宝箱全部食べるおじさんによる「ウィザードリィ#1リメイク版」のファーストインプレッション

嘘か誠か本当の話。いやもうびっくりですよ。GOGでもリリースされたようですがそっちは省略。

Wizardry: Proving Grounds of the Mad Overlord


https://store.steampowered.com/app/2518960/Wizardry_Proving_Grounds_of_the_Mad_Overlord/

アーリーアクセス(開発途中)版ながら3,400円というちょいお高めな価格設定ということもあって「いいから購入だ!」みたいなwizフリークを除けば気にはなるが様子見という方もそれなりにいるのでは? と思い、早速購入して遊んでみました。以下感想と過去作との違いと与太話。なお前述の通りアーリーアクセスなので列挙した感想は今後追加/変更される可能性大。

ちなみにこのnoteを書いている人は昔ニコニコ動画で「出された物は全部食べるウィザードリィ」を投稿していた宝箱全部開けてたマンです。そうだね、変態だね。ついでに言うとリアルはゲーム開発者なので多少のゲーム業界の事情も知ってます。その知見もふまえて書いている個所もちらほらあります。

〇ゲームの仕様
・言語
日本語環境だと英語のみだが日本語へのローカライズは予定にあると告知済。が、この作品に目をつけているひとは大体日本語なしでもいけんじゃね? と思う。ローカライズ版が出ること自体は新規ファン層取り込みが期待できて感謝と賞賛に値する。いいぞもっとやれ。

・呪文の綴り
確認した限り全部トゥルーワード(DIOSとかHALITOとか)。流石に一部だけ違うとかもなさそうなので全部オリジナル準拠だろう。

・BGMとモンスターのイラスト
X(Twitter)でも驚いている人がいましたが、BGMはファミコン版#1のアレンジでモンスターイラストも末弥さん準拠でした。ただし1階をうろちょろした限りでもオリジナルっぽいモンスターイラストもあったので完全準拠ではない。ってかローカライズが予定されてたりと日本のファンバリバリ意識してていいね。

・(追記)BGMとイラストについて
前述の通り完全準拠ではないにせよ、BGMやイラストにファミコン版のアレンジなどと思われる個所を確認している。以下参考動画(BGM)。


・セーブのタイミング
・リセット時の挙動(正確にはゲームを強制終了後の挙動)
セーブは何らかのアクション時に毎回っぽい? リセット後は最後のセーブ直後からっぽい。戦闘中にリセットすると戦闘をやり直す羽目になるがモンスターは変わる。モンスターと遭遇前から再開ではないのと減ったHPはそのままなのでリセット多用する人は厳しい仕様。オプションでも選べないし。

・ダンジョンのワイヤーフレーム描画
ない。ついでに移動や戦闘のアニメーションOFFもない。雰囲気は出てるのであり。

・毒を受けた時のHP減少
ランダム。1歩毎確実に減る作品もあるので有情。

・壁に埋まった時の扱い
埋まってみないととなんとも(埋まりたくはないが。乾物はそこでかわいてゆけ)。オプションでも選べないので恐らくはApple/PC版と同様にロストと推測。

・マウスとコントローラー操作
マウスでの操作は一切できずデフォルトはキーボード。ただし呪文詠唱は選択式で入力式はない。コントローラーは設定でXBOX/PS/Steamdeckを選べる

・全滅時の救出隊
そんなものはない。有料で救出してくれる作品もあるよね。

・街中での呪文詠唱
できない。できる作品もあるが石垣環の作品を知っている(好き)ので使えないのは当然という意識がある一方で不便という感覚もある。

・初期装備と所持金
キャラ作成時に職業に応じた初期装備があり売って換金も可能。所持金はなく所持金はキャラ単位ではなくパーティ(もしくはプレイヤーたるあなた)管理で「金を集める」みたいなコマンドがない。

・アイテムの性能
テキストで性能が表示されており便利。スペシャルパワーの内容まで記載されるかどうかは未確認。

・種族「ホビット」
ホビット自体がおらずホビットの代わりにハーフリングが登場。まあこれは仕方ないか(ホビットはJ・R・R・トールキンの創作物なので云々かんぬん)。

