三兄弟の話(採集番号043)

 むかし、むかし、男、アネッヅ、男、ナカル、男、ガマゾッツがいた(※1)。三人は兄弟だったが、仲はよくなかった。

 三人は漁に出て、沖で網を打った。アネッヅの網には鰹がかかった。ナカルの網には海鰻がかかった。ガマゾッツの網にはなにもかからなかった。怒ったガマゾッツはいった。
「兄よ、アネッヅ。おまえがまじない(※2)をかけたのだろう」
「弟よ、ガマゾッツ。まじないなどかけていない」
 それでも怒りがおさまらないガマゾッツは、アネッヅに力くらべを挑んだ。アネッヅは勢いあまって、ガマゾッツの首をねじきってしまった。それを見たナカルは驚き、悲しんだ。
「アーイー、アネッヅがガマゾッツの首をねじきってしまったよ」
 そういって泣き叫んだ。うるさいと思ったアネッヅは、近くにいたフラ蟹(※3)をナカルの顔に投げつけた。痛さのあまり、ナカルは泣きながら逃げだした。こうして三人の兄弟はいっしょに空に昇ることはなくなってしまった。
 アネッヅが沈むと、ナカルが現れる。そして、ときおり恨みをもったガマゾッツの首がアネッヅを呑みこむが、首だけなのですぐに喉から出てきてしまう。ナカルも呑みこむが、やはり首だけなので喉から出てきてしまう。
 ロプ貝のつぶつぶ、焼けた石。

 ※1 ラモア島の話として語られるが、アネッヅは太陽、ナカルは月、ガマゾッツは日蝕月蝕をもたらす暗黒星である。
 別の話者の話ではアネッヅとナカルは夫婦で、ふたりのあいだにできた馬鹿な息子がガマゾッツという型もある(報告書№34参照)。
 ※2 ラモア島では漁のときにまじないを行う。もちろん、大漁を願うまじないだが、この場合は不漁のまじないをアネッヅがかけたと怒っているのである。
 ※3 これは月の模様の由来譚である。アネッヅにフラ蟹をぶつけられたために、ナカル(月)の表面には蟹の形のアザができたというのだ。いわれてみると、たしかに月の模様はハサミをふりあげる蟹にも見える。フラ蟹はシオマネキほどではないが、左のハサミが長く、美味である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?