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母のガン④手術

本人が胃を全摘する決意ができていなくても準備は滞りなく進み、予定時間通りに母は手術室に運ばれて行った
もっと前から全摘の話をしていたら手術までの3週間、きっと母は泣き暮らしていたと思うから説明が前日で本当によかった。
9時から始まった手術の付き添いを12時頃に姉と交代して昼食をとりデザートを食べ始めた頃大腸の手術が終わったと看護師に呼ばれた。
予定より40分くらい早いのだが無事摘出できたとのこと。摘出した10センチほどの大腸の真ん中に1センチくらいの腫瘍の現物を確認して談話室へ戻る。
その後予定より早く胃の手術も終わりトータル7時間の7手術は無事終了した。姉たちと摘出した胃を見たが腫瘍は胃の大部分を占めていて一部腐っていた。

そこで思い出す。母は30年前子宮筋腫が肥大して子宮を摘出したのだが、術後の説明で医師が子宮を切りながら
『ああやっぱり腐ってる』とつぶやいたのを今でも覚えてる。
当時高校生だった私は腫瘍を腐るまで育てた母に心底呆れたのだが、この時も極限まで我慢して限界がきてバイクで病院に行った。
人はそう簡単には変わらないのだ

説明が終わって30分くらいして母が運ばれてきた。
意識はあるので声をかけてあげてと言われ、苦労をねぎらったが目をつぶったままもごもご言うくらいでちゃんと意思疎通はできなかったように思う。
今日はこのままICUに入るので明日の面会14時まで会うことはできない
長い1日は終わった

翌日14時に母の面会に向かう、こんな時無職は本当に便利だ
通院や手術で残りの有給が心もとない姉たちは定時後に面会するので、その前に第一報を送らねばと意気揚々とICUへ。
意外と母は笑顔で迎えてくれた。朝から意識はハッキリしていて傷の痛みはあるものの廊下を2往復歩いたそうだ。思ったより状態がいいなと安堵していると気持ちも前向きになっているのにびっくりした。
表情も本当に明るくなっていて、まさに憑き物が落ちたとはこのこと。摘出した腫瘍の話をそうか全部ちゃんと取れたのかと自分に言い聞かせるように頷いていた。
ICUでの面会時間は15分、あとで姉たちも来るからと言った私を笑顔で手を振って送り出した。
胃を全摘して通常の生活が送れるようになるまで3か月かかるという
年末にはみんなで温泉旅行に行けるのではないか。そんな希望を抱いた日だった。



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