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怖い夢

 怖い夢を珍しくはっきり覚えていたので、書き残そうと思う。


今日は友だちが家に来る。
映画を一緒に観るために、DVDを持ってきてくれるらしい。
もうすっかり日も暮れた時、ドアがドンドン叩かれた。友だちかと思ったが叩き方が尋常じゃない。

ドンドン、ドン、ドンドンドンドン

全然止まない。
いたずらか?
ドアスコープから見ると、ヒョロヒョロしたサラリーマン風のおじさんだった。
酔っぱらいか。
ひとしきり叩くと、おじさんは満足したのか帰って行った。

腹が立った。
だから驚かしてやろうと思ったんだ。
毎日ジョギングしてるので、足には自信があった。
ドアを静かに開閉し、出ていくおじさんのヒョロヒョロとした後ろ姿を静かに追った。
おじさんまであと十歩くらいまで静かに近づくと、

俺はいきなり大きな笑い声をあげた。

ギョッとして振り返るおじさん。
俺はその背中に向かって走り出した。
おじさんはつんのめりそうになりながら逃げた。
不様でさらに笑えた。
数メートル追いかけて、とうとうおじさんが派手にコケた。

愉快でスッとした。
気が済んだので追いかけるのを止めた。
そして、逃げるおじさんが見えなくなるまでその場で大声で笑っていた。

高揚感とともに家に帰ると友だちが来ていた。
一緒に家に入って、さっきの事を話そうとした。
その時、

ドンドン、ドン、ドンドン、

またドアが叩かれた。
叩き方がさっきと同じだった。
友だちは怯えていたが、俺だってそうだ。
だって、おじさんが見えなくなるなるまで見送って、走って帰って来たんだ。
そんな数分でヒョロヒョロのおじさんが戻って来られるとは思えなかった。

ドンドン、ドン、ドンドンドンドン

ずっとドアは叩かれてる。
ドアスコープをそうっと覗くと、
あぁ、やっぱりあのおじさんだった。
さっきとは違って、満面笑みを浮かべてドアを叩いている。
怒っているのだ。きっと。

顔中に貼り付けた笑顔が深いシワを刻んでいる。
膝がガクガクして思わず跪いてしまった。
そしてそのまま玄関の前で土下座で謝った。
ドアの向こう側で暴れ続けるおじさんにそれはもう誠心誠意謝った。

「出来心だったんです。もうしません。許してください。許してくださいお願いします。お願いします。」

最後の方は涙声だった。
10分くらいした頃、
ドアの向こうで爆笑が聞こえた。
そして、やっと叩くのを止めたおじさんは帰って行った。笑いながら帰って行った。

その日から、ドアが叩かれないか不安で家に一人でいるのが怖くなった。
ジョギングも止めてしまった。
あのヒョロヒョロとしたおじさんが、後ろに立ってるような気がするからだ。

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