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  映画:沖縄スパイ戦史を観た!

 

本日(2018年8月28日)、シネマハウス大塚で放映されている「沖縄スパイ戦史」を見た。沖縄戦とスパイとはどのような関係にあるのかを訝りながら、一体どういうことなのかに惹かれて鑑賞した。沖縄戦は、周知のように32軍牛島満指令官の自刃で組織的戦闘が終了したが、その後の沖縄戦の実相とはどのようなものであったかを想像していなかった。この映画は、その真相に迫る「裏の沖縄戦」として描かれた作品である。今日映画をみて、この映画のモチーフは3つであると思った。
一つは、陸軍中野学校(中野駅北口の現明治大学、早稲田大学校舎)出身者42名が兵役に満たない少年兵「護郷隊」1000名を徴用し、沖縄戦でゲリラとスパイの戦闘を指揮し、「護郷隊」146名が戦死させ、敗走中に逃走に適さない者を殺害したことを記録に留めることにある。
もうひとつは、軍命の強制移住とマラリア地獄による3700名に及ぶ死者を産み出したスパイが先導した住民移住と病死の記録を明らかにすることにある。その現場が波照間島と石垣島である。波照間島は米軍の上陸がなく、戦死者はいないが、マラリアで病死した島民は3分の1にあたる500名に及ぶという。軍事作戦に価値がないと判断され、徴兵で家長が出征し、婦人と幼年者だけとなった波照間島民にマラリアの蔓延る西表島への移住が強要され、2000頭の牛馬は軍食用とされたという。
三つ目は、沖縄戦敗残兵と在郷軍人「国士隊」によるスパイリストと住民虐殺を明らかにすることである。部隊から離散した敗残兵は投降兵を、在郷軍人は、英語を話す住民やまた勤労奉仕で軍事施設を知る住民をスパイリストに掲載し、順次殺害していったと言う。つまり沖縄戦では米軍との戦闘で戦死したばかりではなく、日本兵や在郷県民によって殺害された犠牲者が多数存在するという現実を知るべきだと語る。



映画の後半は、住民をスパイ扱いにするという日本軍の行動規範は一体どこに起因し、その残滓はどこにあるのかを検証する。第一に日本の国土防衛作戦が住民を巻き込んだ作戦を明記し、利敵行為の疑いのある住民の密告を奨励し、住民間の疑心暗鬼による住民監視と支配をその常套手段とする指令によってなされたことにある。
第二は、戦前の「機密保護法」にある「軍に関する情報」の秘匿を絶対視し、その秘匿のために殺人を奨励することが日常であった。つまり国賊として殺すことが奨励されたということである。
第三に、上記の前歴は、いまの法令に脈々と受け継がれていることにある。それが、現「野外令」「離島防衛」、そして「自衛隊法103条」である。

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自衛隊は、日本を守るという。しかし軍隊は自ら兵士である「自分」と「作戦行動」そしてその物理的拠点である「基地」を守ることはあっても、決してその土地の「住民」を守ることはない。戦争をするのは、人を愛し、妻と子をもつ兵士でもある。戦前の日本軍はその最も本質的な価値である生命を天皇に捧げることに成功した。「国賊」の名の下に誰でも抱く当たり前の「平和に生きる」という願いを亡き者にすることによってである。この映画は、軍隊とは何か!自衛を名乗る実力組織:自衛隊とはなにか!を考える最適な題材だと思う。

自衛隊が日本を守るとは一体何から何を守るというのだろうか?

補足事項--------------

1)軍機保護法(現「秘密保護法」の前身)軍機保護法(ぐんきほごほう、1937年8月14日法律第72号)は、軍事上の秘密、いわゆる軍事機密(軍機)を保護する目的で公布・施行された日本の法律。国家機密のうち軍事機密を保護の対象とし、これらの探知、収集、漏洩を処罰した。軍人以外に民間人も対象で、軍港、要港、防禦港などの港湾、堡塁、砲台、防備衛所、その他国防のために建設した防禦営造物、軍用艦船、軍用航空機、兵器、陸軍大臣又は海軍大臣所管の飛行場、電気通信所、軍需品工場、軍需品貯蔵所、その他の軍事施設について、測量、撮影、模写(スケッチ)、模造、録取(記録)、複写、複製を禁止又は制限した。また、陸軍大臣又は海軍大臣は空域、土地、水面について区域を定め、その区域に於ける航空、気象観測、立ち入りの禁止又は制限、外国船舶に対する開港場以外の入港禁止又は制限を行った。最高刑は死刑。


2)野外令2000年1月に策定された、陸自最高教範『野外令』の「離島防衛」に関する一部を紹介する。戦いの原則 目標 戦いの究極の目的は、敵の戦意を破砕して戦勝を獲得するにある。戦いにおいては、目的に対して決定的な意義を有し、かつ、達成可能な目標を確立し、その達成を追求しなければならない。 奇襲 奇襲は、敵の意表に出てその均衡を崩し、戦勝を獲得するため、極めて重要である。敵の予期しない時期・場所・方法等で打撃すること及び敵に対応のいとまを与えないことは、奇襲成功の要件である。奇襲は、適切な情報活動、秘匿・欺騙、戦略・戦術の創造、迅速機敏な行動、地形・気象の克服等により達成される。 保全 保全は、脅威に対して我が部隊等の安全と行動の自由を確保するため、極めて重要である。適切な情報、警戒及び防護は、保全のための基本的な手段である。保全においては、敵の奇襲を防止するための方策が重要である。


3)自衛隊法103条

1項「自衛隊が出動を命ぜられ、当該自衛隊の行動に係る地域において自衛隊の任務 遂行上必要があると認められる場合には、都道府県知事は、防衛大臣又は政令で定める者 の要請に基づき、病院、診療所その他政令で定める施設(以下この条において「施設」と いう。)を管理し、土地、家屋若しくは物資(以下この条において「土地等」という。) を使用し、集荷、販売、配給、保管若しくは輸送を業とする者に対してその取り扱う物資 の保管を命じ、又はこれらの物資を収用することができる。ただし、事態に照らし緊急を 要すると認めるときは、防衛大臣又は政令で定める者は、都道府県知事に通知した上で、 自らこれらの権限を行うことができる。


2項「自衛隊が出動を命ぜられた場合においては、当該自衛隊の行動に係る地域以外の 地域においても、都道府県知事は、防衛大臣又は政令で定める者の要請に基づき、自衛隊 の任務遂行上特に必要があると認めるときは、防衛大臣が告示して定めた地域内に限り、 施設の管理、土地等の使用若しくは物資の収用を行い、又は取扱物資の保管命令を発し、 また、当該地域内にある医療、土木建築工事又は輸送を業とする者に対して、当該地域内 においてこれらの者が現に従事している医療、土木建築工事又は輸送の業務と同種の業務 で防衛大臣又は政令で定める者が指定したものに従事することを命ずることができる。

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