・その他の違い
戦闘アニメーションがありくどくはないもののオフにはできない。宝箱の罠識別と解除の確率が表示されるのはとても便利。アンバサはこっち見んな。

自動で呪文による回復、自動戦闘、ポートレートの差し替え、キャラの順番入れ替え、呪文の名称変更機能はない(DIOSからHEALにしたい人もいるかもしれんので一応触れておく)。

若干不便なのが街中でキャラのステータスを見るにはトレーニングセンターでしかできないという点。

職業によって前衛/後衛(もできる)向きや呪文を使える/使えないなどがアイコンで表現される。

戦闘バランスは恐らくApple版準拠?と思われる。1階からモンスター2グループとか平気で出て来るので。

マラーとマロールのどちらかはまだ分からないが、基本Apple版をベースにしているようなので恐らくはマラーと推測(が、これも現状ローカライズはないので一切不明)。同じくローカライズされていないせいで所持金がない状態で蘇生を依頼しても「お金足りないよ」と言ってくれるだけという。寺院の態度が軟化しているように見えるしついでに追い出されもしなかった。PC版のマニュアルネタである蘇生割引セールがあるかはまだ分からない。

なお有名なACバグとささえのたてが出ないバグはファミコン版特有なのでまず問題はないと思われるし、PCエンジン版独自のクリア時の宝箱開封(無視した)率とかは多分採用されていないと思われる。

〇オプションについて
オプション機能が充実しており好みで常時変えられる。なお基本ONにするとApple版に準拠するっぽい。英語表記なのとApple版やったことないので推測入ってます。

・ミニマップを表示(ONで非表示)
・デュマピックを唱えるとマップを表示(ONで座標のみテキストで表示)
・キャラ育成時のボーナスが固定(ONでランダム)
・レベルアップ時のステータスアップは任意に振り分け(ONで年齢を加味してランダムで増減)
・宿泊時の効果や費用を見直して老化の代わりにVIMが影響を受ける(ONで費用に対する効果が変わり老化は宿泊期間による)
※OFFの場合宿泊するたびにVIMが減る可能性があるため宿泊代(効果)の高い部屋の方がリスクが少ない
・キャラクターがゲームのヒントやヘルプを呟く(ONで話さない)

ちょっと分からないのがこのVIM。キャラクター作成時に自動的に割り当てられるが0になるとどうなるかが分からない。健康度みたいな扱いのようなので恐らくはロストすると推測されるが、宿泊時以外に何をしたら減るのかや減る度合いも分からないので評価しにくい。

便利なのはキャラ作成時のボーナス。さすがにボタン一発ではないが命名前にランダムで付与されるので、気に入らなければキャラ作成開始→取りやめ→開始で幾らでも選べる。5分くらいやったが20以上は出なかった。60とかあるのかしら。

オプションではゲーム中の画面右下にApple版の画面を常に表示できる。やや不便な点の1つに現状ゲーム中常に表示される画面下部のキャラ一覧に職業名やアイコンがないが、このApple版の画面を併用すれば確認できるのであなたのプレイスタイルによってApple版画面は消しても消さなくてもいいだろう。

〇気になること(気になっている人が多いと思われる不安要素)
で、結局これは正式に許諾を得たものなの? という点。ウィザードリィは版権問題を長年抱えているとされており、正史シリーズの1~5作目と6作目以降では版権の扱いが異なり差し当たって6作目以降は株式会社ドリコムが所有していると宣言しそのポータルサイトもある。

逆に言えば1~5作目は誰が権利者なのか? という話が長年ファンの間では語られていた。良く分からない個人や団体が所有しているのではとか、バラバラで誰が権利者が不明とか、権利者は分かっているが話に応じてくれないとか、大金を吹っ掛けられたとか、移植時に難癖を付けられて断念したとか、現にSteam版五つの試練のリリースに影響があったのはこれらの問題が云々とか。ただいずれも憶測と推測と邪推交じりで誰も答えを持っていない。私が知る限り。

翻って本作品のストアページには”SirTech Entertainment Corp“の記載がある。元々ウィザードリィを開発/販売していたのは"Sir-Tech"。全く同じ社名ではないものの、この似て非なる社名からして恐らくは正式に許諾を得ている現管理会社なのだろう。多分。そう思いたい。罠でもいい! 罠でもいいんだ!

