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Strong ze Rose



「お前の事は9%だから」
突然ゼロ男からのメール。

「なんなの9%って。
   残りの按分はどーなってんのよ」

悲しみと怒りの入り交じった声でそう呟くと
リサミは禁断の6本目のストゼロ500ml缶を開けた。

コレを飲み干すと彼女は54%。

そして気が付くとリサミはゼロ男といつも待ち合わせしていた駅前のベンチに向かっていた。

見慣れた人影が。
会いたかったあの人が…。

そう、ゼロ男がそこにいたのだ。

「あのさ、リサミ…」
何かを言いかけてやめるゼロ男

「あなたへの未練は46%だから…
あの日、あなたに酔いしれたかったの。
失恋の傷も元彼の優しさも…全て忘れたかった。」

「そうなの…だから…」

こんな事を言いに来たのではない。
頭ではそう分かっていた。
それでもリサミはこう続けた。

「初めは刺激的な9%くらいがちょうどいいとさえ思った。それでも気が付いたら本気で愛してしまった。

でも…それも今日で終わり

最後は…笑顔でバイバイ。
今までありがとね。」

そう告げると踵を返し、足早に家路へと向かうリサミ。

あとを追いかけて来て欲しい気持ちと
そっとしておいて欲しい気持ちがぶつかりあった。

もちろん彼は追いかけては来なかった。

こんなはずじゃなかったのに。

どうしてこうなったんだろう。

ゼロ男と一緒に…
これから先もずっと一緒だと思ってたのに。

そんな事を思いながらも
リサミは湯船に浸かりながら声を抑えて泣いた。


彼がリサミの前から姿を消した翌週、
彼との共通の親友である長井にやけ酒を付き合ってもらったのだ。

長井は2人が別れた事は知っていた。
だからこそやけ酒に付き合ってくれたのだ。

あのドラマがどうだとか
芸人のネタがどうだとか気を使って話していた長井。

2人の酒のペースも進む。

そして話し始めた長井
「あいつにはリサミちゃんには言うなって言ってたけど…黙ってられなくて…。
あいつはさ夢を叶える為にパリへ行ったんだ。

リサミとの将来を本気で考えてる。
だから半端な俺じゃダメなんだ!
1人前になって必ずリサミを迎えに来るから!
それまで悪い男がつかないようにリサミを見守っててくれないか?ってさ。

リサミちゃんはあいつの真っ直ぐで
純粋な、そんなとこに惚れたんだろ?」

リサミは安堵の表情と涙を浮かべながら
黙ってこくりと頷く。

少し間が空いて
「カッコつけすぎだよ、バカ♡」と一言だけ呟いた。


酔いも回ってきたのか饒舌になる長井。

そして畳み掛ける様に長井は続けた
「馬鹿だよな、こんな可愛い彼女がいるのに
ほかっておいて夢を叶えるなんて。
俺なら絶対ほっとかないのに。」

はっとする長井。

「あ、ごめん、最後のは半分冗談だからね!
俺ももう歳かな?酒回ってきたみたいだ!」

冗談だと誤魔化す長井の表情は
優しさと寂しさが入り交じっていた。
そしてどこかバツが悪そうに手洗いに立った。

半分冗談…そんな言葉がリサミの頭を過ぎった。
でももう私は決めた、長井くんごめん、そう思ったリサミ。

長井が席に戻ると
「長井くんチャラいわ〜、私じゃなかったらさっきので落ちてたわ、絶対!あ〜チャラ」と茶化して長井への配慮から冗談と受け止めた事にした。

そして翌日、リサミは会社に休職届けを出し
ゼロ男を追ってパリへ向かう。


この時、ゼロ男はまだ知らなかった。


9%から始まった恋が
これからゆっくりと時間をかけて
100%の愛へと育まれていく事を。

1度外れかけた運命の歯車が
再び2人を巡り合わせると言う事を。


物語は一旦ここでおしまいです。
この話はTwitterのリプ欄の
ノリで生まれた話を元に書きました。

読んで頂きありがとうございましたm(*_ _)m

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