正体

2人の間にある距離が
風船みたいなものだとしたら
2人で抱きしめて潰すことができるし、
2人で持ち上げて空に飛ばすことだってできるのに、

なんだろう。その、正体。

大きな大きな海かしら。
私は泳ぐことができないから 
君に泳いで来てもらうしかない。
でも君も来なかった。

だから、そのまんま。

私には何度も波がやってくる。
その度、お互いが波に押しやられて、
遠くなっていく。
私だけかもしれないけど。

そんなにしょっぱくないはず。

もっと、
ふわふわで、
ぶよぶよで、
どろどろのなにかだよ。

食べちゃえ、
そう思ってなにかにスプーンで掬う。

おいしくない、それだけは分かった。

蝋燭の火みたいに消えるかも、と思って
思い切り息を吸って、
口を尖らせて、
何かに息を吹きかけた。

それが君の服に飛び散って、
君の服は汚れてしまって、
君は怒ってしまった。

だけど、泣かなかった。


いつのまにかわたしはふうせんで
雲にぶつかって潰れてた。
細かな傷さえも誰にも気づいてもらえないまま。

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