近代における西洋医学の受容過程と地域医療の形成

宮崎学園短期大学 現代ビジネス科 教授 黒野 伸子

 現在は西洋医学を中心とした医療が一般的であるが、地域に定着するまでには、感染症予防の啓発や西洋医学の啓蒙活動等多くの困難と努力があった。研究では、地域住民がどのように西洋医学を受け入れ、地域医療の形成に関わっていたかを「患者側」と「医療提供者側」双方の視点から明らかにしようとしている。右の写真は明治後期の診療明細書である。現在では発行が義務化されているが、100年以上も前から患者はこのような明細書を受け取り、診療内容の説明を受けていたのである。明治期には既に優秀な医療事務員がいたことも分かっている。
 高齢化社会の今、地域医療は重要視されており、明治期に実施された改革過程に学ぶことは意義深い。今後も研究を続け発信していきたい
※本研究は2022年科研費(基盤研究C)に採択されました

図:小寺家文書9-103-8 明治41年7月10~22日明細書

 上図は岐阜県大垣市の旧家小寺家に伝来する小寺家文書から黒野が発見した診療明細書の一部である。現在解読を進めているが、現代の医療制度に繋がる多くの事実が明らかになってきた。

 研究成果の発信として、上石津郷土資料館企画展「小寺家文書にみる西濃地域の医療」(2022年3月12~7月18日)に解説文の作成、展示物提供等、全面協力した。本企画展はメディアにも取り上げられた。


《発表論文》
1.黒野伸子他(2022)「西洋医学の受容過程と近代地域医療の発展」
2.黒野伸子他(2020)「小寺家文書にみる明治後期の地域医療(1)(2)」
3.黒野伸子他(2019)「奈良時代における疾病観、医療観の重層性」


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