祈りと願いと贈り物。

人はそれなりの年月を生きていればその人生の中でひとつやふたつは心に瘡蓋があるのではないでしょうか。言い換えるなら重く分厚い心を塞ぐ扉。
羽生君は東日本大震災で大きな大きな傷を負いました。いまはその傷は瘡蓋となっています。けれど、毎年3月11日がやって来る毎にその扉を、いえ瘡蓋を剥がしてしまう。残酷なほど否応なしに。
でも、その傷を羽生君は決して否定せず受け容れている。
この傷があるからこそ、日本中いえ、世界中で起こる震災の報道に胸を痛め、自身に出来る事をと動き続ける。
国内においては、決して正しくないと思いつつ適切な言葉が浮かばないので許してほしいのですが、幸いな事に自身の足で被災地に赴く事が出来る。
全身で現地の情報を得ることが。誰かの利害や思惑などが入り込む余地のない現実の現地の姿とそこに住まう人々の姿と思いに触れられる。

これは「羽生結弦」でなければいけない事かもしれない。

先日も触れましたが、6月25日、羽生君は能登半島を訪っていました。
その時の放送が少し前にありました。
関東地域以外での地上波は、壁だったり、ローカルであっても放送されたり(北海道ではどうしてか最後のまとめの1分が強制カットされており、私は 素直に恨み節)様々ですが、日テレ newsevery では公式youtubeアカウントでその模様やそらジローとの絡みやその他和気藹々のオマケ動画などがアップされ、全てのファンの救済を担って下さっています。

年に数回のシリーズですし、取材はきっと丸々一日を費やして行われたのだと思いますが、TVで放送されるのはほんの僅かなエキスのみ。
実際どの様な会話がされたのか、講演会の内容は等、気になるけれど決して知り得る事はないのだろうなと些か残念に思いつつも、それでいいのかもしれないとも。
その一つ一つが羽生君の中に染み入っていくのだから。

輪島朝市を開催できなくなっても、地元の方々相手に週一で開催するようになったと放送されていました。その地元の方々の言葉の一つ一つに、かつて自分が追ってしまった傷をなぞりつつ、共感しながら静かに耳を傾ける。

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『GIFT』のDVD/BDがとうとう発売になりましたね!
どれだけ待ち望んだ事でしょう。『プロローグ』が発売になるという情報があった時に既に(これは『GIFT』も発売されるな)と確信はしていましたけど。
大方の皆さんは既にゲットされている事でしょう。そしてパーカー付きの限定版をお持ちの方も結構いらっしゃるのでは。
私はこれで全ての公演のパーカーをゲットできたことになります(嬉しい)。とは言っても(こんなにパーカーばっかり持ってどうすんじゃ)と思った事もありましたけれども。素材や厚み等に変化があって、オールシーズンの使い分けができる素晴らしい配慮!絶対全部着倒しますよ~w

閑話休題。

本編では残念な事に「いけるいける」がカットされてるDisney+配信verが収録されているもので、CSテレ朝で放送されたver(こちらには「いけるいける」が収録)はとっても貴重なものとなりました。円盤に焼けて良かったです。
映像特典は「GIFTが出来るまで」を時系列を駆け足で見せてくれましたね。
こちらもCSの舞台裏、D+のインタと被らない内容になっていて、物凄い配慮だと思いました。
DVD/BDに収録のものでは、1月のウィルソンへ「あの夏へ…」の振り付けを依頼する処から始まっていましたよね。ウィルソンが振り付けを説明してるところを羽生君が日本語で「ウィルソンさん、ウィルソンさん…」と話を遮って振り付けの終盤には癒しを求めていたのが胸を貫きました。
以前、こう言っていました。SOIで演じた時の話で「『あの夏』は〈崩壊〉と〈癒し〉をテーマにデビットと作り上げた子です」と。それがこの時だったのですね。

『GIFT』は本当に私達への贈り物でした。
羽生君が何か行動を起こすと漏れなくどこかの息が掛かったであろう胡散臭いライターが下げ記事をあげるのが定番となっていますが、この時も法外なチケ代と書いていましたっけ。けど、蓋を開けてみればこれがどれだけ破格だったかが分かります。映像を観ただけでもそれは絶対に伝わります。
東京ドームに60×30mの氷を張り、音楽は生演奏、それも東京フィルハーモニー交響楽団、音楽プロデューサーは武部聡志さん、音響デザイナー・矢野桂一さん、映像はライゾマさん、演出MIKIKO先生、ダンスはイレブンプレイの皆さんと、会場に設営された巨大スピーカーからモニターからのレンタル代からなにからに加えた人件費!
気が遠くなる位の巨額があの日一日の為に費やされたのです。

羽生君は応援してくれたファンへの感謝を、自分からの贈り物を受け取って欲しいと、それをテーマに作り上げたICE STORY。
私達が日常を送っている中にも小さかったり大きかったり、それはその人ならではの感覚、受け止め方でその規模は変わるものですが、失望・絶望・抱えきれない重荷や生きる事を辞めたくなってしまう位の地獄を見ることがあります。そして逃げたくなった時、逃げる事を許される時もそうでない時もあります。
でも、羽生君は俯く事も後ろを振り返る事もせずたった独り、私達なら到底抱えきれない重圧をずっと背負いながら、俯かず振り返る事もせず、時に涙しても逃げ出さず己を鼓舞し続け、心底絶望の淵まで追いやられても0.1いえ0.01%の希望を掌に握って離さず当時を迎え、全てを遣り遂げました。

奇跡ではない。
羽生結弦という一人の青年が自らの頭と身体を文字通り全身全霊で挑み、今この瞬間も世界中の誰かを救い続ける普及の名作を世に送り出した。
他の誰もが成し得られないこと。

そういう訳で、権利侵害は絶許なのであります。

このDVD/BDを世に送り出すために、どれだけの申請と許可が必要だっただろう。普段何気ないものにも権利ものは潜んでいるとはいえ、それらをクリアし漸く私達の手元に送り出してくれた。

私達の帰る場所。心の故郷。
それを土足で踏み躙る行為をする輩はファンじゃない。
見つけ次第通報は厭いませんわ。

羽生君の ICE STORY はこれからも彼が現役である間は続いて行くのだと思います。私はそれがとても楽しみで仕方ありません。
羽生君は自分でも自分の演技にはどうしたって祈りが含まれるという様な事を口にしています。
単独の演技でも、オンリーの ICE STORY でも、彼の根本にはそれがあるから。
彼が氷上で演技する時、陸でどこかの地方に心を寄せたり、それらの根底には全て癒しと再生を願う祈りがあります。
例外は存在しない。
そんな人をこれからもずっとずっと応援して行きます。命ある限り。

誰よりも光り輝く人。
大好きな人。
いついかなる時も健康と幸せを祈っています。