見出し画像

FEZのサービス終了に寄せて

 2022年6月13日、突然その知らせはやってきました。


 このゲームを完全に離れたのはもう10年近く前になります。ただ、10年経ってもなお郷愁を覚えるほどには、このゲームに対する思い入れは強いものがありました。SNS上でも多くの人がコメントを寄せていたし、自分もLINEで当時の仲間と終わっちゃうのか、という話をしました。
 仕方ないことだと思います。15年も昔のゲームです。当時は可愛げがあったアバターも衣装も、今となっては何とも古めかしいものに見える。そもそも、2年に1度くらいふと思い出して入ったときには、戦場が成り立たないほど過疎化が進んでいました。最大8つあったサーバーの統合は進み、ついに今では1サーバー。運営もよくぞここまで我慢したと思うし、ネトゲとしては文句なく大往生でしょう。
 ただ、自分にとっては間違いなく生涯で一番長い時間をかけて遊んだゲームでした。大学から帰ってきてご飯を食べて風呂に入り、21時~26時までログインしているような毎日を送っていたのを今でも覚えています。ゲームで知り合った友人とは、オフ会でも遊んだし、就活の時もお世話になったし、東京に出てきてからは会社外の唯一の友人たちと言っても過言ではありません。結婚式にまで来てもらった友達までいます。友達だけじゃなく、本当に色々なことをこのゲームを通じて学ばせて頂きました。
 このタイミングで書かないと一生顧みることはないと思ったので、つらつらとFEZの思い出と得られたものについて振り返ってみたいと思います。いつもの通り盛大な自分語りなので、暇な人かFEZが好きだった人に読んでもらえれば嬉しいです。

1.FEZを始めたきっかけ

 FEZは一言で言うと戦争ゲームです。プレイヤーは1人の兵士となって、5つある国のどれかの国に所属します。ゲームの世界はどこにも属していない1つの中央大陸と、それを囲むように5つの島があり、それぞれの島に首都があります。プレイヤーは基本的には中央大陸の中で領土を取ったり取られたりを繰り返す(たまにクッソ弱い国は自分の領土の島までボコボコに取られる)。

画像1
画像2
中央大陸の様子。5つの国にそれぞれカラーがあり、占領度合いがわかりやすい。
ウェンズデイ古戦場跡は俺の庭。

 戦争は50人vs50人で行われます。ゲームとしてよく出来ている部分として、単純な戦闘員だけでは(相当な戦力差がない限り)戦争には勝てないように出来ている点が挙げられます。戦争の勝敗は相手の国のHPゲージのようなものを先に0にすれば勝ちなのですが、ゲージを減らすためには
①相手のプレイヤーを倒す
 という直接的な方法以外に、
②建築物を建てて自国の領土を増やすことによる領域ダメージ
③相手の建築物を破壊することによるダメージ
 があります。そのバランスが
 ②領域ダメージ>>③建築物破壊ダメージ>>>>①プレイヤーを倒す
 という形になっているため、プレイヤー50人平均の戦力差が多少あってもしっかり建築物を建てて領土を拡大し、領域ダメージを加えていった方が勝利する仕組みになっていました(戦力差が大きいと地獄のような状況になるが)。また、召喚獣という通常の人間キャラよりとは違う能力を持った強力なユニットもあり、その運用をするにはいかに非戦闘員の統制が取れているかに左右されるという(資源を掘る、という非戦闘員も一定数必要なゲームなのです)、単純な個々人の能力の足し算だけで決着がつかないシステムも加えられています。つまり、戦争に勝利するには個々人の戦力よりも、自国の50人がどれだけ統率され、システムを理解しているかの方が重要というゲームでした(逆に言えば、50人の中にどれだけ自分勝手なプレイングをする「ノイズ」が混じらないかというのも重要だったとも言えます)。
 単純に言うと対人ゲームと陣取りゲームを合わせたゲームなのですが、陣取りゲームの比重を大きくし、非戦闘員も戦争に絡むことが必須とされているため、アクションが苦手なプレイヤーや、レベルの低い初心者でも気軽に戦争に参加できるというゲームデザインが非常に優れていたと思います。一方で、レベルキャップもすぐ上限を迎えたり、装備にはデザイン以外の性能差がほとんどないというのも非常に特徴的で、良心的だったといえましょう。そのため、この手のアクション要素が強く戦争を扱ったゲームにもかかわらず、体感女性プレイヤーが多かったように思います。イラストもファンタジーだったしね。
 また、当時らしいといえばらしいのだが、mixiのようなFEZ SNSなるものもあり、ゲーム外でも地味につながりが出来るようになっていたのも当時としては画期的だったと思います。今亡くなっていてよかった。黒歴史っぽいこと書いてあったと思う。

