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自由連想法による文章練習【8】

 タカシが卒業した莨町小学校の写メを撮るべきか一瞬悩む10分くらいまえに あおぎんのATMから入金した6千円のうち 5千円は妻の貯金ぶんで 千円はぼくの貯金ぶんだった ほんとうは3万3千円でなくてはならない貯金総額がそれにとどいていない原因の歯医者通いがようやくおわり ほぼ同時に春もきて だからさっそく合浦公園の海へいこうとしたら 海までのあいだに雪がまだ大量にのこっていて しかも長靴に穴があいていたもんだから 靴下がビショビショに濡れて超きもち悪くなった といってもアスファルトを歩き続けているうちに もう少し遠出してもいい気分くらいにまで乾いてくれた靴下を ぼくはその日の夜のうちにすてた そのまえにすてたユニクロの赤い股引には もらしたウンコのなかに混じっていた身に覚えのない大量の種のようなものがまとわりついて 要は靴下の何十倍もすてることへの大義がその赤股引にはあった ウンコをもらしたことは妻にも内緒にしていないし ブログにも翌日すぐに書いた といってもブログに書くことをやや躊躇しながら食べたブラックサンダーアイスがまたセブンで復活したのを ぼくはうれしく思う しかし復活は一時的かもしれないとも思っていて だからといってそうじゃなくするために毎日たべるわけにはもちろんいかない 本元のブラックサンダーチョコは小さい だからぼくはいつもスーパービックチョコを買ってたべている また スーパービックチョコのほうがぼくにとっては断然懐かしの味で ちなみに1年くらいまえにそのスーパービックチョコと20年以上ぶりに再会させてくれたスーパーの名前は「ビック」という ブラックサンダーについていえば 「サンダー」というあだ名の友だちの友だちがいた そのサンダーと疎遠になる直前にサンダーが発した言葉のなかで一番記憶にのこっているのは 「破産した奴に1万借りるってどういうこと?」で それは確か中野の「まんだらけ」とかオタク系の店がたくさんはいっているビルの手前のアーケード街内だった サンダーはもともと新小岩にすんでいて 上京した最初の正月はみんなでそのサンダーのアパートですごした すぐ近くの平井という駅にはシゲがいて シゲのアパートでみたラルクのウィンターホールだったかのPVをみたぼくは これほど王子様的な男がいるのか!となかなか衝撃をうけた シゲの部屋の二つとなりの部屋にはカップルがすんでいて ある朝そのカップルのセックス音が聞こえてきたぼくは シゲがブハブハ笑ってはなすほどそのことを楽しめなかった そのころぼくはまだ二十歳で 六本木のアルバイトをはじめるよりも前だったと思う 中田はというと当然まだ浦安にいた というか 中田ともついに疎遠になる日が近づいているかもしれないと最近すこし思う 中田はぼくの右ななめ下にいた 右横にはゴリ 右下には横山くんがいた 右ななめさらに向こう2つ下にいたオサムに最後にあったのは 新町の横断歩道でだったが 中田はそのことをおぼえているだろうか? そう 中田とすごした時間はやはりとびきりぼくの中で長いことを思ったぼくは 「とびきり長い」というこの事実だけでいろいろと十分な気がした だから今度の電話はもう少し甘くというか 厳しい現実の話はひかえめにしてやろうと思った そしてそれはタマゴの黄身をわざわざスプーンですくいとって白身の部分だけを弁当にいれてやった今朝の妻への愛情と少しにている気がした だからといってそのぼくの愛情を 弁当箱をあけた妻が感じとってくれなくても必ずしもかまわないとか…… たとえばこんなことが 保坂さんがいうところの とっとと書き尽くすべき叙情のうちの単純最たるものに違いないだろうとかの話のまえに 急に暑くなってきたこのタイミングとこの姿勢で ぶくどんをぬぐのはあまりにも面倒だった とにかくぼくは デレク・ベイリーとかいうギターの人が 一日中ただギターを弾いたように それと同じように書く方法として 「自由連想法による文章練習シリーズ」を書きはじめたわけで しかしそれでもまだいろいろな何かしらに縛られているのは間違いないにしろ とにかくこうして書き進めることができているうちは