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悪は存在しないー深い森に迷い込む
エンドロールが始まってしまってからずっと心の中で叫び続けていた。
ちょっと待って置いて行かないで!
出口の分からない深い森の中にひとりぼっちで置き去りにされたような心許ない気持ちでふらふらと映画館から何とか這い出した。
森の出口を指し示してくれるかも、という淡い期待を持ってパンフレットを買いに売店に行ったが、売り切れでさらに絶望した。
思えば、冒頭からずっと不穏だったのだ。
延々と続く木々を
ゴーストトロピック/かつて娘だった私の横顔
ゆっくりと暮れていく部屋が映される、生活感がありながらも程良く整えられていて居心地の良さそうな部屋だ。
そして呟くように重なるモノローグ。
これが私に見えるもの、聞こえるもの全てー
新しい私たちが見える。疲れていない私たちがー
この膨大な空間を私たちの人生で埋める、骨の折れる作業だー
誰か見知らぬ人がこの部屋に入って来たとき、何を感じ、何を聞くだろうー
私は恥じるだろうかー
暮れていく街並み
here ここにある静かな奇跡
変わりゆく街を、じっとたたずむ森が見ているような視点から始まる。
建設中の建物から街を見下ろす青年の後ろ姿、吐き出されたタバコの煙が中空を彷徨う。
多様な人種と見られる労働者の人たちが、ひとつの言葉でコミニケーションし、笑い合う。
束の間の眠りに落ちる青年の黒く煤けた指先、膨らんだ背中の始まり、労働者の佇まいは美しいな、と自然に思う。
バカンスを前に冷蔵庫にある残り野菜で、たくさんのスープを