2022.08.09 内山結愛のB2BtoU プレイリスト

RAYの内山結愛さんが企画する、決められたテーマに沿って楽曲をセレクトして語り合うトークイベント、
#内山結愛のB2BtoU  に参加した際の自分のチョイスした5曲を、その理由も含めてここに紹介していきたいと思います。
Apple Musicのプレイリストリンクを貼っておきますが1部配信されていない曲が含まれている為

お題1.「中毒」
The Velvet Underground - "Heroin"

もうこれは1曲くらいベタな曲があってもいいだろうという思いからの選曲。
言わずと知れたThe Velvet Underground(VU)の1stに収録されたこの曲。
バンドサウンドと共に鳴らされるヴァイオリンの音がやがて粗暴なノイズへと変貌し、
「ヘロイン、これこそが自分の死。我が人生」と優しく歌われる。
曲を通してドラッグを使用した者の身体と精神にどのような変化が起こるのかを音楽で再現したかのような1曲。


お題2.「黒」
BOOM BOOM SATELLITES - "FOGBOUND Flit Through"

この曲については、タイトルや歌詞に黒というモチーフは出てきていません。しかし、曲全体が暗く黒い影に包まれているような感覚を覚える。
というか、この曲が収録された「UMBRA」というアルバム自体が「黒い空気」を纏っていると感じる。

最初の音源をベルギーのレーベルからリリースし、当時のUKのダンスミュージックシーンで脚光を浴びたのちに日本に逆輸入される形でその人気に火が付いたBOOM BOOM SATELLITES(以下BBS)ですが、当時のバンドとしての状況がこの2ndアルバムである「UMBRA」に色濃く反映されている気がしてなりません。 

このバンドでボーカルギターを担当していた川嶋さんは、脳腫瘍という病を患いながら、幾度となく手術を繰り返していたという事実は、このバンドを聴いている人達の多くが知っているかと思います。
この「UMBRA」を制作する前にも脳腫瘍の大きな手術を行っており、常に「死と隣り合わせ」の状況であったことは容易に想像することが出来ます。
そんな状況の中、世界的に称賛された1stアルバムを超える物を作らなければならないというプレッシャーと立ち向かい、死に物狂いでビートというものにストイックに向き合いながら完成させたアルバムが本作であると思っています。
ダンスミュージックの本来持つ高揚感や解放感、ロック的なカタルシスはほとんど感じられず、極限まで研ぎ澄まされたビートを主軸とし、そこにフリージャズやヒップホップの要素を導入したかなり挑戦的な内容(パブリックエネミーのChuck Dも客演している)となっていて、BBSの全作品の中でも非常に特異な存在となっています。

前置きが長くなりましたが、この黒く閉ざされた空間の中で、ビートだけを頼りにもがくように踊り続けているようなこの曲を、自分は今でも愛して止まないのです。

ライブをする度に曲のアレンジが変わる事で有名なグループですが、このライブのオーディエンスの盛り上がりにいつも感動してしまいます。


お題3.「夏」
COWPERS - "シチガツ"

もはやその存在が神格化されつつあるといっても過言ではない、bloodthirsty butchersというバンドを語る上で避けて通ることのできない代表曲、「7月」。

選曲した自分の誕生月が「7月」であることもあり、夏を迎える度にこの曲が脳裏に浮かんでくるのですが、内山さんは既に自身のレビューでbloodthirsty butchersの「kocorono」を取り上げており、普通にこの曲を選ぶことはあまりにも忍びないと感じたため、同じく過去にレビューで取り上げられたbutchersの盟友、COWPERSがカヴァーした"シチガツ"をセレクト。
(1999年にリリースされたbloodthirsty butchersトリビュートアルバムに収録された1曲)

オリジナルの「7月」は、ギターのチューニングや押さえるコードも独特のもので(これはbutchersの曲全般にいえることでもありますが)、その曲にまつわる様々なエピソード(第一回RisingSun Rock Festivalでの名演など)もあり、もはや超えられないひとつの極点のような存在となっていますが、
このCOWPERSの"シチガツ"はbutchersに対する最大級のリスペクトを持って、バンドが持ちうる最大限のポテンシャルを発揮して演奏された、本当に素晴らしいカヴァー曲になっていると思っています。


お題4.「お酒」
LCD Soundsystem - "Drunk Girls"

今回この5曲を選曲をするにあたり、あまりにもネガティブな方向に偏った選曲をし過ぎていると感じ、1曲くらい陽気な曲をと思いセレクトした1曲。
DFA(Death From Above) Recordsを主催するジェームズ・マーフィーが率いるディスコパンクバンド、LCD Soundsystemの3rdアルバムより。
ライブツアーに参加していた女性メンバーが、他の男性メンバーを「Girls」と呼んでいたというエピソードが元になり作られた、という曲であり、タイトルに"Girls"と記載されていますが実際には「酔っ払ったおっさん達」という意味合いの曲らしいw


お題5.「学校」
くだらない1日 - "帰宅部"

最後は今年リリースされたアルバムで日本のエモ/オルタナギターバンドの急先鋒に躍り出たくだらない1日の新作より1曲セレクト。
学校という場所は、人が人生で初めて遭遇するコミュニティである。
大抵の人がその枠組みの中で同じ方向に向かって進んでいく(それを青春なんて言葉で表したりもする)訳ですが、その人生の過程において若、さ故のささいな考え方や価値観の違いをきっかけに傷ついてしまい、時には孤立してしまうといった繊細さを内包している1曲だと感じます。

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