まったく問題ないだろうと思っている やがてぶくどんをぬいで また着て またぬいだぼくは スーパービックチョコや草もちをそれほど食べたいと思わない理由のいちばんは やっぱり気温の上昇だろうと思った もちろん食べようとおもえばいくらでも食べられるどころか あれば必ず食べるにちがいなく しかしそのために買い物にいこうとまでは思えないという 要は「今どうしても食べたいものはとりあえず何もない」というこの素晴らしい状態に ぼくは今なかなか嬉々としている 一口食べると二口や三口どころか 二十口も三十口も食べたくなってしまうものたちに仕掛けられた多くの罠から完全にのがれることはできないにしろ 日々のがれる努力をしているぼくにとって お腹いっぱい神話を継承している野田は まさに死に突き進んでしまっているようにしかみえない だからぼくは野田の店にいかないのだというふうにもいえるが いちいち言うのが面倒くさいほかの理由もたくさんあって でも最後には一回必ずいこうと思っている 同じくヨッケと桂木のところにももう一回顔をだして 後生の別れになるかもしれないことにまで踏み込んで とはいえそれを軽いノリで伝えたいと思っている とにかくぼくは面倒くさい人間すぎて たくさんの友人たちに気を遣わせてしまうことがどうもやめられないらしく だからぼくは青森にはむしろいないほうがいいだろうという結論に達した ちょうど飯田も中田ももう青森に帰ってくることはないことも ぼくの背中というか運命を後押ししたような気がして ともあれ妻の仕事場は六本木になるだろうことから 近辺の物件をネットでさがしてあきらめて少し眠ってから 起きてようやく書きはじめて 妻はつまり今日何時に帰ってくるのか?の見当が微妙につかないにしろ どのみちマグロの刺身は明日に回すべきという決断だけは早々にした ぼくのじゃあ今日の夕食はなにかというと 母がつくった微妙な揚げだし豆腐と 同じく母がつくった妻好みじゃない太く切りすぎてあるキンピラゴボウもろもろで そのくせ東京の弟には成功したハンバーグを送ることを申し訳なさそうにいってきた母に そんなことよりバイトをすることの了解を父にちゃんととるようにとぼくはいった 時給750円の一カ月6万円で 午前中だけだから塾も続けられる県病の清掃をたぶんすることになるだろう母は いつものように父の愚痴をあれこれいってから 入れ歯の前歯が欠けた話をした するとそのままぼくの頭のなかに入れ歯をぜんぶとった状態の母の顔が浮かんで しかしすぐに頭のないハトの死骸が視界にはいって そしてたぶんそのせいでもう一段増した尿意を しかしぼくはまだあと5分くらいは我慢できるだろうと思った やがてトイレにはいると懐かしいタバコのにおいがした そのタバコの主であるタクシーの運ちゃんっぽいおじさんは 一応洗面台のほうに立ち寄ったものの 手を洗っていないようだった トイレをでて 初恋の女と初デートで立ち寄ったベンチがある左側へ曲がろうとしたが その道には異常なくらいハトの羽が散乱していて つまりふたたびハトのバラバラと遭遇してしまうかもしれないと思ったからやっぱりやめた 小便は0.3キロ以上はでた気がした だから体重は66.8キロ以下になっているはずだと予想してから ヤオケンにいくことを思いついて ヤオケンでアスパラ菜とワサビ菜とレンコンを買った 「はやめに食べるように」といわれたレンコンは だから100円だったわけで それを図書館にもっていくのは若干気がひけたものの いまさら図書館にいかないことは考えられなかった そして図書館にいき すわろうと思った席に突き進んでいると 同じその席に突き進んでいそうな小さいおじさんがいて しかもぼくより圧倒的にその席にちかい位置にいたそのおじさんにやっぱり負けたぼくは そのままその席の後ろを通りすぎた先の一帯にしても ちょうどよさそうな席が一つもなかったことの壁に だから今日はもうレンコンのために帰れってか?とイライラしつつ 仕方なく損保ジャパン日本興亜ビルの真正面にすわった レンコンは唐辛子とホンダシと醤油と砂糖でキンピラ風に味付けすることにした 

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