プランタジア

プランタジア
作曲：モー・ギャルソン

『マザー・アースズ・プランタジア』（１９７６）

ロバート・ムーグが１９６４年に発明したアナログ・シンセサイザー、ムーグ・シンセサイザーを使って
カナダ人作曲家モー・ギャルソンが作った３０分５５秒のLP盤（２面）。
L.A.の植木屋マザー・アースで観賞用植物を買った人とスィアーズのアウトレットで
スィモングのマットレスを購入した人だけに配布されたので無名だったが、次第に有名になり、
最近ではレコードとCDとデジタル音源が頒布されている。LP盤のカバーには
    warm earth music for plants...
    and the people who love them
という言葉と、鉢植えの植物を囲んで手を繋ぐ、安らいだ表情の二人の人物が描かれている。

("Mother Earth's Plantasia." Wikipedia 19 Nov. 2021. Web. 2 Jan. 2022.)

サイド・ワン
NO.２　”シンフォニー・フォー・ア・スパイダープラント”
（オリヅルランのための交響曲）１６１秒
わたしの夢は中古のレコード・プレイヤーを手に入れて、マンハッタンの古いアパートの、植物と植物を愛する人のための音楽が流れる部屋で、生活すること。温かいチャイ・ティーが作れたら、きっと素敵だな、昔、留学生が教えてくれたレシピで。あれをもう一度（家を出る時、売り捨てた、DS Liteニンテンドー）だけ手に入れて『星のカービィ鏡の大迷宮カービィ＆ザ・アメイジング・ミラー』を遊びたいな。そうそう、「ノーブルピンク」。カービィを遊ぶのにぴったりな色だったよね。あの留学生は確か一年で？もっと話したい、という時期の・・・転学。だったかな。

NO.３　”ベイビーズ・ティアーズ・ブルース”
（コケイラクサ・ブルース）１８３秒
ぼくはミュージシャンでも玄人のリスナーでもないから気の利いたことは言えないけど、この曲を聴くと、サーカス小屋からゆっくり脱走しているダンボをイメージする。なんとなくひょうきんで、でも実は本気で、逃げつ、踊りつ、つまり、ワルツの、ブルースだ。人間にこき使われている、仔象のね。それでもやっぱりディズニーらしいブルースなんだ。図式化すると、「青ブルー」が部首じゃない方で、「夢と魔法ディズニー・マジック」が部首の漢字みたいだ（空想の、ね）。話が逸れたけど、コケイラクサってのは全体的にモ・ッス・リとしてコケゴケ・・・・しくて、にくめない。どんな植物か気になってたでしょう？ほら、よく見て、葉っぱが、ダンボの丸い耳みたいで、可愛いんだから。

NO.４　”オード・トゥ・アン・アフリカン・ヴァイオレット”
（セントポーリア讃歌）２４３秒
吽非若うんにゃ、我おらは臼賀原うさむばら山の熱帯雨森ゆだゆだのくにに昔むうかしっから久ずうっと住んでよ。丘陵人ここらんは我おらを「どぅぐるし」って呼ぶ人んが多いな。雖んだけども、さいきん東夷まづんぐが、海からやってきて、昔むうかしから戦ころしは絶えないけども、丘陵人ここらんを殺いじめた。熱帯雨森ゆだゆだのくにも大分でえぶ小けずれてよ。東夷まづんぐから丘陵人ここらんを知おさめにきたけども熱帯雨林ゆだゆだもりで初中後しょっちゅう散歩さぼってる「聖人法螺ざいんと・ぱうりらいれ」謂ちゅう小智きぞくが居てな、ある乾季あきの日。「聖人法螺ざいんと・ぱうりらいれ」が熱帯雨林ゆだゆだもりで散歩っていると、我おらを見つけて、東夷まづんぐの森くにの「菫すみれ」謂ちゅう花こさ思った。思ったから仕事もせんで右往左往うろちょろしてたんだな「法螺ぱうりらいれ」は。何でえ、我おらのこと、「この臼賀原うさむばらに菫が」って違えては、「お汝めえさんを連れていいか」って聞かずに、寒い東夷まづんぐの森くにに連れてきて、そうしてこで我おらは殖やされちまった。そのうち東夷まづんぐの森くにでも温暖あったけえ林むらにも連れてきて、たまには熱帯雨森ゆだゆだのくにが懐かしいんだけども、我おら「もー」謂ちゅう人んが気に入ったんだな。なんたって我おらのために歌をつくって、吾おらの森くに、吾おらの山、臼賀原うさむばらをうたってんだもの。Éう・ﾖさ・賀む・佰ば・小らっていう拍子があるだろ。何遍も、繰り返して、繰り返して、な。この我おらを、どぅぐるしを、東夷人まづんぐんでわかってくれるのは「もー」だけだ。な。聞け。Éう・ﾖさ・賀む・佰ば・小ら。よいさ。Éう・ﾖさ・賀む・佰ば・小ら。な。

NO.５　”コンツェルト・フォー・フィロデンドロン・アンド・ポトス”
（愛木フィロデンドロンと石柑ポトスのための協奏曲）１８９秒
誰
か
に
頼
ら
ず
に
は
生
き
て
い
け
な
い
人
だ
っ
て
い
る
蔦
だ
っ
て
い
る

