『セブン・シスターズ』ブレグジット時代のEU批判メタファー作品

2020年1月5日に日本でレビュー済み
形式: Prime VideoAmazonで購入
国際石油資本は関係ないのか?やはりそう思う人は少なくないのでしょう、英米ではWhat Happened to Mondayのタイトルだったようです。これはロバート・アルドリッチ監督のWhat Ever Happened to Baby Jane?(『何がジェーンに起ったか?』)のオマージュでもあるタイトルです。『何がジェーンに起ったか?』も姉妹の愛憎劇でしたが、本作品中でも幾つかオマージュと思われるシーンがあります。
また英米加では劇場公開ではなく、某ストリーミング配信大手によるリリースだったようですが、日本ではプライム・ヴィデオで視聴できちゃいます。

設定はよくある近未来ディストピア世界そのもので、ポリティカル・スリラー。
7人は多すぎじゃないかという気がするかもしれませんが、欧米では7というのが特別な数字(聖書で神は天地創造を始めて7 日目を安息日としたことからきていると言われている)なのと、Seven Sistersという言葉(もとはギリシア神話に登場するプレイアデス七姉妹)も、響きがいいのか、名門女子大学7校とかオイルメジャーとか、いろいろな意味で使われるんですね。まあ、さすがに七姉妹を一人で演じると、時々コミカルに見えてしまうのですが。
指の件はクリストファー・ノーランのあの映画のオマージュ。

(以下、結末や核心に関する記述あり)
地球温暖化説、EU、一つの地球的なグローバリズムを強烈に批判したアレゴリーになっており、環境保護の名のもとに全体主義や人権抑圧が正当化されるエコファシズムと、利益と権力の拡大、子供をダシに使った偏向的思想の浸透に躍起なEU高級官僚のメタファーになっています。
一昔前までは地球温暖化説の先頭をいっていたイギリス(元々は原発推進が理由)でも、科学的根拠が弱いと今では信じる人は少なくなっていますが、フランスとベルギーの製作会社も関わっているのは興味深いです。フランスでも地球温暖化なんか本気で信じている人はいないのは、現在のイエローヴェスト・ムーヴメントを見ればわかります。原発と一部大企業の優遇政策だと考えているんですね。

最後は勧善懲悪、黒幕に対して死刑が求刑されるのですが、世界のあらゆる国での死刑制度の廃止を目指し、EU加盟国でもない日本の死刑制度にまでケチをつけるEU批判です。現実のフランスなんかは、死刑制度が無いからテロリストは逮捕せず射殺してしまえという、いやどこが人権尊重やねん!とツッコまずにはいられない状況になっています。

エンディングは強制的な人口抑制政策が廃止されて、多くの子供の命が救われてめでたしめでたし。やはり子供は人類の希望や未来の象徴です。いやまて食糧問題はどうしたと思うかもしれませんが、食料不足や地球の資源の枯渇自体がフェイク、あるいは作為的だったという事を示唆しており、石油メジャーもまんざら無関係とも言えないテーマなのでした。

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