蚤の市

7月25日
また居た。
今日で23回目だ。
見る度に気が滅入ってしまう。
もう勘弁してくれ。

8月4日
最近周りがおかしい。
やたら目が合うことが多いと思っていたが違う。
合わせてるんだ、あいつは、全て。
目線が怖い。

9月19日
私が何をしたと言うの?
何が敵意を向けているのか判らない。
どうしよう。

10月8日
この日記はおかしい。
書き手が日付毎に違う。
そもそも、それ用のノートに日記をつけるような人間が、たった1日、ましてやこんな中途半端な出来事の日だけを書き記すだろうか。
早く、あいつらが来る前に。



近所のフリーマーケットで日記を見つけた。
妙に薄汚い男が売ってたが、その割には綺麗だ。
こういう日記には、書き手の癖がよく現れるので、見つけては買ってしまうほど興味を引かれるのだ。
今日のコレには一体どんな事が書かれているだろう。

なんだこれ。
どうして日付毎に筆跡がなんだ?
それに内容も変だ。
どの日も見えない何かが居るような内容。
気味が悪い、こんなものさっさと捨てるかしまおう。
どうせ誰も買ってくれないだろうから。

日記を捨てて数日後、それは曲がり角に、遠くの小道に、玄関に、居始めた。
誰だ?
思い切って話しかけようにも、すぐそこまで行くと消えてしまう。
諦めて戻ればまた現れる。
そんな繰り返しににもう辟易としていた。
クソ、何が目的なんだよ。
せめて目的が判れば、怖がることだってできるのに。

11月10日
今日も居る。
早く消えろ、もううんざりだ。
もう自分で何とかするしか無いのだろうか。

逃げろ、無知から早く逃げろ。
なんで視界の端に写り続ける。
なんで未だに何もしない。
なんで捨てたはずの日記を持ってる。
判らない、判らない!
いやだ。
こわい。
むちが。

ああ、ひとだかりだ。
ここならだれかわかるかも。
だれでもいい、これを、このにっきを。
「それ、売り物ですか?」
いた!
わたしてしまえ!
もうなんだっていい!
むちからかいほうされれば!
これでおれはじゆう。
あ、まだいる。
なんで?
なぁ。
そこにつったってるおまえ


なにがもくてきなんだ?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?