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17.意向表明書(LOI)について

M&Aのプロセスにおいて、意向表明書(Letter of Intent、以下LOI)は、取引の初期段階で作成される重要な文書です。
LOIは、買い手と売り手の間で交渉が本格化する前に、取引の基本条件や意図を明確にするために使用されます。この文書は法的に拘束力を持たないことが一般的ですが、M&Aプロセスを進める上での重要なステップです。

1. 意向表明書の役割と目的
LOIは、M&A取引における買い手と売り手の間の合意形成を助ける役割を果たします。具体的には、次のような目的があります。

基本条件の確認
取引の基本条件(買収価格、支払い条件、買収構造など)が記載されます。これにより、双方が同じ理解のもとで交渉を進めることができます。

交渉の前提条件の設定  
買い手と売り手が交渉を進めるための前提条件を設定します。たとえば、独占交渉権の付与や、買い手によるデューデリジェンスの実施などが記載されることがあります。

真剣な意思の表明
買い手が売り手に対して本気で買収を考えていることを示す手段でもあります。これにより、売り手は買い手が真剣に交渉に臨んでいると認識し、交渉を進めやすくなります。

2. LOIの主要な内容
取引の基本的な条件が含まれますが、その内容は案件ごとに異なります。
一般的にLOIには以下のような項目が含まれます。

取引の概要
取引の目的、対象会社や資産、取引の形態(株式買収、事業譲渡など)が記載されます。

価格と支払い条件
買収価格の範囲や支払い方法(現金、株式交換、分割払いなど)が明示されます。

デューデリジェンス
買い手によるデューデリジェンスの範囲やスケジュールが記載されることがあります。デューデリジェンスは、取引のリスク評価に不可欠なプロセスです。

独占交渉権
一定期間、売り手が他の買い手と交渉しないことを約束する条項です。これにより、買い手は安心して交渉を進めることができます。

法的拘束力の有無
LOIの全体または一部が法的に拘束力を持つかどうかが明示されることがあります。通常、取引の進行を保証するために特定の条項(機密保持や独占交渉権など)は法的に拘束力があるとされます。

3. LOIの法的拘束力
一般的に法的拘束力を持たないことが多いですが、これは全ての条項に当てはまるわけではありません。多くの場合、LOIの特定の部分(たとえば機密保持や独占交渉権)は法的拘束力を持つことがあります。これにより、双方が安心して交渉を続けることができると同時に、不要なリスクを回避することが可能となります。

ただし、LOIの法的拘束力については、事前に両者がしっかりと合意しておくことが重要です。誤解や不明確な部分があると、後の段階でトラブルに発展する可能性があります。そのため、LOIを作成する際は、専門家の助言を得て、文言を慎重に検討することが推奨されます。

4. LOIの重要性とその限界
LOIは、M&Aプロセスにおいて重要な役割を果たす文書であり、買い手と売り手が取引条件を大まかに合意するための基盤を提供します。しかし、LOIはあくまで「意向」を表明する文書であり、最終契約ではないことを忘れてはいけません。

LOIの内容が確定した後も、デューデリジェンスの結果や市場環境の変化に応じて、取引条件が変更されることは少なくありません。そのため、LOIの段階であまりにも詳細な条件を詰めすぎると、後の交渉が難航するリスクもあります。LOIはあくまで「道標」としての位置づけを理解し、柔軟な対応が求められます。

結論
意向表明書(LOI)は、M&A取引における初期段階での重要な文書であり、買い手と売り手の間で取引の基本条件を確認し、交渉を円滑に進めるための基盤を提供します。しかし、LOIは最終契約書ではないため、その限界を理解し、最終契約に至るまでのプロセスを慎重に進めることが重要です。


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