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【ネタバレなし】「ジョゼと虎と魚たち」感想

コロナ禍で劇場鑑賞を勧めにくい葛藤はあるが、是非劇場で観てほしい。
この映画は美しい映画だ。映像とキャラとストーリーと音楽が美しい。
自分には二次創作の絵や小説などを生み出せないが、何かをアウトプットをしたいと思って拙いながらもnoteで感想を書く事にした。
(現時点で3回観たが、もう1回観に行きたい。)

「ジョゼと虎と魚たち」ロングPV https://youtu.be/UqroXVubLzI

「ジョゼと虎と魚たち」冒頭シーン https://youtu.be/koeUdi-JyWA


【甘くはないけど、優しくて美しい物語】

ジョゼは恒夫と出会う前は引きこもって暮らしていたが、夢に向かって一直線な恒夫と出会う。ジョゼは恒夫と一緒に外に出て世界を広げていって徐々に前向きになり、やがて諦めていた夢に手を伸ばそうとする。丁寧に作りこまれた映像はとても美しく、私たちが普段当たり前だと思っている日常的な風景もジョゼの目には宝物のように見える。
どこか諦めていたジョゼが徐々に世界を肯定的に捉えていけるようになる様子を丁寧に描いている。

彼女には「足が不自由で歩く事が出来ない」というわかりやすい不自由さはあるが守られるばかりのお姫様ではない。足が不自由であること自体は不幸ではなく、「物理的に出来ないことはあっても、心までは不自由じゃないよね」と優しく描かれている。
そして恒夫は白馬に乗った王子様ではない。ジョゼの足が不自由な事を憐れんだりしないで、まっすぐぶつかっていく。でもただぶつかるだけじゃなくて、相手の事を理解しようとする優しさがある。彼は夢に向かって一直線故にたまに周りが見えていない所もあるが、一生懸命に頑張る姿勢には自然と応援したくなる。

最初の出会いではジョゼは恒夫に減茶苦茶辛辣な態度を取るが、徐々に心を開いて外に出て世界を広めて行きながら、恒夫に少しずつ惹かれていく過程を丁寧に描いている。一方で恒夫もジョゼに振り回されながらもジョゼの心に触れ、ジョゼに少しずつ惹かれていく過程を丁寧に描いている。

お互いの心の距離感が縮まっていく様子が微笑ましく、ジョゼの目まぐるしく変わる豊かな表情と感情表現、恒夫との掛け合い、キャラの繊細な心の機徴を細かく丁寧に描いていて素晴らしい。また、ジョゼはその時の心境に合わせて服装などが変わるので注意して観てほしい。とにかくジョぜがかわいい。


物語の後半からは二人に「甘くはない現実」がリアリティを以てこれでもかと迫ってきて、ジョゼと恒夫は苦境に立たされる。観ていてとてもツラかった。
「甘くはない現実」は生きているだけで否応なしに遭遇するし、夢を追いかけれていればなおさらだ。必ず傷付いて苦しい場面が発生する。
そんな経験を何度もしたら「最初の一歩を踏み出す」ことが段々怖くなる。また失敗するんじゃないか…頑張っても無駄になってしまわないか⋯と傷つく事に怖気づいて立ち向かえなくなる。
やりたいことがあるなら「最初の一歩を踏み出す」ことは早くやった方がいい。そんなことは分かってる。でもその勇気が出ないという経験は皆あると思う。

苦難を乗り越え二人は人間的な成長を遂げるのだが、この映画の素晴らしい所はツラくて立ち止まってしまった人に優しく寄り添い、どうやってその「甘くはない現実」に立ち向かうためにまたその「最初の一歩を踏み出す」かを丁寧に描いている。
チャレンジすることには常に不安が付きまとう。失敗したらツラくてみじめだし、全部投げ出したくなるし、頑張った経験すらも全て無駄に思えてくる。それでも、傷ついても勇気を出してまた「最初の一歩踏み出す」。そして前向きに歩いていく。
この作品は最初の一歩を踏み出せないでいる人、今まさに頑張ってる人、頑張る事に疲れてしまった人の気持ちに優しくそっと寄り添って応援してくれている気がする。



主題歌・挿入歌

https://youtu.be/pyDCubgU57g

両方ともEveさんでとてもいい曲なのだが、特にエンドロールで流れる「蒼のワルツ」は素晴らしい。優しい曲なのにそれぞれのキャラの苦悩や痛みもストレートに伝わってきて、全部引っくるめて爽やかで前向き気持ちになる。特にサビの歌詞が良い。


ただ願って願って 生まれ変わっても
不確かな未来を謳っては触れたくて
伝って伝って 頬を流れる
その涙の味は いつかの約束
ただ灰になって 朧げになって
遠く何処かへ この夜を越えて蒼に染まる



ポスター


映画を観終わった後、是非ポスターを再び見てほしい。在りし日の二人が笑顔で並んで歩く姿と
キャッチコピーの"やさしさも、涙も、憧れも、ぜんぶ。"だけで泣ける。

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コロナ禍で劇場鑑賞を勧めづらい葛藤はあるのだが、それでも劇場で観てほしいと断言できる作品なので可能な範囲で劇場で観ることを勧めたい。公開終了する映画館が増えてきているが、是非観てほしい。

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