聞き出し、美古兎の元へと向かう場面です。

 さて、それでは一足先に秘密基地で何が起きたのか、どうして美古兎はクラスメイトたちを攫ってしまったのか……その真相の方を先にお話ししておきましょう。
 この秘密基地は2人が仲良く遊ぶための場所ではありません。澄が梢と一緒に過ごしていて感じる不満をこっそりとぶちまける為の場所です。
 澄は梢がクラスに溶け込めるように手伝いを先生から任されていました。ですが、肝心の梢は消極的だし、クラスメイトは任せきりで手伝ってくれないし、先生も家族もその頑張りを全然褒めてくれないことに、日々不満を募らせていたのです。それを2人だけで愚痴るための場所がこの秘密基地でした。
 梢の愚痴を聞いていたのが美古兎です。彼女は山に住んでいますが、この神社の神様のフリをしてお供え物を得るということもしています。なので、時々山から下りてきては社で昼寝などをしていたのですが、そこで梢と澄に出会ったというわけです。
 ただし、澄はまるで梢に罪を着せようとしているように見えるので、PCたちは彼女に悪印象を抱くかも知れませんが、もう一度しっかり考える時間をあげてください。彼女はここで愚痴を言っていて、それを美古兎が聞いていた……けれど、攫われたのはクラスメイトたちだということが、しっかりと伝わるように。
 澄が梢に抱いている友情や使命感は本物です。彼女なりに、必死に梢に向き合おうとしているからこそ、それを否定されて苦しんでいたのです。秘密基地で口にしていた愚痴とは「みんな宮古さんの気持ちを一度しっかり考えてみたらいいんだ!」というものだったのです。
 それを美古兎が実行してしまった恐怖感から本当のことを警察にも言えず、梢に罪を着せるようなことを言ってしまっているのです。決して褒められた気持ちではありませんが、ただでさえストレスの溜まっていた子供が受け止めるには重すぎる事実だということも、解ってあげて欲しい所です。
 さて、2人から本当の真相を聞き出さないと、事件を解決するのは難しいです。一応、次の場面で美古兎がとぼけてたりごまかそうとするたびに梢と澄に確認する形でも解決はできますが、せっかく機会があるのですから、PCたちには2人の気持ちにしっかり向き合ってもらいましょう。
 まず梢は【つながり】が2以上あるPCが根気よく【けもの】か【こども】で説得する、《こころのぞき》や《おねがい》で秘めた気持ちを解き明かすことで本当の気持ちを表します。
 彼女は澄に本当に感謝をしていますが、これまでの色々なできごとで何処か人との【つながり】を諦めてしまっているところがあります。だから、無理に本音を伝えたりしないまま、澄の言うとおりに自分が悪かったことにしよう、自分の為を思った澄を庇おうとしています。それに、彼女自身も美古兎が何かしようとしていることは察しつつ、それを否定するようなことを言わなかったことも気にしています(ここは結構重要です。つまり「否定する以外の言葉」を何らかの形で美古兎に伝えたことを、覚えておいてください。)
 これらの気持ちを明らかにすれば、澄は本当のことを口にしやすくなります。可能ならば、梢の方の気持ちが先に澄に伝わるよう、語り手は上手く調節してあげてください(場面が始まった時に、梢には本当は語りたいことがあるようだ……とさりげなく伝えるとか)。
 澄の方も【つながり】が2以上あるPCが【おとな】で説得する(6以上を判定で出す)か、《こころのぞき》や《おねがい》で気持ちを探る、《ゆめまぼろし》で真相を語ってもらう、少しひどいかも知れませんが「本当のことを言わないとみんな帰ってこない」など《うそつき》を使うなどすると、本当は自分の愚痴が美古兎に聞かれてしまったこと、自分のせいでクラスメイト達が消えてしまって怖かったことを告白します。
 梢がしっかりと自分の思いを表明し、澄が本当のことを話せるようになれば、2人はクラスメイトたちを返してもらうように美古兎に会いに行こうと言い出します。もちろん、PCたちもそれに同行するべきでしょう。積極的にその提案をしたPCには[夢]をあげて、いよいよ最後の場面へと移ります。

