ニタニーキーの話(採集番号073)

 むかし、むかし、女、ニタニーキーがいた。ニタニーキーの家には毎晩ヤリウェイ(※1)がささり、求婚する男はひきもきらなかった。ニタニーキーは男にこういった。

「西の風を連れてきておくれ」
 男は西へ行って風に巻かれて死んでしまった。
 次の男にはこういった。
「東の海の真珠を取ってきておくれ」
 次の男は東に行って真珠貝に手をはさまれて死んでしまった。
 次の男にはこういった。
「北のプラケイ鳥(※2)の羽を取ってきておくれ」
 次の男は北に行って巣から落ちて死んでしまった。
 次の男にはこういった。
「南の島を持ってきておくれ」
 次の男は南に行って嵐に飲まれて死んでしまった。
 最後にカドゥンがとても素敵な男の皮を着てやってきた。カドゥンはニタニーキーの望みをすべてかなえてやり、自分の島に連れて帰ると食べてしまった。
 ロプ貝のつぶつぶ、焼けた石。

 ※1 ヤリウェイに関しては報告書№1において詳細に報告している。南方に広く存在するラブ・スティックである。思いを伝えるために男性が女性の家の戸口や家の隙間などに差し、興味のある男性のものを女性が引き入れると承諾の意味となる。
 ※2 未詳。おそらく伝説の鳥と思われる。

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