ナーナーカウとナーニーカウ(※1)の話(採集番号005)
むかし、むかし、男、ナーナーカウと男、ナーニーカウがいた。ある日ナーナーカウがミーアイ(※2)していると、たまたま大きなロプ貝が獲れた。それをかかえて歩いているとナーニーカウに出会った。
「ナーナーカウよ。そんなに大きなロプ貝をどうやって獲ったんだ」
とナーニーカウがたずねると、ナーナーカウが答えた。
「なに簡単なことだよ。おまえのりっぱな竿(※3)を巣穴にたらせば、すぐに獲れるさ」
ナーニーカウはいわれたとおりに、浜辺の巣穴に自分の竿をたらした。そのとたん、ロプ貝にはさまれてしまった。あまりの痛さに身をよじると竿はちぎれてしまった。
家で夫の帰りを待っていたナーニーカウの妻は、夫がうれしそうに騒ぎながら真っ赤で大きなロプ貝を抱えてくるのを見て、大喜びで湯をわかした。
うれしそうに騒いだように見えたのは痛さのあまり泣きさけんでいただけで、真っ赤で大きなロプ貝に見えたのは血だらけでふくれあがったナーニーカウの袋(※4)だった。
ロプ貝のつぶつぶ、焼けた石。
※1 ナーナーカウとナーニーカウは昔語りによく現れるふたり組。意地悪なナーナーカウと、そのマネをして失敗ばかりいる愚かなナーニーカウという対比で、聞き手を笑わせる。艶笑話が多い。
※2 遠浅の浜辺で小さなタコを捕まえる漁法。島民は適当な棒を手にタコのいそうな隙間をつつく。するとタコは棒に足をからませて、ひきずりだされてしまう。ひきあげるのが早いと足をすぐにひっこめてしまうし、遅いと興味をなくして巣穴にもぐりこんでしまう。見るとのんびりした簡単な作業のように思えるが、やってみると案外むずかしい。まれにロプ貝がとれる。
※3 陰茎のこと。
※4 陰曩のこと。
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