 さて自分語り。
 元々前身の「FANTASY EARTH~THE RING OF DOMINION~」の頃からこのゲームの存在は知っていました。スクエニが運営しているということもあってとても興味はあったのですが、この時はパッケージが必要+月額課金+それなりのPCスペックを要求されるという3重苦で、金欠で喘いでいた私はとても手が出せず、ラグナロクオンラインやパンヤで遊んでいたのを覚えています。
 そんなある日突然、パンヤを運営しているGamePotが「FANTASY EARTH ZEROやるよ! 月額無料だよ! ソフトもいらないよ!」と言い出したではありませんか。まぁ飛びつきますよね。

 サーバーは当時一番新しかったDaathサーバー(通称D鯖)を選び、国は中二病全開感のあるゲブランド(略称ゲブ)を選びました。紫いいよね。実は私、本当にゲブ以外でキャラ作ったことなかったりします。他の国は見たこともない。ゲブランド帝国に忠誠を誓っていました。

ゲブランド帝国皇帝ライル様(c.v.中井和哉さん)と宰相のケイさん(c.v.朴璐美さん)


 当時のFEZはウォーリアという近接職、スカウトという遊撃職、ソーサラーという遠距離職があって、よく出来ているのは、ウォーリア>スカウト>ソーサラー>ウォーリア、という3すくみになっていたこと。私は最初はずっとスカウトで弓を使っていました。そしてとある部隊(他ゲームでいうギルド)に所属させていただいていたのですが(名前覚えてない)、その部隊が解散するということで、メンバーの受け皿はあった方がいいよなぁ……ということで、部隊を作りました。「Violet_Violence」というギルド名は、これまた中二病感全開ですが、ゲブの色だし、韻踏んでるし、攻撃的だし、きっと略称「vivi」になるだろうし(実際なった。以降「vivi」)で思いついた瞬間に即決しました。未だに結構気に入っています。この頃から、メインは基本的に片手ウォーリア―(攻撃力低いけど防御力が高いタンク職)でした。片手人気なかったけど、前線で一番身体張れるから性に合ってたんですよね。

2.ギルド運営を通じて学んだこと

 viviは最終的にユニーク数で30~40人、全盛期は週末は同接10人は普通にいるようなになりました。自分のプレイヤースキルは今振り返って中の上くらいかなと思いますが、メンバーにはサーバーでトップクラスの人もいたし、みんな中の上以上の実力はあったのではないかと思っています。この5段階評価で4以上で統率の取れるメンバーがたくさんいるというのは、ノイズの混じりやすい50人vs50人という戦いでは非常に有利で、接続している部隊全員で乗り込むぞー! みたいな時の勝率って8~9割行ってたんじゃないでしょうか。ほとんど負けた記憶ないんだよなぁ。
 当時のDゲブは良くも悪くも癖の強い部隊が多い中で、viviはとっても地味な部隊でした(だからあまり叩かれることもなかった)が、上位部隊にはそれなりに信頼されていたんじゃないかな……と思います。私はトップ外交的なこととか殆どしなかったし、riripenくらいとしか連携して遊んでなかったのもあるけど。
 また、当時大学生で、20代前半くらいの時にこういう人が多く、バックグラウンドが多彩なメンバーがいる組織のまとめ役をやらせてもらってたのは、今振り返るまでもなく、当時からいい経験になっていました。
 あまり言葉にしてメンバーに伝えていたわけではないのですが、部隊の運営として意識していたことは、主に以下の2つです。
1.心理的安全性の高い部隊であること
2.(少なくとも自分は)戦争の勝利を最優先に意識すること

