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喧嘩を売る買う。
▶︎喧嘩を売る買う。(実践編)014
チャールズ・チャップリンが「街の灯」という映画を製作している時の事です。当時のサイレント映画に台本はなく、撮影現場に行ってから閃いたことや即興演技の積み重ねで撮影を進めていました。
浮浪者チャーリーが初めて盲目の花売り娘に出会う場面。少女に一目惚れしたチャーリーはなけなしのコインを少女に渡します。お金を受け取った少女は手探りでお釣りを取り振り返って渡そうとするのですが、そこに彼の姿は無く………。
という設定なのですが、目の見えない彼女が何故彼がいないと認識出来たのか。これをどう映像化すれば良いのかチャップリンは行き詰まってしまいました。翌る日も、またその翌る日も現場に行って試行錯誤しますが良いアイデアは浮かびません。そしてなんと1年後、とびきりのアイデアが浮かんだのです。
少女がお釣りを返そうと振り返った時、車道に停車していた自動車に金持ち紳士が乗り込んでドアをバタンと閉めます。そしてクルマは発車して行くのです。少女はその音を聞いて花を買ってくれた客が去ったのだと思い込むのです。しかしチャーリーはまだ少女の目の前にいました。そして彼女が勘違いしたのだと悟ると、そのまま静かに後退りして彼女の前から消えるのです。
ワンシーンを撮影するためだけに1年かけるというのも凄い話ですが、同じ事を1年間考え続ける執念と果てしない想像力には脱帽です。
最近では「全日本仮装大賞」くらいでしか拝見出来ない萩本欽一さんですが、彼がコント55号で登場して来た時の衝撃を僕は忘れることが出来ません。萩本欽一さんと坂上二郎さんは舞台を縦横無尽に駆け巡り、欽ちゃんが押し付ける無理難題に二郎さんが必死に食らいついて行く様が当時中学生だった僕にはたまらなく斬新で可笑しかったのです。
実はあのコントに台本は無く、大体の設定だけ決めて出たとこ勝負でやっていたということを最近知って改めて驚きました。明石家さんまさんがバラエティで「テレビは戦場だ」とおっしゃっていますがあながち冗談では無いなと感じます。
そういう意味で、俳優は台本がある事で状況や相手役に油断しがちです。そんな緩みを打破するために僕は「喧嘩を売る買う」というエチュードを考えてみました。
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