イヌファールプルプとケヌンテッケの話(採集番号82)

 むかし、むかし、女、イヌファールプルプと女、ケヌンテッケがいた。イヌファールプルプはバナナの木の下の池に小さな魚を飼っていた。魚はイヌファールプルプにたいへんなついていた。彼女は池にいって、バナナの木をゆらして歌った。

『アヌや
 アヌこや(※1)
 おいでわたしの手からバナナをお食べ』
 すると魚があらわれ、彼女の手からバナナを食べた。イヌファールプルプが芋田にいっているあいだに、ケヌンテッケが池にいって、バナナの木をゆらして歌った。
『アヌや
 アヌこや
 おいでわたしの手からバナナをお食べ』
 だが、魚はこなかった。怒ったケヌンテッケは魚をつかまえ、それだけでは飽きたらずに魚の皮をかぶって(※2)イヌファールプルプをまった。すると、イヌファールプルプがやってきて、バナナの木をゆらして歌った。
『アヌや
 アヌこや
 おいでわたしの手からバナナをお食べ」
「イヌファールプルプ
 おまえのバナナは腐ってる
 おまえの手からバナナは食べないよ』

 そして、ケヌンテッケはイヌファールプルプの手に糞と尿をした。イヌファールプルプは驚いて泣いて、泣いて泣いて、家に帰ってしまった。大笑いをしたケヌンテッケは、魚の皮を脱ごうとしたが、もう脱げなくなってそのまま魚になってしまった。
 ロプ貝のつぶつぶ、焼けた石。

 ※1 魚の名前がアヌなのか、意味のないかけ声なのか不明。
 ※2 小さな魚といいながら、その皮をかぶることができたということに不合理を感じるのは、われわれが民話的想像力を忘れてしまったからである。

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