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MCバトルの毒と薬

画面上だった話が今はすぐ目の前にある。

俺も少し前までは、実費で長時間のバスに乗り県外まで行ってた。
地方のバトル、戦極の予選、高校生ラップのオーディションなどに挑みに。

それも2年くらい前。ほんのちょっと前。
それが今では、飛行機を手配してもらってホテルを準備してもらって。
俺にとっては本当にでかいヒップホップドリームだった。
たかがバトルかもしれない。
けど、クソ田舎の宮崎で細々とラップをしてた俺にとっては、気づけば全国大会の常連になったって現実が本当に夢が叶ったかのようだった。

そうして俺が経験を重ねると同時に、俺って存在を知ってる層の年齢はどんどん下がっていった。
凄く当たり前の話だが、YouTube、イベントなどへの露出が増える度に俺を嫌う意見も多々見かけるようになった。

今、俺はバトルに出る事が出来ない。

この決断を自分の中で決定的な物にしたのは、先日行われた戦極U-22 2020だ。
公式からYouTubeに対戦カード考察という動画が上がっていて、その動画を見てみた。
自分は1回戦で裂固君と戦うことになっていて、そのカードについての解説もしていた。
コメント欄を見てみた。

「だーひーボコボコにされろ」
「お願いだからだーひー勝たないでくれ」

辛かった。
自分は2019年、前年度準優勝者として、そして半年ぶりに出るMCバトルとして、久しぶりに凄く気持ちを高めていた、
そんなメンタルの時にみたこのコメント。
全てめんどくさくなった。
そこで見返してやろうという気持ちになれるほど自分の精神は強くない。
結果、自分は1回戦で負けた。
するとコメント欄では、
「だーひー負けてよかったー」
「こいつ本当ダサくなったよな。落ちぶれたわ。」
「ざまーみろwww」
そんなコメントを見かけた。
わざわざそういうDMも何件か来た。

匿名の誹謗中傷。精神的に苦しい。
フリースタイルにも限界が来た。
リスナーが俺に求めているラップができない。
こんな状態で出ていい結果が残せるわけがない。

バトルはラッパーにとって薬にも毒にもなる。
今後の自分の活動のプロモーションの一環としては本当に凄いものだ。
1年も経たないうちに、SNSのフォロワーが5万人以上増えたラッパー、バトルでの人気を上手く曲に流し込み音楽だけで生活出来るようになった若手ラッパーも沢山見てきた。
今の時代MCバトルを初めとして、音楽で飯を食えるようになったラッパーが全国に少なからずいる。

その影に隠れて、MCバトルに音楽生命を絶たれたラッパーも沢山いると俺は思う。

どれだけバトルに出て人気が出ようが、1円にもならない場面も見てきた。
有難いことに自分はバトルに出る度にCDを沢山の人が買ってくれて、バトルで得た知名度をどうにか自分なりの音楽での売り上げに変えていけてる。

今、全国のバトルに出てるラッパーの9割以上が当てはまると思うが、
"曲の再生数より、バトルの再生数が何倍もある"
俺もその1人。
今公開してる自分の曲で1番再生数のある曲が7万回再生。
自分が出てるバトルで1番再生されてる動画は150万再生。
多分、世間が思い浮かべるバトルに出てるラッパーのほとんどがこんな現状。

悔しい。その一言に尽きる。

そして、「バトルで有名になった奴」という肩書のせいで、バトルに出ないラッパーの大半からは意味もなく否定的な目で見られる。
どこに行っても。

俺はずっとリスナーに負け続けている。
いくらバトルで勝とうが、ラッパーとしてシーンに負け続けている。
音楽での収入や、曲の再生数に比例しないバトルの再生数、フォロワー数。
曲の告知をしても、RTは1桁。いいねも1桁。
フォロワーは2万人弱。
評価や数字が全てでは無いが、それを考えてもその現実は辛かった。
俺はもう完全にアイドル、はたまたピエロになっていた。

実は自分は早い段階でバトルはラッパーにとって危険な賭けだと気づいていた。
第12回高校生ラップに出た直後だ。

バトルと曲は完全に別物だと。

だから名前を2つにした。
バトルはだーひー、曲は日高大地。
そうする事で自分に一つ区切りをつけてきた。

だーひーはバトルMCとして売れた。
日高大地はラッパーとして全然売れてない。

常に自分にこう思い込ませる事でなんとかメンタルを保って曲作りに励んで来たが限界が来た。

日高大地に被さるくらいバトルMCだーひーが売れてしまった。
いくら曲を作ろうがそれはバトルだけのラッパー、だーひーの曲になってしまう。

だからバトルから身を引く事にした。
これ以上出続けても自分がシーンに殺される。
いや、自分が自分に飲まれてしまう。

俺が精神的に弱いからこういった決断に至ってしまっただけかもしれないが、同じような思いをしてるバトルMCが日本中にいるかもしれない。
1人、また1人と、バトルからラッパーが消えていくかもしれない。
バトルが好きなリスナーには、バトルに出てるMCをもう少し大切にして、コメントや評価を俺はして欲しい。
バトルリスナーの年齢層が下がった分、安直で軽率な誹謗中傷が最近蔓延しすぎている。

また俺もバトルに出る決心がついたら、バトルに挑んでみようと思う。
それまで日本でMCバトルというジャンルが若者の前線で残ってる事を祈って。

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長くなったけど、自分はバトルを見るのは今でも好きです。
中2の時にYouTubeでたまたま見かけた、「かしわ vs T-pablow」の動画。
あの衝撃から自分がこんなとこまで来るとも思ってもなかった。
出るのは辛くなる一方だったけど、日本中でバトルが流行っていくのはとても嬉しかった。
流行の立役者の1人として関われた事は光栄に思ってます。

思った事をストレートに書いたので読みづらい文章だったかもしれませんが最後まで目を通してくれてありがとうございます。
日高大地 / だーひー

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