複数拠点で活動するということ

進んでいる東京、遅れている地方。若者たちは、より良い生活を夢見て地方から東京へ向かう。実は、私自身もそうだった。いや、地方の狭い世界を抜け出して、広い世界で自由闊達に生きることを選択したのだった。

その私自身が、今、家族と住む東京から、生まれ故郷の福島へ戻ろうとしている。正確に言えば、活動の主たる拠点を福島へ移し、東京を副拠点に位置付けようとしている。家族は東京に残すので、「積極的単身赴任」と言えるかもしれない。でもこれまでもそうだった。1年の半分はインドネシアにいたから。

そして、自分が30年以上関わってきたインドネシアにも、ジャカルタとスラバヤの2カ所に活動拠点(というか部屋を借りているだけなのだが)を昨年から起き続けている。

複数拠点を行ったり来たりする活動のしかたは、根無し草のように思えるかもしれない。なぜそのような形をとろうと思ったのか。

それは、一カ所にとどまっていると、新たな発想や柔軟な思考ができなくなりやすく、眼前の物事をなすがままに受け入れてしまう傾向が強くなってしまうように感じるからだ。それは、私自身の経験からも言える。

日本の地域づくりの歴史を見ていくと、住民が自らの意思で動いたところが持続的な地域づくりを行なってきている様子がうかがえる。

しかし、よく見ると、そこで中心になって動いているのは、地域から一歩も外へ出なかった住民ではなく、何らかの理由でその地域に移ってきた住みついたよそ者であったり、いったんは東京といった都会などの外へ出て戻ってきた出戻り住民だったり、親族や友人たちから借金して海外旅行へ出かけた経験のある若者たちだったりするのである。

外を知った人間である「風の人」と地域にとどまってきた「土の人」との交わり。あるいは、外を知った住民は一人の人間の中に「風の人」と「土の人」とを併せ持つことになるだろう。

高齢化が進む日本の地域に今必要なのは、「風」である。それも、地域を吹き飛ばすような強い「風」ではなく、地域に新しい息吹を与えるような適切な強さの「風」である。そんな心地良い「風」が日本中の地域に吹くと、それぞれの地域に見合った個性豊かな地域づくり活動が生まれてくるように思う。

果たして、今の日本はそのような心地良い「風」を生み出すような環境を創れているだろうか。

風は一カ所にとどまると止んでしまう。心地良い風を吹かせ続けられるような、お互いに負担を大きく感じない、軽〜いお付き合いのできる外部者がもっともっと必要な気がする。

私が複数拠点で活動する理由はそこにある。そして、それら拠点のどこか一つのために活動するのではない。自分にとって、どの拠点も大切な地域なのだから。その両方が幸せになるような解を求めていきたいし、各拠点にそうした働きかけをしていくことも重要だと考える。

自分の地域だけ、国だけ、民族だけ、宗教だけが幸せになればいいのだろうか。やれるところからやる、やれる範囲でやるのはもちろんだが、視野をもっと広げて、他者の利益が自分の利益になるという発想を持ちたいと思う。

日本にそんな「風」を吹かせたい。そんな「風」の仲間と活動したい。彼らと繋がって、日本に、世界に、無数の「活動拠点」が生まれると嬉しい。

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