 1.に関しては、基本的にはどんな意見とか話でも出来るような雰囲気を作ろうということでした。実際、同規模の部隊に比べて相当雰囲気は緩かったと思います(他の部隊そんなに知らないのでまた聞きですが、多分)。そんな雰囲気だったから、女性プレイヤーが多いのも特徴だったかもしれません。これは他所と話すと結構驚かれた。一方で、他者への煽りとか暴言に関しては厳しめに対応していたと思います。
 2.に関しては例えば、戦争中に50人いると変な奴もいっぱいいるし、不満もたくさん出るわけですよ。いいプレイが出来なかったとか、やたら他人に妨害されたとか、粘着されたとか、煽られたとか。けれど、そういうのは勝ったうえで言いたいなと。不快な思いをした上に負けたらもう捌け口はないわけですよ。なので、勝利というのは参加メンバーの最低限の妥協ラインだと考えて、自分は勝利のために動くことを最優先にしました。勝つために前線に行くか、裏方に回るか、最適な役割で動くことを意識する。プレイヤースキルが微妙だったので、そのあたりの基準・判断は明確にしていました。
 こういう姿勢って言わないのが美徳だと思っていたので、本当に最後引退直前くらいまで言ってなかったんですけど、結構伝わっていたのは感じていて。メンバーの動きも理解できるものがほとんどでしたね。細かい指示は殆ど出したことはなくて、皆がそれぞれ主体的に考えて動いて、結果皆が勝利に貢献できていたと思います。

 現在私は社会人になり、経営企画室という部署で経営のかじ取りをしていますが、この1・2は社会でも重要だよなと感じています。心理的安全性の低い組織は課題が表出せずに問題を起こしたり、社員の士気を下げます。また、社員の不満は色々あるでしょうが、経営としては利益を出すことが社員に対する最低限の妥協ラインになります。会社に不満はあるだろうが、給料やボーナスはちゃんと出すよ、ということですね。額がもっと多いとかはあるのですが、会社がちゃんと存続・発展できるレベルの利益を上げることが社員全員が最低限妥協できるラインだよね、と。

 今の自分の考え方の基礎みたいなものを、FEZを通じて構築できたなと感じています。そういう意味で感謝しかありません。

3.FEZからの引退と、それから


 FEZは5年くらい遊んでいたと思いますが、それでも引退の時はやってきます。ゲームサーバーは8サーバーから4サーバー、1サーバーと接続者数の低下に応じて統合されていったのですが、私は最初の統合前の時点で既にほぼ引退する形になっていました。特に引退宣言のようなものはしてないと思います……したかな、SNSで。思い出せないな。
 原因はいくつかあるのですが、
①フェンサー・セスタスの導入
 新クラスは最後までなじめなかったですね……。導入されてからもぶつくさ言いながらゲームは続けていたのですが。個人的にはウォーリア―・スカウト・ソーサラーで3すくみになっていて十分と思っていたのですが、5クラスになっちゃうと50人の中でのバランスがめちゃ偏ったりするんですよ。新職は後発ならではの有利な点とかもあったり、バランス調整がぐちゃぐちゃ入ったりで、ちょっと萎えちゃったところはありますね。まぁここは決定打ではないし、運営としても何か変わったことはしなければいけないというのがあったと思うので、わからなくはないのですが。

