祟る天白(浜松市:上島地区調査)

画像1 浜松市中区上島に高貴(たかき)神社という神社がある。境内には天白神が合祀された建物がある。以下、立札に書かれている社の由来の要約。「昔、坂上田村麻呂が蝦夷討伐の際、磐田の海が荒れていることを知った。鎮めようと祈祷をすると白馬に乗った白髪の老人に治水の珠を授けられた。それを渕に沈めると荒れが治まったので、討伐の帰路に同所で天白神を祀った。明治6年に別の場所にあった天白の社を高貴神社に合祀した」。ここでは毎年大晦日の夜に火祭りが行われているらしい。筆者はまだ参加したことがない。
画像2 では、この高貴神社の天白社はもともとどこにあったのだろうか。上島地区の土地法典を見るとここより数㎞西に行ったところに「天白」という小字を確認できた。実際に行ってみる。閑静な住宅街である。鎮守の森のようなものも一切ない。高齢の女性が庭いじりをしていたので「天白」という地名を知っているか聞いてみた。わからない、「天白」と言えば高貴神社しかしらない、という。お礼を言い立ち去ろうとすると、「そういえば」と引き留められた。
画像3 「昔、(女性の)知人が(知人の)父親に近くの土地に家を建てたいって言ったらしいんだけど、その父親が許さなくてね。知人が理由を聞くと、『昔ここには神社があったから、家を建てると祟られる』って言ったって。だから、昔からあそこに家は建ってなくて、今でも駐車場になってるよ。帰りに見ていってご覧」とのこと。その話と土地法典から推定するにその「神社」とは合祀前の高樹神社の天白社とみて間違いない。言われた場所にいってみると確かに駐車場があった。住宅街の区画の中央に位置しており不自然である
画像4 筆者はこれで満足だった。だが、女性がこの近くに小さいお寺もあるから行ってみるとよいと紹介してくれたので、せっかくだからとその寺へ向かった。すると白華寺という黄檗宗の小さな寺があった。住職がこの周辺に詳しいかもしれない。探していると立て看板が目についた。
画像5 立て看板には「天白(光福院守護神)」の文字が見える。「光福院」とはここ白華寺の前身の名前である。以下、立て看板に書かれた伝説の要約。「昔、磐田の海に赤蛇が出て旅人に危害を加えていた。東征の途中の坂上田村麻呂が薬師如来を勧請した。薬師如来の仏力により赤蛇は田村麻呂の子を産み、海の航行往来の安全を守る存在となった」。高貴神社の伝説同様、「坂上田村麻呂」や「磐田のあれた海」が出てきた。ただ、物語そのものには「天白」というワードはない。天白と蛇にまつわる伝説は他でも聞いたことがあるが、それについては後日書く。
画像6 写真:1枚目2019/08/27撮影、その他2020/08/03撮影、参考文献:なし

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