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ゴミ箱はゴミではない。

《新シリーズ始動w》
東京スケバン買物帖/今日買ったもの

カゴが大好きだ。
バッグも好きだが、最近は収納カゴにハマっている。
ちょっと小菓子やカトラリー類を入れておく器とか、机周りの書類や電源類をつっ込んでおく箱とか、そういうものを100均のプラ容器(←大きさが絶妙なので、いちばん便利ではあるのだが)やニトリや無印の収納シリーズ、あるいはアマゾンの空きダンボール(←いちばんやってはならんこと)ではなく、そこそこ素敵なカゴにしてみるとちょっと気分がいい。

と、そんなことを書くと、まるで「クロワッサン」や「素敵なあの人」に登場する、“ていねいな暮らし”を楽しんでいる憧れのマダムのようですが。そうではない。だらしない私にとって、そもそもインテリアとしてのおしゃれ収納など異次元の宇宙空間の話。でも、この1年、今まで以上に家にひきこもり続けている生活の中で、暇にあかせて少し模様替えなどしてみたり、久しぶりに新しい家具をチョイ足しなどしているうちに、自室の中での100均率がだんだん下がってゆき、逆にカゴ率は微増してきた。自分でも驚いている。

なんでしょうかね、丸めて足元に隠してある膝掛けや、常に床のどこかに放置されているカーペットコロコロを籐カゴに投げ込むだけで「余裕はないけど、余裕ぶっこいてるフリ」をできることに気づいたというか。誰に対して? もちろん、自分に対して。

カゴというのは、基本的には「暫定的な収納」というイメージがある。「とりあえず」放り込んでおき、その後、短時間のうちに「捨てる」か「残しておく」かが判断されるような類のもの。

でも、そこに投げ込まれるものの多くは、金庫にしまっておくような重要なものではないが、現時点、いつでも自分の手元に置いておきたい類の愛しいものだったりする。

たとえば着古したジャージのような、買い替えたいけど捨てたくないデジタルガジェットの類のような、途中まで書きかけたノートのような、自分自身の価値感における〈貴重品〉。
そんなことを考えるようになってから、なんとなくアマゾンの空きダンボールを箪笥がわりにするのはもうやめようと思うようになった(笑)。
そして、いくつか日用品を入れておく素敵なカゴを見つけてからは、ちょっと片付けが上手になった(あくまで自分比)。そゆことだ。
あと、カゴはかさばるからたくさん買えないのもいいな。収納上手をめざして、あれこれ買い揃えた収納用品に溺れ死ぬという汚部屋あるあるも回避できる。ははは。

そんな私にとって谷中の雑貨店・松野屋さんは、ヘンゼルとグレーテルにとってのお菓子の家みたいな存在。


日暮里・谷中銀座の階段、“夕焼けだんだん”を上がったところにある直営の小売店舗。天気のよい日、店の前にうわーっとカゴ類が並んだ光景はいつでも圧巻。遠くから眺めるだけでも、超絶トキメク

子供時代の銭湯にあったお椀形の脱衣かごなど、見るたび欲しくて欲しくてたまらないアイテムがたくさんあるのだが。あのかごは、私にはムリ。まったく使い道が思いつかない。狭い我が家では、脱衣所に置く余裕もなく。できれば、銭湯みたいにいくつも重ねて……何かに使いたい。使いみちを思いついたら、絶対、すぐに買いに来よう。と、いつも思う。

で。今日は、屑籠を買った。
自分の部屋にあるアルミのゴミ箱は、もう四半世紀以上使ってる。とはいえ、特に愛着がある訳ではない。ちょっと小さいのですぐにゴミが山盛りになってしまって、気がつくといつもゴミがはみ出してこぼれている。それが気になりつつ、ずっと使っている。ゴミ箱ってのは、新たに買おうとしても今ひとつもりあがらない家具の第一位ではないかと思うのですが、いちど買うとなかなか捨てる機会がない。
ゴミを捨てるための器が、ゴミになりづらい。とは。
考えてみると、なかなかせつない。

それで、しばらく前、どうせなら素敵な籐のゴミ箱なんかあったらいいなーと思っていたところ、松野屋さんにてみつけた、タイ製の籐カゴ。税抜き4500円という、ゴミ箱としてはちょっと贅沢なお値段。だけど素材も形も大きさも、本当に理想的だった。ここは人それぞれですが、ぱっと見、私の出すゴミの量にもちょうど合ってるいい感じに見えたのよー。

ゴミ箱つってもデスク脇に置くので生ゴミを捨てるわけではないし、籐だとまさに「屑籠」って漢字で書きたい系の優雅さがある。ニトリや無印に行けば安くて使いやすい多機能ゴミ箱がたくさんあるのに、屑籠に5000円の籐カゴはちょっと贅沢すぎるかしら。と、しばし悩んだが、昨夜、いろいろいあって天啓がくだりまして(大げさ)、気がつけば日暮里。


欲しかったカゴ。ありました。待っててくれたー!よかったー。遠くから見ても、輝いていました。オーラあるー。
おしゃれな店先では輝いていても、家に持ち帰ると「おや?」ということはままありますが。さすが松野屋セレクション。暮らしの中でこそ真価を発揮する、日常づかいの芸術品。オーラあるー。

かわいいー。かわいいー。
ベタに造花などあしらってみても、やっぱりかわいいー。

紙くずが多い私には、口も広くて容量(ほどよく)たっぷりめで最高。大きめの紙ゴミが多い、という用途に完璧。
ああ。ゴミ箱が、こんなに愛しく思えるなんて。

ゴミ箱なんて何でもいい。と、ずっと思っていた。
けれど。ゴミ箱はゴミを入れる容器であって、ゴミではないのだ。ふと、そのことに気づいて、そしたらちょっと楽しくなってきた。同様に、たとえ自分の日常が人々にゴミを投げつけられることばかりだったとしても、自分自身がゴミだということにはならないのだ。ゴミを捨てられるのは、ゴミではなくゴミ箱だから。自分がゴミにまみれた容器であっても、ゴミ箱はゴミではない。
だから、ゴミ箱は美しくあるべきだ。
ああ、学ぶわー。
かくして私は4500円の籐カゴを買い、それが私の部屋の屑籠になった。歓喜。

松野屋さんの店先はカゴや器だけでなく、夏の帽子もいっぱい。これまた、帽子好きは超絶トキメク。以前から、素朴なカンカン帽やパナマ帽の山には誘惑されておりましたが。ずっとこらえていたのです。でも、念願のカゴを買って浮かれていて、天気もよくて、つい、帽子も買ってしまいました。

去年も、よそ行きのつば広ハットを買ったきり一度しかかぶらなかったし。もう、うちは麦わら帽子は飼ってあげられないのよ(涙)…と思いつつ、あっさり秒で負けた。

店先には、姿見が。
ふつう、もっと小さい鏡でしょう。でも帽子は、かぶったところの全身を姿見で見ないと時々ものすごい失敗しますよね。いやー、さすがの至れり尽くせり。心憎い。
で、かぶってみてわかったのは、サイズ感が絶妙に好み。中折れ帽だけど、竹内まりや感や桐島かれん感の大人マニッシュ素敵系というよりは、エイティーズのビバユー感というか、ドゥ!ファミリー感というか、POU DOU DOU感というか。かわいい。

帰り道。包んでもらうのもアレだし、そのままカゴを抱えて、帽子かぶって、電車に乗った。
いやーんやめてやめて、と、心で叫んでも、脳内で流れ出したヘアカット100が止まりません。
ああ。
俺の中のオリーブ少女が目を醒ましましたよ(起こしてはならん子を起こしたな)。

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