【詩】そして手の中に何も残らない

大きな吹雪があった
僕はその中で必死に大切なものを守ってきた
両手で抱えきれない大切なものたちを
ひとつひとつに思い出があった

吹雪はくる
唐突にやってくる
僕の予期せぬタイミングでくる
それが始まった時、僕は油断していたのだろうか
常に気は引き締めていた、そう思っていた

吹雪はくる
大きな吹雪だ
僕はその中で必死に大切なものを守っていた

その吹雪の強さに、いくつかのものを手放す決意をした
全てを失うよりかは何か少しでも残ればいいと
その数はすこしずつ減っていき
最後にはたった一つ残ればいいとそう思った

それは最初から手元に残そうと決めていたもの
きっと僕は晴れ渡った空の下で
それ一つ残ればいいと考えていたのだろう
ずっと

だけどいま、晴れ渡った空の下
僕の手の中にはなにも残らない
こんなことならがむしゃらに、なにか一つでもと
残す努力をすべきだったのか

残すものを決めれるほど器用ではなかったのだから
でも本当は知っている
吹雪は始まったら最後、僕の手から全てを奪い去ってしまうことを
後悔は見当違い

わかってはいてもそこまで割り切れる人間じゃない
僕は恨めしげに睨むのだった
一番大事だったものが吹き飛ばされた方向を

ふと僕は気づく
どこかで僕はすべての思い出を守れるなんて
そんな過信をおこしていたのだ

いま、僕の手には何も残らない


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?