②バンクェットへの参加
 このゲームは50vs50の戦争終了後に、スコアが表示されます。スコアを出すだけならやりようがあるとはいえ、戦争の中でも目立って活躍する人というのは何度も顔を合わせているとわかるものですし、実際にスコアでもえぐい記録を出してきたりします。そうなると当然、こういう思いは出てくるでしょう。「もっとシンプルな『戦闘』だったら、誰が一番上手いのか?」と。
 それが「バンクェット」というイベントでした。建築物(基本)なし、7vs7のチーム戦。領域ダメージ・建築物ダメージなし。完全に個人のプレイヤースキルと、少人数での戦闘における連携に特化したモードです。
 これがサーバー対抗の大会なんて開催してしまったわけで、第1回の時にうちのメンバーの上位陣ともう1つの部隊とで組んで大会に出たわけですね。10人登録できるので、私は補欠として参加させていただきましたが、まぁこの時の熱はすごかった。なんていうか、常にゲームにログインしたらバンクェットの試合をして、反省会をして、試合をして……みたいな感じですね。1か月くらい、強豪校の部活のような熱量でした。結果はベスト4敗退で、その時は私も試合に出たのですが、ダメージ読みで勝ってると踏んで撤退したら負けてた(キル数が一緒だった場合ダメージで勝敗が付く)っていう一番悔しい負け方でしたのを今でも覚えています。結局第1回はD鯖優勝してるんですね。StarShipか。
https://www.4gamer.net/games/017/G001785/20071217056/
 これ、何が良くなかったかというと、部隊の他のメンバーを結構置き去りにしちゃってたんですよね。大会に出ないメンバーからすれば、いつも主要メンバーがいなかったわけですから、ちょっと断絶を感じていた部分もあるでしょう。そしてまた、バンクェットに慣れてしまうと50vs50の戦争に戻ったときにすごくノイズが多いというか、なんか違和感を感じてしまう部分もあったり。
 何より、大会後にちょっと燃え尽き症候群的な気分になってしまったのもありました。第2回以降は参加するとは言えなかったですね。あんなに熱心にゲームを詰めたことはないでしょう。プロゲーマーの人を私は心から尊敬します。自分には出来ない。低テンションで長く続けていた方が、もしかしたら長くゲームを続けられていたのではないかなとは思います。

③プライベートの変化
 私は理系の大学にいたのですが、大学3年からは研究室に配属になり、4年からは研究と院試、大学院からは就活と修論に向けた研究と、プライベートが忙しくなりました。そうなってくるとゲームに割ける時間が単純に短くなっていき……というのがありましたね。
 ゲームに割ける期間っていうのは決まってるんだなぁと思います。特に今結婚して子供もいて……という状況では、ネットゲームに参加すること自体になかなかのハードルがあります(社会人だったメンバーってすごいなと思う。ほんとに。うちの部隊リアル夫婦2組いたけど)。すごい不定期にしか時間取れないし、1時間も2時間も出来ないしなぁ。

 結局最終的には②と③の複合で、FEZからは自然と足が遠のいてしまいました。何か部隊にもケリをつけなきゃいけないのかなとも思いましたが、あそこを居場所に思ってくれる人もいるのかも、と思うとなかなか解散には出来ませんでしたね。そこは、当時のメンバーには申し訳なく思っています。

 FEZから疎遠になったあとは、少しだけドラクエ10とかにも手を出しましたが、レベル10台で誰とも会話せずに投げてしまいました。そして今、30代も後半になってしまうと、もう下の子と会話できる気がしないですよね。10代と何を話せばいいんだ。いい年してネトゲなんか鼻で笑われるんじゃないかとかね。諸々あるけど、今は1人で淡々とウマ娘でうまぴょいしてるのが気楽でいいなとなってしまいました。ヌルいですけど。

4.最後に、今思い出すのは

 つらつらと述べてきましたが、ゲームも楽しかったけど、それ以上に誰かと一緒に遊ぶこと、それが何より楽しかったよなぁと思います。札幌から東京に就活しに行ったときとかも、毎回誰かが一緒にオフで飲んでくれました。ゲームにログインしても、戦争もせずにしょうもない話をずーっとしてたりとか、ああいう時間がきっと一番楽しかったなぁと思います。これまでもこれから先も、FEZより時間も熱量もかけてやるゲームは私の中にはないでしょう。それは、ゲームの素晴らしさと、ゲームの中で出会った人達のおかげだと思っています。
 本当に、このゲームの中では人には恵まれていました。
 そして、そんな機会を与えてくれたゲームの製作者の皆様、運営の皆様には心から感謝したいと思います。

 なんか、エンドロール作るんですね。せっかくなので、名前は入れておきたいと思います。そしてせっかくなら、どこかで最後に一度派手に遊んでみたいんですけどね。最後に向けてイベントたくさんあるようですが、旧三職戦争は面白そうかな……?
 もし良ければ、viviの皆さんとは1日くらいどこかで遊べたらなと思います。これはちょっと調整させてください。連絡が届く範囲でお声がけします。

 長々とありがとうございました。
 FEZへの感謝を込めて。


元Daath鯖 Violet_Violence 部隊長 咲乃


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?