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古人(いにしえびと)の熱き夢の跡,今は静かに

河川生態の研究をしていると,漁協関係者や流域住民の方々から,いろいろなお話を聞く機会が多くあります.長く語り継がれてきた,それらの話は伝わる途中で情報が欠けたりして正確ではないかもしれません.しかし,川を知る上では貴重で大切なことです.

 千葉県道24号千葉鴨川線,亀山ダム付近の名殿(などの)の交差点から鴨川方面に250mほど進むと,小櫃川に架かる松丘橋という橋があります.松丘橋付近の小櫃川は掘り込み河道で,周辺の土地より低い処に川が流れています.

 松丘橋から少し上流に進むと,今は機能していないコンクリート製の古い堰があります.河川の地形を考えると灌漑取水用の堰ではありません.何時,何方から伺ったのかも忘れてしまいましたが,その堰は小規模水力発電所の堰だそうです.

 昔,地元の名士が,大金を入れたリュックを背負ってきて,これで発電所を作ろうといったそうです.大正2年に,この場所の近くの久留里に,千葉県初の小規模水力発電所が建設されたそうです.松丘橋上流の小規模水力発電所もそれに近い年代に建設されたのかもしれません.何れにしても,100年近くも前の話になります.

 その小規模水力発電所は,付近の住宅に電力を供給したそうです.松丘橋から小櫃川の川岸に降りて,静かな川の空間の中で,古い堰を見ていると,その建設に携わった人たちの熱い思いと声が聞こえてくるような気がします.初めて電灯が灯ったとき,多分,皆歓声をあげたことでしょう.今は誰もここにいない,彼等の熱い夢は,静かな流れのほとりにいつまでもあることでしょう.

 川は遠い世界とこの世の境です.去年の夏に逝った半さん(半蔵,影の軍団)も,次の夏が来たら,堰下の釣り場にいるかもしれません.松丘橋の堰下は,そんなことを思わせてくれる,川の流れの音だけの静かなところです.

それでは,また,何時か何処かで.

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今週のヘラブナ推薦釣り場【千葉県・小櫃川】
https://www.excite.co.jp/news/article/Tsurinews_tsurinews71810/

曲流する小櫃川と発電,千葉県立中央博物館
https://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/special/yama/news/2021/20210317yagi.htm

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