[場面]の終了:美古兎の元へと向かうところで場面を終えてください。


最後の[場面]
場所:美古兎の住む山
時刻:夕方
どういう[場面]:美古兎と対決し、クラスメイトたちを返してもらう場面です。

 美古兎の住む山に辿り着くと、すぐに美古兎が姿を現します。
 美古兎はとても力が強く【けんか】で解決しようとすると高い【けもの】の数値でこてんぱんにしまいます。またそもそも争いを避けようとするので《だっしゅ!》で逃げることも躊躇しません。この事件を解決するには、2人の少女の協力が不可欠なのです。
 彼女は何故か大量の亀たちを連れていて、飄々と梢と澄、PCたちに話しかけてきます。

「なあに?私と遊びたいのかしら。今日はもう遅いからお家に帰った方がいいわよ……でないと、帰れなくなっちゃうかも?」

 梢たちが互いの気持ちを表明できているなら、梢はスケッチブックで、澄は言葉で持ってクラスメイトたちを元に戻してほしいとお願いします。

「クラスメイト?知らないなあ、何かの間違いじゃない?」

 美古兎は最初《しらんぷり》の【特技】を使ってごまかそうとしてきます。決定的な証拠を出さない限り、彼女は事実を認めずとぼけ続けます。ただし、彼女は意地悪をしたい訳では無いので、まだまだ言い訳ができるような証拠でも素直に事実を認めます。
 ここで梢がスケッチブックを使って会話していることを思いだしてもらいましょう。美古兎と出会った時に彼女に向けて見せたページを提示すれば、美古兎は素直に自分がクラスメイトたちを攫ったことを認めます。可能なら、幾らでも言い訳はできる(それこそ、後から書き足したとか言えばいいですしね)のを美古兎はしていない、というのがPCたちに伝わるようにしてください。

「けどね、君たちのことをちっとも気遣ってくれないクラスメイトたちなんて本当に必要?梢ちゃんは毎日苦労してたんだよね?澄ちゃんだって不満だったんだよね?どうして助けてあげなきゃいけないの?」

 美古兎は《つきのひかり》の【特技】を使って、クラスメイトたちを亀に変えて引き連れています。亀の聴力は、人の20分の1……澄が言ったように「梢の気持ちを味合わせている」訳ですね。そんな彼らの前で、2人の本音を明かさせようというのです。
 2人は自分たちが本当はそれを望んでいたのかも知れないと思って、くじけそうになります。【おとな】で判定して6以上を出して説得・応援をする、あるいは《だいじょうぶ》や《やってやって》、《すりすり》や《おねがい》などの【特技】を使うなどして、2人の気持ちを奮い立たせてください。【特技】を使わないで言葉で応援する場合は、梢には【つながり】が2以上必要なのは忘れずに。
 梢は色んなことを諦めて消極的に振舞っていたことで、今回の事件の遠因になってしまったことを悔いて、やり直したいという想いを強く表します。
 澄も梢が何を考えているのか分からない不安を周りにぶつけていたことを認め、彼女のせいにしてクラスメイトたちをひどい目に遭わせたくないと美古兎に必死に訴えます。
 PCたちも2人を応援しつつ、町が大騒ぎになっていることやクラスメイトたちにも家族があること、そして2人がそもそも苦しんでしまっていることなどを告げて援護をしましょう。
 梢と澄の心のわだかわまりがすっかり解消されて、2人が美古兎に本音を伝えることが出来たら、美古兎はにんまり笑って「だ、そうですよ?」と亀たちに告げます。
 すると、突然周囲がぐにゃぐにゃと歪み始め……気付けば梢と澄、それにPCたちは真夜中の校庭に立っています!お月様は綺麗な満月、クラスメイトたちは人間の姿に戻ってキャンプファイアーの準備をしています。

「あれ?宮古さんに花咲さん、今日はお休みじゃなかったっけ」
「何でもいいよ、いまからキャンプファイアーをするの。一緒にやろうよ」
「これまで、あんまりこんな風に話しかけなかったから、仲良くなりたいな!」

