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80年代後半_体験的堂山記3

Club Christopher

(ゲイにとっての)堂山町と言えば、当時の二大スポット、「クリコ」とGYMを語らなければ。
なのだが、その前に、そこに至る「道」について順序として、語られなければ。ということで、その至る道をごくごく簡単にたどれば、ゲイ雑誌で目に入ったサークルに連絡を取り、そのメンバーとなってから約1年ほどのちに、サークルのリーダーに連れられてデビューしたのだ。
サークルは「出会い」目的?キレイぶるわけじゃなくて、それはなかった。ただただその、ヘテロ中心のこの日常世界の中にぱっくり開いた扉をくぐって、その世界の人々とつながりたかった…いやそれって、やっぱり出会い目的よねwww
そうや、「カラダ」目的ではなかったといい直そう。
なんでもいいけど、幸か不幸かサークルには結局そんな対象となる人は一人としておらず、そのコミュニティを返って楽しめたのかもしれない。サークルには高校生から自分より年上まで、有象無象の人々が集まっていた。
サークルでそうした有象無象と遊ぶのもけっこうまだ楽しかったので、ある日リーダーから「○○ちゃんも、ゲイバーとか行ったらいいのに」といわれても「ぼくはエエわ」としばらくは遠慮していたが、1987年7月のある土曜日の夜、堂山にゲイディスコがあるから行ってみないかと誘われるままに繰り出したのが、クラブ・クリストファーのデビューとなった。
正直、いわゆるノンケの世界にあっても、私はクラブ文化には疎遠な生活だったので、ディスコと言えばスーツで行くものだと思ってたらそんな連中はほとんどいなくて、逆に短髪・ひげにサングラスのマッチョな野郎が革の短パンでケツ振って踊ってるわけでもなく、ごく普通のカジュアルな、そう、当時流行ってた渋カジ風かちょっとキレイめカジュアルのおしゃれな子たちが狭いフロアにひしめいていた。
ワンドリンク付きで入場料が○○○円(⇒もう忘れた、誰か教えて!)で時間制限もない。ゲイシーンの遊び代の割安感は半端なかった。
入り口で入場料を支払ってドリンクのオーダーをし、カウンター越しに受け取って、奥のフロアへ。左奥というか上にDJブース、一段下がったところに狭かったけどダンスフロアがあって正面は総鏡ばり。右奥フロアには、ゲイたちが大きなテーブルを囲んでグラスや缶を手にひしめきあって佇んでいる。
お決まりのミラーボールに観葉植物、80年代風だが正直ちょっと、照明含めてチープだったかもだ。しかし客はそんなことどうでもよくて、暗闇のなか視線の飛び交いかたがすさまじかった。
再びダンスフロアに行くと、これはクリコ(クリストファーの愛称?この、コと付けるのはオネエ言葉でしょう)独特の風景かもだが、だいたいが鏡に向かって踊っている。初めて入店したときにドキドキするよりも先にビックリしてしまったのは、Michael FortunatiのGIVE ME UPにあわせ鏡に向かって、つまりこちらに背を向けてお尻フリフリで踊っている人。何よりも先に目に飛び込んできたもの。その人とは後にお知り合いになったが、その時のエピソードはさすがにいえなかった。
なんで鏡に向かって踊っていたのかしら?ゲイはナルコ(ナルシスト)が多い説もあり、それもあるだろうけど、まあ、鏡越しにイケる(=タイプの)人がいないか踊りながら探していたのではと思われます。知り合い同士で来たときはお仲間で向き合って踊ってたし。
当時流行っていたユーロビートナンバーを中心にここでも回してはって、BananaramaやらKylie MinogueやらDonna Summerやら特にPWL系の曲を流すと客は喜んだ。「行くわよ!」とか言ってひっぱられたもの。ところが夜も更けて23時か日を跨ぐ頃、DJさんが替わって70年代のR&Bなディスコミュージック、スローなナンバーが多くなると、さっと人がひいていく。変わり目はCheryl LynnのGOT TO BE REAL。
89年頃だったか、DJのマッチャンさんが最近はいい曲がないと言ってたのを聞いたことがある。詳しくないが、ユーロも落日の気配だったのか、やがて90年代を迎えてディスコではなくクラブと言われるようになって、ハウスがはやり出すのと同じくらいに、それまで週末は必ずクリコにいた私は、忽然と姿を消すに至った。
まあそれからというもの、クリストファーと入れ替わりにできた?EXPLOSIONに出入りしたり、新宿のミロス・ガレージにも行ったこともある。もはや記憶は薄れつつあるのだが、心斎橋ビブレの地下にあったゲネシスとかアメ村のクラブとか天保山のベイサイドジェニーといった大バコでもやってたっけ、ゲイ・ナイトにも友だちに連れられて行くことはあったけど、昔日のような楽しさは感じることもなく自分史的には終わってた。
あの狭い、今はもうゼッタイむりなタバコの煙の立ちこめる暗闇と、そこで出会いを求めカップルになり、店を出て行く人たちをうらやましそうに眺めていた自分が愛おしいわ。
二度と再現はできない時代の、ささやかな記録です。GYMについてはまたいつか。終わり


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