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「私」はAIに淘汰されるか~絵描きと画像生成AI~

 現在様々な生成AIが作られ、その進化は留まるところを知らない。それは画像生成AIも同様であり、絵描きはこれにどう向き合っていくのが良いのだろうか。

商業的視点

 まずは商業的視点から考えてみよう。有名で作家性やブランド力を持ったプロのイラストレーターはさておき、私のようなアマチュア(これから積極的に絵の仕事をしたい人)はどうだろう。例えば私が今まで受けた有償の依頼は知人や友人からのものも含めて十数件ほどでありSkebのリクエストも今のところ1件だけだ。他に無償の(というよりは仲間内の)案件もいくつかあるがそれは省略する。ちなみに私は依頼ではなく自分で作品を作って売ったりもしているが、今回は依頼を受けて絵を描くというケースを想定して考えてみよう。
 依頼を受けて絵を描く仕事は、多くの場合絵を描くだけが仕事ではない。相手がどのような絵を求めているのかを対話によって明らかにし、方向性や内容について互いの認識を合わせる必要がある。依頼者自身が必要としている絵の内容を完璧に把握しているとは限らない。
 であれば、自身が欲しい絵を理解していて画像生成AIのオペレート技術に優れた人は誰かに依頼するより自分で作る方が合理的と考えるかもしれない。あるいはそこまでの能力を持っていなくても、依頼するための資金に恵まれない人や絵が出来上がるまでの時間を優先する人はAIを使って自分で作ろうと考えるだろう。前者は今のところ少数派であるが今後の画像生成AIの仕組みやUIの進歩で増えていくだろう。実際、(まだ商用利用はできないが)Bing のImage CreatorはすでにBing AI(ChatGPTのような対話AI)上で動かすことができ、生成された画像に対して改善点を指摘して直してもらうことが可能だ。とは言え、内容によってはこちらの意図がうまく伝わらないこともよくある。
 画像生成AIが対話型のAIと融合しマルチモーダル化しない限りは絵の仕事が完全に無くなるとは考えにくい。意思疎通の問題を抜きにしても、絵の題材や使用用途に合わせた形式への理解度は人間のほうが優れているだろう。

純粋な表現・創作としての視点

 次に、個人的な――すなわち純粋な表現・創作としての――視点で考えてみよう。様々なタイプの画像生成AIやその拡張機能、そして画像生成AIを使って作られた絵が数多くSNSなどのプラットフォーム上に投稿されている現在、どのように向き合うべきだろうか。
まず絵のコンセプト、テーマ、目的について自分の中で整理すると良いかもしれない。単に作ることが目的である、あるいは技術を磨くための練習など、誰かに見てもらうことを考えないのであればAIについては気にしなくても良いだろう。
 SNSやpixivなどのプラットフォーム上でより多くの人に見てもらうことが目的の場合、プラットフォームの飽和について考慮する必要がある。プラットフォームの飽和自体は現在のように画像生成AIが登場する前からジャンルによっては起きていたことである。その環境に適応あるいは対処するための戦略を考えて見よう。戦略は大きく3つに大別される。
 
1.流行のメインストリームに追従する
  →需要が多いが競合も多く埋もれる可能性もある。
2.ニッチな需要を主として活動する
  →需要はメインストリームほどではないものの埋もれる可能性は低い。
3.自分で新しい分野・表現を開拓する
  →難しいがうまく行けば先駆者になれる。

 実はこれらの戦略はAI以前からよく言われがちなことではある。創作意欲はあるもののあまり絵を描いていなかった人たちが絵の世界に参入してきたというのが現在の状況であり、それ自体は喜ばしいことだ。ただあまりに急速にそれが広まったがため、また単に画像を作るだけならあまり時間がかからないという理由により我々はAIを使って作られた画像を見る機会が増えた、というのがより正確な状況である。すると考えるべきは絵を投稿する人間の総数(もちろん手描きかAI利用かは問わない)である。
 画像生成AIを主とした創作活動をする人(AI術師)はこのまま増え続けるだろうか?(絵描き同様に)途中でモチベーションが無くなってそっと消えていく人もいるだろうし、そのまま続ける人もいるだろう。また、そこから加筆修正やその延長として手描きを取り入れていく人もいるだろう。それに対してAI以前から絵を描いていた従来の絵描きの中にもAIを取り入れる動きがある。これが意味するところは、将来的に手描きとAI絵の境界線が徐々に無くなっていくだろうということだ。
 現在はpixivなどのプラットフォーム側でAI生成作品の分離や受け入れ停止などの措置が取られているが、状況が落ち着くにつれてその区別自体が撤廃されると個人的には予想している。であれば従来の絵描きの戦略としておすすめしたいのは、今までのように絵の技術を磨きつつ、積極的に画像生成AIを取り入れていくことである。
 画像生成AIは色々な形でイラスト制作のプロセスに取り入れることができる。ディテールの検討や背景制作の補佐、絵のアイデア探し、などなど使い方は発想次第だ。そのため絵描きが画像生成AIを使うことによって時間とクオリティの両面で更に良い創作ができるようになるだろう。

私個人の活動についての視点

 最後に私個人の絵描きとしての活動について、私はAIに淘汰されるとは考えていない。表現したいもののために絵を描きそれを発表すること、それは環境がどうあれ不変のモチベーションだ。私にとって創作とは自分の考えや思いを表現できる自由なフィールドである。心の赴くまま自分が良いと思う概念を形にできる。そこに制約はなく、さらにAIを取り入れることで自身の可能性を拡張し障壁を取り払うことができるのだ。


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