NO.１　”プランタジア”　２０１秒
口笛とテルミンとの交歓に生まれ、ポプラの木に目覚め、初めての歌を歌い始め、その歌をカズラのホルンが祝福し、一匹の小鳥は生きる。女神の、一本一本が雷で、また摩天楼でもあって、地平線から突き出る長くて太い睫毛が、乳白の、悲しみでなく交歓の後の目覚めの喜びのそれである、涙を滴らし、滴る液が、世界を孕ませて、溺らせて、枯らして、潤して、一粒ごとに、一粒の、種を育んでいる。
　　生命はシリコンとセルロースとセロトニンで出来ている。詩人と小鳥と鈴と、そう、みんな同じで、みんな―詩と、木と、すこしの、音。

♫

サイド・ツー
NO.７　”スウィンギン・スパティフィラムズ”
（スウィングするスパティフィラム等たち）１７５秒
ドット絵のココヤシの実がFPSフレーム・パー・セカンドの風に揺れている。ソニック・ザ・ヘッジホッグがスケートボードで海岸沿いを駆抜ダッシュする。パッションフルーツのサーフパンツとスノーホワイトのワンピース横目に、ヒールフリップ。オールズモビール４４２フォーフォーツーのコンバーチブルをオーリーで超え、中央分離帯ミディアン・ストリップのレールを滑降グラインドして行こう。黄金のコインにまたオーリー。最高で行こう。沿道のスパティフィラムが白い仏炎苞スペイズを振っている。仏炎オーリオーラっていうとクールだけどさ、音速青鼠ソニックの目には輝く女性象徴ヨニックにしか見えてないよ。

NO.８　”ユー・ドン・ハフ・トゥ・ウォーク・ア・ベゴニア”
（ベゴニアは散歩しなくていい）１５１秒
さあ、あの雲にとびのって！あ、そっか、きみたちは足が無いんだっけね。でも大丈夫。ぺガススが迎えに来てくれるんだ。メリー・ゴー・ラウンドのペガスス一羽一羽にベゴニアの花瓶が乗っかってる夢見てね、迎えに来て見たんだ。他に誰もいない、ベゴニアのためだけのゆうえんちをお願いしておいたよ。わたあめの匂いと、アイスクリームを売りに来るメロディが流れてる、天国みたいなところだよ。誰か言ってた「ベゴニアは、散歩しなくていい」。でも人って「しなくていい」って言われた方が、案外したくなっちゃうもんだよね。え、天使だってそうだよ！

NO.９　”ア・メロウ・ムード・フォー・ア・メイデンヘア”
（ホウライシダとほろよい気分）１３７秒
「来週は《江戸の園芸熱ー浮世絵に見る庶民の草花愛ー》に行きましょう！」だってさ。面白いと思うけど、また朝早いんだろう。今日も茗荷谷の植物園に朝１０時。寒い日にわざわざ日陰にしゃがみこんじゃうし・・・
　　どうしたの。ーちょっとね。またただの草見てるの？ーただの草、じゃないの、シダだよ。ふうん。ーこれがホウライシダだよ。ほう。ーよく似たのにハコネシダってのがあってね、どうやって見分けるかっていうと（おやおや）、おほん（あらら）、葉っぱを見比べますと、葉尖にあるソーラスのつき方が違って・・・
　　あらあら、今日もぼっち飲みですか。ハイ。あはは。まだ五時過ぎですけど。朝型すぎないか、いくらなんでも。健康なのはよろしいですけどいつまでもこんなんじゃ、ワタクシ困っちゃう、困っちゃいますよの、よいよいよ。そうだ、良い事を思い付いた。霧吹きに酒入れて、吹きつけたら草って酔っぱらうのかな。佐保さんの代わりに相手してもらうぞよ、なんとかシダくん。えーと霧吹きはー・・・っと、あれ、外が。意外にも、さみしい、夕焼けが、よい、よい、よい、ぞよ。

NO.１０”ミュージック・トゥ・スーズ・ザ・サヴェジ・スネークプラント”
（獰猛な虎尾蘭サンセベリアを宥めるための調べ）２０３秒
集うごなり侍べる諸葦あしたち、諸苔こけたち、諸土つちたち、園官人等そののつかさのひとども諸聞食もろもろきこしめせと宣のる。
國中くにちに成り出でむ天之益草等あめのますくすらが過ち犯しけむ罪事つみごとは雑雑くさぐさなれど、剣たち佩はく虎尾とらのおの荒振あらぶるの罪出でむ。虎尾とらのおは八重の剣たち以もちて天之八重雲やえぐもを伊頭いつ千別ちわきに千別ちわきて、語問こととひし磐根いはね、樹この立たち、草の垣葉かきはをも語止ことやめし。如此出かくいでば、虎尾を焼鎌やきがまの敏鎌とがま以もちて打掃うちはらへ給ふ。如此打掃かくうちはら給へば、天之益草等あめのますくさらに遺る罪は千歳ちとせに八千歳やちとせに不在あらじと祓へ給ひ清め給ふことを諸もろもろ聞食きこしめせと宣のる。

NO.６　”ラプソディー・イン・グリーン”　２０８秒
霧たつ朝、霧たつ夕にたつ霧を吹き払う朝風よ夕風よ。
露をむすびて山吹の葉から葉へ、花から花へころろころ、まろぶ環たまきの玉の置く露、その露よ。
奥つ方、苔むす奥つ城きにそりたつ鹿かのししよ。
緑あおき若葉の人が来て、草枕をそっとする。

霧たつ朝、霧たつ夕にたつ霧を吹き払う朝風よ夕風よ。
露をむすびて山吹の葉から葉へ、花から花へころろころ、まろぶ環たまきの玉の置く露、行く川に解けて消える、その露よ。
奥つ方、苔むす奥つ城きにひとり鳴く鹿よ。
背に負う露を、朝風に夕風に、吹き払われた、山吹が、眠ろうとする。
緑あおき若葉の人が来て、草笛をそっと吹き始める。

♫