【詩】残されたもの

嵐はさった
全てを洗い流していったあの嵐
残されたものたちは呆然と立ちすくむ

誰かが言った
嵐は去ったんだ、もう一度やり直そう
その言葉に反応して動きだしたのは数人だけ

僕は動きだせなかった一人
大事にしていた家や人や家畜たち
全てを失ってもうだめだと膝をかかえてうずくまる

きみらしくないじゃないか
その時声がかかる
頼りなくいつもおどおどとしていた青年が
僕にむかって手を差し伸べていた

俺はきみに憧れてたんだぜ
群れの先頭で俺たちを導いてくれたきみを
きみが残ってくれてよかった
またやり直せる

僕は、こいつが残って、こんなふうに声をかけてくるなんて
嵐の前には思いもしなかった
試練は人を成長させるのかもしれない

成長できなかった僕は、太陽を背にまぶしい彼を見てそう思った
次の群れを率いるのはたぶんこういう男なのだろうなと

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