おとなりさん。(仮)②#18禁
今日から大学がはじまった。
もろもろ、講義も決めて、サークルも様子見て。
なんか一日で、
人の多さとやる事の多さに疲弊した。
みんなめちゃめちゃ精力的に動いてたけど、よく平気だな・・・
ちょっともう今日は休もう。
そう思って一旦アパートに帰る。
ふとベランダに目をやる。
向かいの一階、ナツメさんは
今日も待ってくれている。
『ただいまです。』
『あっ!おかえりー!』
今気づいたような顔をする。
ずっとベランダで待っててくれたんでしょ?
そんな適度な距離感が、
特に今日は心地いい。
はじめて面通しをしてから
ナツメさんと毎日夕方に少し言葉を交わすのが
日課になっている。
田舎出身であること。
親はそれなりに金持ちで、
大学入学は親孝行の一環でもあること。
趣味は音楽作りで、
宅録でもういくつも曲を作ってること。
そんな他愛もない話を
ナツメさんはニコニコしながら楽しそうに聞いてくれた。
とはいえ一週間弱。
まだナツメさんのことは何も聞けていない。
でも今は、
そうやって自分の話を楽しそうに聞いてくれる存在が側にいてくれることが
すごく安心するし、救われる。
両親は、特に母親には
「知らない人と話しちゃダメ」
ってよく言われてたけど、
そうゆう繋がりって大事だって、
個人的には思うんだけどな。
『・・・ねぇシンイチくん・・・』
『ん?なんですか?』
ナツメさんに似合わずしおらしい。
『あ。
今わたしに似合わずって思ったでしょ。笑』
『あ、へ?
思ってない思ってない!笑』
『えー!笑
まぁいーや。
なんかね、シンイチくん、
今日から大学でしょ?
疲れただろーし・・・
お鍋やるから一緒に食べない?』
『えっ!いーんですか!?』
『え。笑』
『いや、え?笑』
『いや・・・
シンイチくん、素直だねぇ。笑』
『あー・・・うん。
実はめちゃめちゃ疲れたし、
正直、誰かと一緒にいたかったんです。』
『・・・ふぅん・・・』
『・・・え?笑』
『シンイチくん、かわいーね。笑』
『えぇっ!!
・・・なんすかそれ。笑』
『・・・おじゃましまぁす・・・。』
女のひとの一人暮らしの部屋。
初めてではないけれど、
なんだかちょっとドキドキする。
甘いにおいがする。
『そんなキョロキョロしても
何にもないよぅ。笑』
『いや、キレイです。』
『えぇっ!!
そんなキレイじゃないよぅわたし!』
『いや、部屋がですけど。笑』
『あ。』
『なんすかそれ。笑
ナツメさんて・・・』
『あ!ねぇ、
わたしシンイチくんの作った曲、聴いてみたい!』
『え?
あぁ、はい。
スマホにおとしてあるんで・・・
ちょと待ってくださいね。』
・・・はぐらかされた。
僕の作った曲を、
さも自分のものかのように楽しそうに、
幸せそうにナツメさんは聴いてくれる。
ナツメさんは僕のことをかわいいと言うけど、
ナツメさんの笑顔こそホントに幸せそうで、
かわいい。
『はいっ!
おまたせぇーできたよぉー!』
シンプルなとり鍋が大量にできあがった。
『てか・・・こんなにいっぱい・・・』
『うんだってシンイチくん若いから
いっぱい食べるでしょ!笑』
『じゃなくて・・・
もし僕が帰ってこなかったり断ったりしたら
どーするつもりだったんすか。笑』
『・・・・・。』
『・・・ナツメさん?』
『・・・そこまで考えてなかった。』
『ちょ。笑
ナツメさぁん・・・笑』
『いーじゃんっ!来てくれたんだからっ!
ささ、冷めないうちにお食べなさい。』
おばちゃんか。
『いただきまーす・・・
うんまっ!えっ!うんまっっ!!!』
『でしょぉー。笑
お料理はね、
「おいしくなぁれ、おいしくなぁれ」
って愛情注いで作ると
いっぱいおいしくなるんだよぉ。笑』
正直、鍋とかって今までよくわかんなかったけど・・・
こんなおいしい料理はじめてだ。
『・・・シンイチくぅん・・・笑』
『はふ?』
『ずっと「うんっ、うんっ」てゆってるよ?笑
やけどしちゃうからゆっくり食べなね。』
『・・・ふぁい。
ナツメさんも食べてね?』
『うん・・・
でもこんなに美味しそうに食べてくれるの初めて。
それだけでお腹いっぱいかも。笑』
『えっ!ダメですよー僕こんないっぱい食べれ・・・
いや食べれるかも・・・。』
『・・・・・笑
うん。好きなだけ食べてねぇ。
わたしお酒飲むけど、
シンイチくんどーする?』
『・・・いちお僕、未成年ですよ?笑』
『え?飲んだことないのー?』
『いやまぁ人並みには・・・』
『とりあえずビールでい?』
『いやちょと・・・』
まいっか。
おいしい料理と、ビールと酎ハイで
ほろ酔いになった。
なんだか心地よくて、
この時間がずっと続けばいいのになぁって、
あまり考えずに流れで聞いてみた。
さっき聞きそびれたこと。
『ナツメさんて何してる人なんですか?』
続く→