「踊れない夜の嘘つき」上演によせて
今週末の土日月。
ダダ・センプチータという僕の劇団で
「踊れない夜の嘘つき」という芝居を上演する。
その作品の上演によせて
文章を書いていこうと思う。
この作品は難産だった。
戯曲のプロットを立てようにも良いアイデアが出てこない。
もんもんと苦しみながらプロットを立てていた。
それが去年の年末ごろ。
僕は長崎の実家に帰省して作品のプロットを立てていた。
なぜ良いアイデアが出てこなかったのかは分からない。
新しい仕事について、その仕事がハードワークで心身ともに疲れ切っていたのかもしれない。
しかしお正月過ぎまでにはプロットを立て切ろうと必死に創作に挑んでいた。
そんな時能登半島の震災があった。
正月のテレビ放送が次々と津波の映像に切り替わり
ゆるりとした正月の実家の茶の間は落胆と緊張感に包まれた。
「なんで正月からこんな、、」
両親や親戚一同は口々にそうひとりごちた。
僕はテレビをから流れる津波の放送をじっと凝視していた。
これが今の日本に起きていることだ。
被災されている方々が少しでも無事でいてほしいという願いと共に、この国に今何が起きているのか、それを目に焼き付けようと必死に画面を見続けた。
そして夜が明け2日になった。
僕は東京に戻ってくるため羽田行きの飛行機に乗ろうとしていた。
飛行機に乗り、いざ飛び立とうとした瞬間、機内にアナウンスが流れた。
「羽田による事故のため、一時運行を見合わせます」
我々乗客たちは荷物を持ちぞろぞろと空港まで戻った。
空港で慌ただしく流れていたアナウンスは「今日の飛行機は全便運休する」というものだった。
そして2〜3日はそれが続くと。
僕は深夜だったこともあり実家に戻ることもできず、空港近くのホテルに泊まった。
その日は酒を煽って眠った。
不穏な年明けにそうせざるを得なかった。
次の日長崎ではなく福岡からなら飛行機が飛ぶとの情報を得て、福岡まで移動した。
その日も飛行機に乗ることはできず、カプセルホテルで1日を過ごした。
僕はホテルのラウンジで、もんもんとしながらプロットを立てた。
精神の疲れからか上手くいいアイデアが出ない。
村上春樹の小説を読みながら、なんとか創作のエネルギーをもらいつつ、プロットを書いた。
作品自体は恋愛劇だ。
誰かが誰かに恋をする話。
それはたぶん、僕が半年前に別れた恋人のことを忘れられないからだと思う。
戯曲の中だけでもまた恋がしたい。
そんな無意識が僕に恋愛劇を書かせたのだろう。
そして不条理要素は過去作品に比べて薄くなった。
だって世の中の方が不条理なんだもの。
不条理な世の中に対して強い不条理をぶつけたところで今は意味をなさない。
それより愉快な要素を詰め込みたいと思った。
だから台詞は愉快なものにした。
少しでも笑ってくれたら嬉しい。
だけど物語自体は不穏だ。
ゆるい不穏さ。
それは僕が見たこの現実を間接的にでも作品に書き留めておきたいという想いからそうした。
通し稽古を見た時、「意外と良い話だな」と感じた。
うんうん唸りながら捻り出すように書いた戯曲だったので、そのように感じて自分の中で意外だったのだ。
少しでも沢山の人に観てほしいと思う。
とにかく作品は良い。
どうか観に来てください。
お楽しみに。
ダダ・センプチータ
「踊れない夜の嘘つき」
日時
2024年5月
4日(土)15:00/19:00
5日(日)15:00/19:00
6日(月)13:30/17:00
会場
カフェムリウイ
(世田谷区祖師谷4-1-22-3F)
チケットご予約フォーム
https://www.quartet-online.net/ticket/yiopgqv
作・演出
吉田有希
(ダダ・センプチータ)
出演
サトモリサトル
梁瀬えみ
(演劇ユニット マグネットホテル)
(以上、ダダ・センプチータ)
尾形悟
(演劇ユニット マグネットホテル)
宇都有里紗
大村早紀
制作協力・当日運営
木村優希
(演劇ユニット「クロ・クロ」)
音響・照明
小林和葉
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