無駄なチャレンジはない

筆者:若宮天雅

はじめに

はじめまして。去年、東京電機大学大学院の中村研究室の修士課程を修了しました若宮天雅と申します。現在はエンジニアとしてキーウェアソリューションズ株式会社に勤務しております。今回はcvpaper.challengeに入った経緯、大学及びcvpaper.challengeでの研究の振り返り、また現在の仕事に対してそれらの経験がどの程度役に立っているか、にフォーカスして執筆いたします。また、文章執筆が少々苦手で読みづらい点があるかもしれませんがあらかじめご了承ください。

cvpaper.challengeに参加するまでの経緯

当時、私はロボット・メカトロニクス学科に所属ておりましたが、制御系のことがあまり理解できませんでした。一方、画像処理に多少は興味を持てたこともあり画像処理をメインで行なっている中村研究室に入りました。研究テーマを決める際に、教授から「動画認識の研究テーマが良いのではないか」ということで、何も知らないながら「3D Convolutional Neural Network」(以下、3D CNN)という研究テーマを与えられました。同研究テーマは当時では最先端の内容(当時2018年)であり、産業技術総合研究所の片岡さん(cvpaper.challengeの主宰者)や原さん(3D ResNetの生みの親、CVPR 2018論文の主著、原さんのアドカレはこちら)がご研究されている内容で、cvpaper.challengeと連携して研究をしていく前提の内容であったことが研究コミュニティに参加するきっかけでした。また、当時私はこれから学んでいくコンピュータビジョンという研究分野に対して幅広く様々な知見を学んでいきたいという意志があったということもcvpaper.challengeの参加理由だったと思います。

研究テーマも決まり、cvpaper.challengeにも参加したものの、右も左もわからない中、どういった形で進めて行ったかを次の章でお話します。

ActivityNet Challenge2018への参加

cvpaper.challengeに参加して1番の思い出話をします。

研究テーマが決まり片岡さんや原さんと連携して研究を進めていく中、私はまだ研究を初めて間もない若造なので、効率的に学ぶための1つの提案として、動画認識コンペティションに参加し、技術を見につけながら学んでいくというスタイルを取り入れました。私はコンペティションそのものの意味がわからなかったのですが「何でも貪欲に学んでいこう!」の精神で参加することを決心しました。そのコンペティションというのは、CVPR 2018に併設されるWorkshopの1つであるActivityNet Challengeという大規模なコンペティションでした。ActivityNet Challenge(注:2021年大会のHPです)は動画像認識に関する様々なタスクが設けられ、各タスクの認識精度を競う大会のことで、賞金や景品なども出ていたと記憶しています。このコンペティションに参加して動画像認識の勉強をしつつ、プログラム技術を身につけていくことになります。今思うと、研究室配属直後の学部4年生が参加するには相当無茶なだったと思いますが「素人なりにどこまでできるか」の興味が勝り、参加を決意したと思います。

このコンペティションの結果から話してしまうと(10チーム中)世界10位でしたが、最後までやり切ることができました。この背景には片岡さんと原さんの手厚いサポートと同時に、共に参加してディスカッションをしてくれた同期がいてくれてたからです。「ランキング最下位じゃん!笑」と思う方もいるかもしれませんが目的であった「参加して色々なことを学ぶ」ことはできましたし、動画認識の研究を始めるための技術力も多少は身につきました。何といっても、素人にも関わらず短い期間(2018年 4〜6月)でやり切ることができて、ActivityNet Challengeのリーダーボード(順位表)に自分の名前が出てくれたことが何よりも嬉しかったです。

この期間で、研究テーマであった動画認識について学び、ある程度コーディングについても自発的に修正・改善ができるようになりました。ですが、今思うと一番大事な学びはこの競技会に参加し、チームとして一つのことを成し遂げる、その中でみんなで失敗し最後には成功を収めて笑いあう。この体験こそが一番の学びでした。

エンジニアになると、できるかどうかのチャレンジや成功などの機会は研究者ほどは多くなく、基本的に失敗できない与えられた作業を行うことになります。もちろん社会人なりの成功の喜びなどはありますが、そこはエンジニアとしての仕事です。学生研究なら好きなことにチャレンジできるし、失敗してもいい、できることが無限大だと思います。そしてチャレンジの中でしか学べないことがあります。

