【超短編小説】絶対当たる占い
彼女は恋をしていた。
占いの先生の下、共に学ぶ男性に恋をしていた。
彼らの占いは脅威的な的中率で有名だった。
先生とたった二人の弟子。
秘術ともいえる術の研鑽に励み合う若い二人。
恋の一つも芽生えそうなシチュエーションである。
だが、彼女が恋する彼は、占いに首ったけで、彼女の気持ちに気づく気配もない。
彼女は先生にこの気持ちを相談した。
先生は言う。
「私も彼の占いにしか目がいかない性格は危惧していた。占い師は広く世界を見れなくてはいけないからね。こういう考えはどうだろう?」
先生と一計を案じた彼女らは、その日を待った。
そして、その日が来た。
「キミ! 今日、彼女が来たら彼女を占ってあげなさい」
先生は教え子の彼にそう言った。
彼は不思議な顔をした。普段仲間うちで占いあうことは滅多にないのである。
それでも先生の言葉に、彼は
「わかりました」
と答えた。
彼女がくる。彼は彼女を占う。
「ほほぅ、これは! おめでとう!」
彼は占いに出た内容を見て、彼女を祝福した。
しかし、彼女が立ち去るとすぐ興味を失う。そして彼の、絶対に当たる占いを目当てにやってくる人々を観る事に忙殺された。
夜。
彼女が彼を訪れる。
「おぉ! どうだった?」
「会ってません」
「え?」
「今日は1日家に引きこもって、誰とも顔を合わせませんでした。」
驚いて彼は尋ねる。
「な、なぜ?? 占いをちゃんと聞いていたのか? 今日は大切な日なのだぞ」
彼女はふふ、と笑うと。
「なぜでしょう? 考えてみて」
彼は不可解な顔を浮かべ、考えこむ。
「僕の占いが外れるはずが・・・。どういうことだ?」
そして彼はあっ! と叫ぶと
「いや、まさかそんなことが。しかし・・・。そうなのか? そういうことなのか?」
彼は彼女を見た。
彼の目に、初めて彼女が魅力ある女性としてうつった。
彼の占いはこうである。
『あなたが今日出会う異性は運命の人です。一生を共にし、あなたをかけがえのない幸せに導いてくれることでしょう。』
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