屯田兵、暗算す

「君も私も過去に生きていた先祖がいたからこそここにいる。例えば君の親を1代上とするだろ?じいちゃんばあちゃんは2代上だ。そうやってどんどん先祖にさかのぼっていったら10代上の先祖は何人だ?」


何の気なしに覚えていたものが全然関係のないタイミングで役立つということが結構あります。


私は以前住んでいた町でとある団体の代表をしていました。いや、今も代表なんですけど。
もともとは、一番面白い地域おこしや町おこしのアイデアを考えた人に100万円あげます!っていう市役所のコンペティションに応募した若者たちで構成されている団体でして、そのコンペティションが終わった後もなんか楽しいイベントとかしたいねーってことで公的に団体を立ち上げたんです。

私はその2代目代表。

地域振興の活動などをしていると、うれしいことに地元の企業の方などから応援していただくことがあります。
それも一つの企業からだけではなく、多くの企業や個人さんから一挙に応援をいただくこともあります。
あれよあれよという間に後援会なんてものを作っていただくことになりまして。

団体の幹部メンバーで、その後援会の会長さんに挨拶に行くことに。

やはり地元の有力企業の会長さん、風格や眼光が一味も二味も違います。いろいろな人を、物を、時代を見てきたんでしょうね。その目が私たちを品定めしているのがよくわかりました。

挨拶は和やかな雰囲気で始まりました。それぞれの自己紹介、どんなところが協賛してくれたか、会長の半生、等々。
この会長、話がとても上手なんです。老人のつまらん話と自称していたものの、全然そんなことない。刺激的な人生を歩んできた人の話はとても刺激的で、事実は小説より奇なりという言葉がぴったりでした。よく今まで生きてたなホント。

「世間話として聞いといてもらいたいんだけど、君はどこで生まれたんだ?」
私は北海道で生まれ、18歳で進学のためこの地に来たと話しました。
そうすると会長は少し顔がほころび、
「そうか、北海道か!やっぱり屯田兵の子孫は違うな、故郷を離れても開拓するスピリットがあるんだな」なんてお話をしてくれました。



そして、冒頭に至る。

「君も私も過去に生きていた先祖がいたからこそここにいる。例えば君の両親を1代上とするだろ?じいちゃんばあちゃんは2代上だ。そうやってどんどん先祖にさかのぼっていったら10代上の先祖だけで何人いると思う?」

突然問われるわけです。

皆さんはすぐに答えられるでしょうか?

中学時代、久保という同級生が居ました。
その男は現役で東大に入るほど頭がよかったのですが、そいつが1024という数字を見て「2の10乗じゃん」とつぶやいていたことを思い出しました。

私は足りない頭から久保を引っ張り出して言いました。

「1024人です」

その瞬間会長が満面の笑みになったことを今でも覚えています。
「そう、その通り!よくわかったな!いいじゃないか」

そこからは更に和やかになり、
「じゃあ20代上はわかるか?」
「いや、ごめんなさいすぐには出ないです」
「そうか、まあそれは仕方ない。しかし大したもんだ。今までその早さで答えられたのは2人しかいない」
と、感心してくれました。

言えない。計算なんてしてなくて、頭の中に久保が居ただけだなんて。


その後は更に上機嫌になった会長にたくさんお話を受けました。後援会の設立に至った経緯、後援会が我々の団体に望んでいること、それを叶えるためにこのお金を使ってほしいということ。

「つまりは、このお金で君たち若者はもっとたくさん飲んで遊んで語り合ってほしいというわけだ。」

飲むにも金が要る。遊ぶにも、語ろうにも金が要る。この地域で生きてきたジジババが若者に金を出すからもっと仲良く明るく未来を語り合ってほしい。困ったもんで、老人てのは口ばっかり出して金を出さない。それじゃだめだよな。これは好きに使ってくれ。使途は問わない。

と、あまり大きな声では言えないような金額を手渡ししてくれました。
(もちろんクリーンなお金です)

特に何にもならん知識でも覚えておくといいことがあるもんですね。

というわけで覚えて帰ってください。
2の10乗は1024です。2^10=1024
ちなみに2の20乗は1048576です。
(a+b)^2=a^2+2(a+b)+b^2っていう公式あったじゃないですか。
2^20=(1000+24)^2=1000000+48000+576
ギリギリ暗算できるかできないかくらい。
本当はもっといい計算方法があるんでしょうけど…


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