シンデレラ

むかし むかし、ある所にシンデレラという娘とお父さんがいました。
お母さんは、シンデレラが小さな頃に亡くなってしまい、お父さんと二人で幸せに暮らしています。
お父さんは、母親のいない娘を大切に育ててきたので、シンデレラは少し臆病で内気な娘に育ちました。

ところが、お父さんが結婚することになり、新しいお母さんと娘二人がやってきたのです。
「シンデレラ、お母さんとお姉さんだ、
仲良くしておくれ」
お父さんが言いました。
新しいお母さんとお姉さんたちは、とても明るくて感じの良い人たちです。
でも、シンデレラは、不安でしかたありません。

しばらくして、お父さんは仕事で遠くの街に行き、事故で亡くなってしまいました。
悲しくてしかたないシンデレラは、泣いてばかり。
新しいお母さんとお姉さんたちは困ってしまい、シンデレラを元気にしようと、あれこれ考えました。
「何もする事が無いから、泣いてばかりなのよ」
「体を動かして忙しくしていれば、泣くひまもなくなるわ」
「疲れて夜もぐっすり眠れるだろうし」

そして、シンデレラは家の仕事を、任されました。
ところが、今まで何もしたことがないので、上手くできません。
「ごめんなさい、お母さま…」
シンデレラは、泣きながら言いました。
それでも、毎日が新しいことの連続で、覚えることに必死で、泣いているひまなどなくなりました。
朝から晩までくるくると動き、夜はぐっすり寝てしまいます。
慣れない仕事は辛いこともあるけれど、出来ないことが出来るように成るのは、楽しいことでもありました。
しかし、新しいお母さんとお姉さんたちは、シンデレラに甘えて、何もしなくなったのです。
「シンデレラ朝ご飯はまだなの」
「シンデレラ部屋の掃除をしておいてね」
「シンデレラ髪を結い上げて」
シンデレラは、休む間もありません。
「もう、私がいなかったら、どうなるのかしら」
元気を取り戻したシンデレラは、働くことが楽しくなっていたので、辛くはありませんでした。

月日はながれ、お城から舞踏会の招待状が届きました。
王子さまが、お妃を決めるための舞踏会で、国じゅうの若い娘が招待されるのです。
新しいお母さんとお姉さんたちは、大さわぎです。
「新しいドレスを作らないと」
新しいお母さんが言いました。
「お母さま、靴も新しくしたいわ」
「私も、ステキなイヤリングが欲しいわ」
お姉さんたちは、華やかな舞踏会に行けることが、嬉しくて仕方ありません。
シンデレラは、そんなお姉さんたちを見て、少しだけうらやましくなりました。

とうとう舞踏会の日がやってきました。
新しいお母さんとお姉さんたちは、きれいに着飾り楽しそうに出かけて行きました。
シンデレラが、三人を見送り部屋に戻ると、見知らぬ女の人がいました。
「誰ですか!」シンデレラは叫びました。
「私は森の妖精」「あなたを舞踏会に行かせるために来たのよ」
女の人はそう言うと、持っていた杖でシンデレラの肩にふれました。
すると、それまで着ていた服は豪華なドレスになり、髪はたくさんの宝石で飾られています。
「なんて美しいドレスなの」
シンデレラは、鏡にうつる自分の姿にうっとりして言いました。
「さあ 急がないと舞踏会は終わってしまうよ」
そう言うと、森の妖精はシンデレラを外に連れて行きました。
なんと、そこには金色に光る馬車があります。
シンデレラは、何が起きているのか解らず、呆然としています。
「国じゅうの娘を、舞踏会に連れて行くのが、私の役目なのよ」「だから、心配しなくて大丈夫」と、森の妖精は笑いました。
それから、ガラスのくつを取り出して、はかせました。
「12時の鐘が鳴りおわるまでに、帰ってくるんだよ」「魔法がとけてしまうからね」
森の妖精は、驚いているシンデレラに言いました。
シンデレラは、森の妖精にお礼を言って、馬車に乗りお城に向かいました。

お城では、すでに舞踏会が、始まっていました。
シンデレラは、大きな扉から入って行きます。
すると、誰もがシンデレラの美しさに、目を奪われました。
美しいシンデレラは、すぐに王子さまの目にとまり、ダンスに誘われます。
二人はとても気が合い、時間を忘れて楽しくすごしました。
すると突然「ゴーン ゴーン」12時の鐘が鳴りはじめます。
「あ!」
シンデレラは、鐘の音を聞いて、あわてて立ち上がり走りだしました。
「待って!」
王子さまもあわてて、シンデレラを追いかけます。
しかし、シンデレラの姿は、どこにも見えません。
ただ、ガラスのくつが片方だけ、残されていました。

数日がたち、王子さまは、シンデレラに会いたくて仕方ありません。
ところが、どこの誰かも、わからないのです。
手がかりは、ガラスのくつだけです。
王子さまは、ガラスのくつを持って、国じゅうを探すことにしました。
やがて、シンデレラの家にも、王子さまがやって来ました。
新しいお母さんとお姉さんたちは、ガラスのくつに無理やり足を入れようとしますが、入りません。
「私も試していいですか」
少し離れたところで、見ていたシンデレラが、勇気を出して言いました。
「まあ なんてことを言いだすの!」
新しいお母さんは、あわてて止めました。
ところが、シンデレラをひと目見た王子さまは、はっきりと思い出しました。
豪華なドレスや宝石などなくても、美しい声や歩き方などは、変わっていないからです。
「やっと見つけました」
王子さまは、シンデレラにプロポーズをして、お城に連れて帰りました。

しばらくして、盛大に結婚式が行われました。
たくさんの人たちが、二人の結婚を祝福しました。
新しいお母さんと、お姉さんたちも招待されています。
「シンデレラ、ごめんなさい」「あなたに甘えて、召使いのように働かせてしまったわ」
新しいお母さんと、お姉さんたちは、シンデレラに、これまでのことを謝りました。
それを聞いたシンデレラは、微笑みながら言いました。
「お母さまたちがいなければ、泣き虫の私は、王子さまと出会うことも、結婚することもなかったでしょう」
お母さんとお姉さんたちは、シンデレラの優しさに、泣いて感謝するのでした。

    おしまい

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