 呆気にとられつつも人の輪の中に加わっていく梢と澄。PCたちの元に(耳を変身して隠した)美古兎が近づいてきて言います。

「《つきのひかり》の力を借りて、あの子たちを動物に変えていたけれど……私の力は“相手も望んでいないと”効果がないわ。あの子たちは、梢ちゃんと澄ちゃんにどう歩み寄っていいか分からなかっただけで、本当はずっと気にかけていたのよ。だから、梢ちゃんが普段どんな世界で生きているのか教えてあげるといったら、みんな賛同してくれたの」

 亀の変化は時間を僅かに操る力があります。亀に変身したことで、それらの力を合わせたクラスメイトたちによって時間が巻き戻され、梢たちが改めて受け入れられたのだと美古兎は言います。もっともクラスメイトたちはその記憶を失ってしまっているようですが(《ときのらせん》の記憶消失ルールの応用です)。

「もちろん、こんな風に何もかも上手くいくなんて滅多にないわ。許すって、とても難しいことだからね。自分のことも、他人のことも」

 どこか悲し気に呟く美古兎。もしかしたら、彼女も過去に何かを抱えているのかも知れません。PCたちはどうするでしょう。美古兎のことも誘って、キャンプファイアーにこっそり混ざってもいいでしょう。梢や澄の笑顔を間近で見るチャンスです。
 満月の下、楽しみにしていたキャンプファイアーを楽しみながら、梢と澄の本当の笑顔……しがらみや悩みから解放されたそれと共に、このシナリオを終えることにしましょう。

[場面]の終了:失踪事件が解決し、梢と澄がクラスに改めて受け入れられたら場面を終えてください。


後日談

 楽しいキャンプファイア―は終わりましたが、梢と澄は夜中にこっそり抜け出したことを怒られてしまいます(まあ、クラスメイトたちが行方不明になっているのに1日中外にいたのよりはマシでしょうが)。梢の側に澄が居たこと、クラスメイトたちが(これまでが嘘のように!)2人を庇ってくれたことで、大事にはならかったようですが。
 怒られたと言えば、美古兎も土地神様にずいぶんと絞られたようです。結果的に2人の少女の為とは言え、間違いなく大事件ですからね。PCたちは彼女をフォローするでしょうか?それとも責任は果たすべきと、粛々と証言をするのでしょうか?
 それからしばらくして、PCたちは梢と澄が大勢のクラスメイトに囲まれ、中には手話の勉強をしている子たちもいるのを見かけるでしょう。もちろん、これからも大変なことは沢山あるでしょうが、前に進むことを覚えた梢と、その傍にいる理由を再確認した澄ならばきっと大丈夫でしょう。
 ただ、もう愚痴を言う必要は無いのに、梢と澄は時々2人きりで秘密基地へと向かうようです。その理由は……わざわざ言うのは野暮ですね。
 それでは、お疲れ様でした!


蛇足気味のあとがき

 ムビシナに参加させていただくのも今回で4回目。今回はゆうやけこやけ以外のシステムを使うことを考えたりと、個人的に最も苦戦した回となりました。
 書きにくかったという訳ではありません。むしろ、実は放映前に1本シナリオを書き上げてたりしました。それで放映終了直後にアップとか考えてたんですが……映画版では成人式のシーンが無いことを完全に忘却していました(笑)。美代子ちゃんが直花に指輪を渡す話だったので「ムビシナ」のテーマには合わないなと敢無く没に……美代直はいいぞ(負け惜しみ)。
 という訳で、百合婚約の話からロリ×ロリの話になりました(最低)。梢ちゃんは西宮さんと直花、咲ちゃんは石田くんと美代子ちゃんをそれぞれ混ぜたキャラなのですが伝わったでしょうか(読み返すと咲ちゃんの方が直花風味が強い気がする……)。
 このお話はご都合主義な解決のように見えますし、それを意識して書きもしましたが、逆に「自分を許すのも他人を許すのも難しい」というのを裏テーマにしています。これは「聲の形」原作のテーマの1つだと勝手に思ってますね。
 それでは、貴重な機会をありがとうございました!
 

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