前述のポータルサイトやそのX(Twitter)アカウントでは本作品については一切触れていない点を怪しむこともできるが、これは管理している版権が違うからなのだろう。だとするなら理解はできる。寂しいのはあるけども。

名前は伏せるが有名Vtuberがウィザードリィを配信した際の権利表記に”SirTech Entertainment Corp“があったそうだし、また様々なゲームニュースサイトで本件を危ぶむ声も見られないので、まあ多分「誰かが権利をまととめてくれた」のだろう。今はそう信じたい。

2023/9/17、18追記

X(Twitter)のWizardry公式アカウント(ドリコム管理)から下記アナウンスがあったので、権利周りは問題ないと思われる。やったぜ。

〇クレジット周りのお話
X(Twitter)でちらほらと見かけたので自分でも確認したところ、ゲームクレジットにファミコン版に関わった方々の名前の記載は一切なかった。ウィザードリィの原作者たる両者のお名前はあったが、間違いなく影響はあったであろう末弥純さん、羽田健太郎さんのお名前はなかったし遠藤さんも同様だ。

ゲームのクレジット表記に関しては、権利表記周りはかなり細かいルールがある。ゲーム起動時に〇秒載せろ、スキップの可否、エンドクレジットにも載せるなどなど。これは有料/無料のソフトウェア関係ない。「料金を支払うか表記のどちらかを選べ」みたいなのもある。

一方でスタッフ名には自分が知る限りルールは一切ない。開発/販売会社と個人間とで結んだ契約的な話はあるかもしれないが、ごく一般的な話では前述の通りルールはない。プロジェクト途中で入った/抜けた人、テスター、デバッガー、社員/バイト/契約など様々な経緯で載せる、載せないなんて独自ルールを設ける会社やプロジェクトもあるし、ゲームの評価やブランドに直接寄与しないからとかなり適当に済ませるケースも見てきた。そして名前が載らないパターンでよく見かけるのは移植やアレンジ版のゲームで、原作版のスタッフ名が省略されている場合、つまり今回のパターンだ。

何故移植やアレンジ版で載らないのか。確認が面倒だから、大体これ。クレジットは当人やその近しい人に掲載の有無と漢字やアルファベット表記の綴り確認をするのがお約束なので(まあ実際間違ったら失礼だよね)、すでに退職された方はもちろん亡くなられたパターンや連絡付かない云々を考えると「やめよっか」とされてしまうのだ。法的にも問題はないので省略されてしまうことも間々ある。

閑話休題。
これについては散々述べた通りルールはないので略しても問題はないのだが、今回に限っては載せた方がいいと考える。以下その理由。

・単純に“敬意を表して”
・本作は日本のウィザードリィファンを意識した作品なのは間違いなく、そしてこれらのファンはこれまでのウィザードリィの歴史を良く知っているのでファミコン版スタッフの名前が載っていない=権利的に怪しい作品と解釈されてしまっている現状を是正する目的

1つ目は私のお気持ち的な内容なのでどうでもいいが、後者は結構大事である。世の中には「楽しめれば経緯はどうでもいい」という人は確かにいるが、「ちゃんと許諾されていないと買えない、楽しめない」という人も確かにいる。金を払った先が碌でもない会社で、そいつらを儲けさせるくらいなら買わないと考える人たちだ。それらの懸念を払拭するためにも、胡散臭い金儲け目的で適当に作ったゲームなどと思われないためにも、アップデートなどしてぜひ掲載を検討して欲しいと強く願う。


ゲーム配信もするフリーのゲーム開発者。Twitter:https://twitter.com/daga_shiya Twitch:https://www.twitch.tv/daga_shiya