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ラーメンズが大好き

真人間です。今日はラーメンズの思い出を話します。
ラーメンズと、小林賢太郎の話。

ラーメンズが大好きです。小学5~6年生くらいのときに知ってから、ずっと大好き。路上のギリジン、金部、帝王閣ホテル応援歌、ミュージカル条例、全部暗記。
私が高校生のときだったかな、ラーメンズの公演「TEXT」の告知がありました。田舎の高校生ですからちょっと栄えた最寄りの駅前で遊ぶくらいしかしたことがありません。チケットを買うなんて初めて。イープラスも初めて。抽選に応募して、祈って、当選。当選してしまって「どうしよう!?」という気持ちと「ラーメンズを生で見れる!?」という気持ちがないまぜでした。電車もほとんど乗ったことがありません。もし遅延したらどうしようと思いながら開演時間よりずいぶん早くに行って、迷いながら劇場に着いて。覚えています。薄暗い劇場の中で自分の座席を探していくあのドキドキ感。座席にフライヤーがたくさん置いてある。演劇好きな人なら知っている人なのかもしれないけれど、何も知らない高校生、とりあえず眺めてみるだけ。物販でお小遣いで買える範囲のものを買ってみる。開演直後ですから人もまばら。知り合いもいないし、手持無沙汰でソワソワしながら待っていたあの時間。席が合っているかどうかと、携帯の電源を切ったかを執拗に確認していた。

穏やかに流れていたBGMのボリュームがギュイーンと上がり、同時に照明が絞られて、目を開けているのに真っ暗になる。何も見えないままに、心臓のドキドキとBGMの音量が高まっていく。どうなるの。何が始まるの。

コントが始まる。ラーメンズが居る。ラーメンズがいて、コントをしている。
あとはもう笑うだけ。劇場に行って見るコントって、こんなに面白いの?ツタヤで爆笑オンエアバトルのラーメンズまとめのビデオを借りて見ていたときの、数百倍面白い。腹筋が痛くて涙が出て顎が痛いのに笑わせるのをやめてくれない。腹がよじれる。そのうち不安になってくる。まだコント続く?もう終わり?薄暗くなって場面転換すると安心する。まだある!「スーパージョッキー」、これ、見たことある!ギリジンのオンステージだ!笑いが止まらない。「銀河鉄道の夜のような夜」、ああ、コレ、〆なんだろうな。照明が絞られてまた真っ暗になる。観客は全員割れんばかりの拍手をしている。私も。だってメチャクチャ面白かったから。観客が「面白かった!」と伝えるには拍手しかないから。アンケートもあったけどね。

それから「TOWER」ももちろん見に行った。腹がよじれるくらい笑った。ずっと笑っていた。
「トライアンフ」も「ロールシャッハ」も「振り子とチーズケーキ」も見に行った。「SPOT」も「うるう」も見た。「大人たるもの」も見に行った。「SPOT」のオチには感動した。でも違った。演劇作品を見たいわけじゃないんだとようやく分かった。アンチになるわけがない。ただ、小林賢太郎が作りたいもの、そしてそれに刺さる層から私が外れたことだけが分かった。KKPやポツネンはちょっと面白いけど違う。
顎が外れるような笑いではない。私はお笑いが好きで、お笑い芸人のラーメンズが本当に大好きだった。だからラーメンズの、「TOWER」の次の公演を待っていた。10年音沙汰がなかった。

片桐仁のテレビ露出が増え、サブカル俳優扱いされているのがどうしようもなく悲しくなったり、かぶりついて見た「ボクらの時代」で小林賢太郎が自分をお笑い芸人と紹介しなかったり、片桐仁の名乗りからラーメンズが外れていったり。予兆はあった。でも小林賢太郎が「ラーメンズは解散しない」と若いころに言っていた、という情報を知っていた。

小林賢太郎が引退した。オリンピック云々は関係なく、膝のケガだった。どうしようもないことだった。でも解散という言葉がなかったから、「小林賢太郎は引退したけどラーメンズは解散していない」と思っていた。でもラジオで片桐仁が「ラーメンズは解散した」と言ったんだって。私の大好きな芸人は解散してしまった。

なんで今更こんなことを、と思うかもしれない。
『表現を仕事にするということ』を買いまして。51歳になった小林賢太郎のエッセイを読んだんです。読んだんですが、ラーメンズはプロジェクトの一つとして扱われている印象でした。小林賢太郎はお笑い芸人ではなく、コントも書きたいし絵も描きたいしマジックもしたいしパントマイムもしたいし、作りたいものを作りたい、表現者だったんです。これは反対意見とか、お気持ちとか、そういうわけじゃないんです。腑に落ちたというか。あ、ラーメンズは、コントは、小林賢太郎のやりたいことの一つなのか。そっか。だから「TOWER」から10年ラーメンズがなかったんだ。もう一度言いますが私はアンチになったわけじゃないんです。悲しいけど、腑に落ちたからいいんです。

不運にも『ラーメンズつくるひとデコ』を一緒に買ってしまったんですね。これは小林賢太郎が29歳の時の本で、タイトル通りラーメンズとしての二人が本を書いているんです。ラーメンズへの愛がギュッと詰まっている。これが辛い。私はこれ以上の「ラーメンズ」を摂取することができないんだ。亡くなったおばあちゃんが漬けてくれた梅干しをチョビチョビと食べている気持ちです。読みたいけど読みたくない。悲しい。

アンチじゃない。お気持ち表明じゃない。私はラーメンズが大好きです。

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