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アメリカでグラントを獲得する意味

 この度、3回目の挑戦でAHA (American Heart Association)、アメリカ心臓協会がサポートしてくれているグラント(研究のための助成金)の1つであるCareer Development Awardを獲得することができたので、そもそもグラントって何?というところから、どういうステップでグラントを申請するのか、そして研究者としてグラントを獲得する意味について簡単にまとめたいと思います。

"グラント"とは

 ウィキペディアによるとグラントとは"科学研究などを支援する目的で個人・グループ・組織などに対して政府機関や民間の財団から交付される一定の補助金・寄付金"とあり、英単語の「grant」はその訳語として「競争的資金」「助成金」などとあります。つまり、研究のための助成金を公募している団体に必要書類を提出して応募し、その中で優劣を評価されたのち上位に残れた人がやっとの思いで獲得できるものがグラントになります。

グラントのお金の使い道

 今回、私が応募したものは、近い将来PI; principal investigator(研究主宰者)として独立して自分の研究室を持とうとしている人をサポートするためのグラントで、サポート資金が1年で$7万7000(日本円で約1000万円)、3年間サポートするものです。そこでよく言われるのが「給料増えてお金持ちになれるね」とか、「そのお金でお祝いしよう!」とか、グラントのお金をどう使うかの話題です。
 グラントに応募するときは、獲得した資金をどのように使うのか明細書的なものを提出します。今回のグラントでは、私の給料、私の研究をサポートしてくれる補助員(テクニシャン)の給料、実験に関わる費用、論文の投稿費用、学会の出張費などを申請できるようになっています。つまり、それ以外の用途でお金を使うことはできません。そして残念なことに給料はいっさい増えません。全米での大学職員・スタッフの給料システムが全て同じなのかは知りませんが、基本的に給料の金額はその人のポジションに紐付いているため、その人がどんなに活躍しても、ボスからむっちゃ気に入られていても、現在のポジションから昇進しない限り給料は基本変わりません(ただし物価の上昇に合わせて数年ごとに数%ずつ昇給はしていきます)。
 また、研究者の給料はグラントから支給されます。つまり私の給料は現在ボスであるPIが獲得した給料から支払われているんですよね。もちろんボスの給料も大学からではなく、ボスが獲得したグラントから支給されています。今回、私がグラントを獲得したことで、今後の私の給料は自分のグラントから支払われ、その分の浮いたお金をボスが違うこと(他のスタッフを雇ったり実験に必要なものを購入したり)に使うことができるようになります。

グラントってどんな書類を提出するの?

 これは応募するグラントによって随分と違うと思われるので、今回は私が応募したグラントの必要書類をご紹介します。

応募者が必要な書類
1.研究計画書(8ページ)
2.バイオスケッチ(5ページ)←履歴書的なもの
3.キャリアプラン(3ページ)
4.参考文献レポート(4ページ)
5.研究施設報告書(2ページ)
6.予算明細書(2ページ)
7.動物実験説明書(ページ制限なし)
8.講座の責任者からの推薦書
第1メンター(指導者)から必要な書類
9.応募者のトレーニングプラン
10.メンターの今までの指導履歴
11.メンターのバイオスケッチ
第2メンターから必要な書類
12.メンターの今までの指導履歴
13.メンターのバイオスケッチ
14.メンターからの推薦書

ということで、最低でも14種類くらいの書類が必要になります。もちろんですが、全て英語です。
 どんな研究をしたいかを8ページ分書いて提出するんですが、初めは8ページも英語で文章を書くなんて大変だなと思っていましたが、研究の詳細を説明するのに8ページって以外に足りなくて、今では10ページ以上書けないとどう要約すれば自分のしたいことが伝わるのかかなり悩みます。実際、査読者からのコメントには、「詳細な説明が書いてないからどのような実験がしたいのか分からない」というような評価をよくもらいます。いや、8ページしか書かせてもらえないからちゃんと説明できないんだけど・・・と心のなかでいつもつぶやいています笑

グラントを獲得することの意味

 それではグラントを獲得するとどんな良いことがあるのか?これは、どのようなグラントを獲得できたかによっても変わってきますが、まずは研究者としての自分の業績(履歴書)を良く見せることができます。助成金の額が小さいものであれば、その資金を元に独立することはできませんが、その人が研究者として有望であることを証明することができるので、もっと条件の良いラボだったり、有名なラボに異動できるチャンスを掴めます。
 また、今回私が取得したような独立してPI(研究室主宰者)になることをサポートするためのグラントであれば、そのグラントをもとに現在在籍している大学で昇進を交渉したり、他大学へ応募してPIとして独立を狙うことができます。つまり、晴れてAssistant Professorを目指すことができます。この辺りの話は以前のnote(https://note.com/cvs_research/n/na7a42fa304a5)にまとめてみたのでご参照下さい。


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