夜の静寂が好きだという話


誰もいない道をひとりぼうっと歩く。
深夜0時を回って、歩いている私は、ふと思い出したように空を見上げた。

うっすらと雲がかかっていたから、一等星くらいしか見えなかったけれど、真っ暗な夜空に光る星が、とても綺麗だった。

「静寂に包まれて、世界に私以外存在しない」なんて考えてしまう程、夜の静寂は私を今とは違う世界へ連れていってくれる。

静寂と言っても何も無いわけもなく、それは一瞬で過ぎ去ってしまう、幻のようなもの。

春の夜は、心地よい風と、月明かりに照らされる夜桜が。

夏の夜は、少し静かになった蝉と夜とは思えない明るい夜空が。

秋は夜は、鈴虫の鳴き声と少し肌寒い夜風が。

冬の夜は、世界から切り離されたような暗闇と、嘘のように明るい満月が。


私は、夜の静寂が好きだ。

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