見出し画像

犬のように死んだ

He died like a dog. He died like a coward. The world is now a much safer place.
 「犬のように死ぬ」とは、いったいどういう状態なのだろう。いろいろ想像をしてみる。なんかわかったようで、わからない。英語は難しい。日本語の言い回しで、「あいつは犬のように死んだよ。」って使うことは滅多にというか、いままで聞いたことがない。そのあとのCOWARDが卑怯者とかそういうことであるなら、「卑怯者のように死んだ」となって、ちょっとこれもわかりづらい。どうもlikeを「〜のように」とするのがいけないようだ。
英語が苦手なぼくが感じることだから、たしかではないけど、この場合likeはイコールのようなものなのだろうか。彼(=犬)は死んだ。彼(=臆病者)は死んだ。それならいくらかはわかる。しかしいくらかしかわからない。
 いずれ「犬のように死んだ」というのは、ひとの死に対しても、犬にたいしても、まったく非礼きわまりない表現としか思えない。少し英語を理解して、話せるようになったとしても、こういう表現はぜったいしないだろうし、したくない。
 
 狙われ、追いつめられ、そして三人の幼いこどもたちを抱えて自爆したひとを、犬、臆病者よばわりにしてはいけないと思う。世界は複雑でたいへんで、そこにはいろんなことがあるだろう。正義や道理ばかりではないことは知っているつもりだ。
 不愉快な大統領声明もしかたないことだと思う。そのうえで、あの8分30秒あたりにでてきたことばは、耐えられない。
He was dead.
 と、これだけではおさまりきれない積年の憎しみの感情を込めたのだとしても、もうすこし別の表現はなかったものだろうか。
「バグダディは犬のように死んだ。バグダディは臆病者のように死んだ。」
 トンネルの壁にバラバラに飛び散ったおびただしい血と肉の破片。その悲惨な光景と匂い。犬のように死ぬとはこういうことなんだ。
「これで世界はずいぶんと安全な場所になりました。」
 そう高らかに宣言したひとの死にはどんな「like」がつくのだろうか。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?