もし読んでる方々の中に、「チャレンジしてみたいことがある!だけど難しそう…」となっている方がいましたら、何でもやってみたらいいと思います。基本的には試行錯誤していく中でなんとかなると思います。なんとかなるように世の中のシステムができています。実は私も最近趣味ができて、仕事終わった後とかにブラジリアン柔術に週3で通っています。「仕事終わった後は疲れてるから…」とか。「明日は朝早いから…」とか、「柔道やって靭帯切ったから…」って思って躊躇ってた時期とかありますが、いざ参加してみるとすごく楽しいですし、身体と気持ちが慣れていきます。ぜひ色々なことチャレンジしてみてください。

少し話を戻しますが、競技会の後、実は再度ActivityNet Challenge2019に参加してリベンジをしたり(次は最下位ではありませんでした)、卒業後に研究室の後輩が ActivityNet Challenge に参加してくれたなど、いろいろありますがここらで思い出話は終わります。

今の仕事との関係

大学やcvpaper.challengeでの活動、ActivityNet Challengeの体験が今の私の仕事にどれだけ役立てることができるかについて話します。結論から言いますと、学んできた技術力をフルで役立てることは難しいですが、その仕事の進め方(報告・連絡・相談)や経験は行かせてると思います。

私は仕事では、画像処理エンジンを使ってある道路地点を観察するシステムを評価するプロジェクトや、そのシステムのGUIを作ってお客様が使いやすいようなWebアプリケーションの開発をするプロジェクトに関わっています。実例を使って説明します。

画像処理エンジンの評価プロジェクトでは大学やcvpaper.challengeで学んできた技術的なことは生かせていないです。なぜなら、基本的にはこちら側にエビデンスなどがない限り、お客様が条件を提示した評価方法に従うからです。明らかにおかしな箇所は指摘するかもしれませんが、基本的にはお客様に納得して頂ける条件ならそれに従うだけです。ですが、今エンジンのどの部分を評価したくて、どこら辺の画像を集めているか、などの業務内容の飲み込みなどは私はある程度早かったと思います。この画像はこのくらい必要なんですか?とかこの画角のデータが違うと思いますが大丈夫ですか?など、気づけないことから気づかなくていいことまで質問するくらい飲み込みが早かったです。

Webアプリケーション開発では、プログラムがメインなのでプログラムを書きつつ、仕事の先輩に報告・連絡・相談しながら進めております。特に、共同で開発する部分で大切だと思ったことが、この報告・連絡・相談だと思っています。これは大学に在学していたときやcvpaper.challengeにいたときから重要だと教えられてきたのですが、報告・連絡・相談が欠けると業務が止まるくらい大事なことです。コンフリクトが起こったり、工数が合わなくなったりと色々問題が起こります。私は過去にActivityNet Challengeに2回ほど参加しましたが、2回とも成功で終わらせられたのはこの報告・連絡・相談を徹底できたからだと思うくらい重要なことなので、面倒だと思っても報告・連絡・相談はやっておくといいです。また、無反応や既読無視は基本NGだと思っているので、それぞれのルールはありますがリアクションなどで見たことを伝えるようにもしています。

結論ですが、技術的なことは今のところフルでは活かせていないです。が、部分的には生かせていて、チームの進め方や内容の考え方などは非常に役に立っています。今後さらに活かせるように精進していきたいです。生かすも殺すも自分次第ではないでしょうか。

最後に

大学、cvpaper.challengeの思い出や今の仕事でどのように活かせているかを書きました。他にも書きたいことは色々あります。大学を卒業した後は研究室の後輩のS君がActivityNet Challengeに参加して世界一位をとってくれたり(私の代わりにリベンジをしてくれた!おめでとう!そしてありがとう!)、cvpaper.challengeで育てられたチャレンジ精神のおかげか、今年の9月に婚約したりなど色々ありますが、終わりたいと思います。

cvpaper.challengeの方々には本当にお世話になりました。ありがとうございました!

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