M2/OPからOrozco Methodへの移行ガイド
3BLDにおけるOrozco Methodの概要を解説します。ちょっとだけ4BLD以上のお話もします。
この記事の内容はM2(DFバッファ)/OPである程度安定して揃えられることを前提にしています。3分切れるとなお良い。
書きたいこと全部盛り込んだらすごい量になったので理解している内容は飛ばしながら読むことをおすすめします。
こんな人におすすめ
将来的にUF/UFRの3styleに移行するつもり
UF/UFRバッファに慣れたい
Commutatorに慣れたい
(変形)Y-permに飽きた
コーナーの実行を速くしたい
4BLD以上をやりたい
M2/Orozcoにすることもできますが、その場合でもエッジOrozcoの原理だけは理解しておくことをおすすめします。
エッジOrozcoの方が直感的に分かりやすい気がします。
こんな人にはそこまでおすすめしない
エッジの実行を速くしたい→M2法からOrozcoにしても大して変わらない
M2/OPで3分切ったことがない→もうちょい分析に慣れてからの方がいいかも
3styleに移行するつもりがない→3BLDならM2/OPで事足りる かも
3styleを既に覚え始めている→3styleでいいと思います
手順表
一応先に手順表だけ置いておきます。解説の中でも何度か再掲します。
エッジはUFバッファBUヘルパー、コーナーはUFRバッファUBRヘルパーの手順について解説します。
特にエッジは原理を理解すれば自然と導き出せる手順ばかりなので、M2/OP同様に全部丸暗記はしない方がいいです。
M2法の「2点交換」は3点交換というお話
何を言いたいのかなんとなく見当がついた方、飛ばして大丈夫です。
いやM2法はエッジ2点交換だよ?って思った方。ぜひ読んでください。
そもそも通常のルービックキューブの操作で純粋な2点交換は不可能です。
詳細は省きますが、通常の操作で他のパーツに一切影響を与えることなく2パーツを交換することは構造上不可能です。
M2法の「2点交換」では何が起きているのかという話ですが、実際に例を見てみましょう。
完成された状態からU2 M' U2 M R U M' U2 M U R'を回してください。
あとできれば比較のためにキューブを2つ用意してください。
DFバッファで分析するとFR UL UB UFになるはずです。
M2法で最初のFR手順(U R U' M2 U R' U')を回したところでM列の反転を直してみましょう。
FR手順を回す前後でどのような交換が起こっていますか?
よくよく観察してみるとDF→FR→UB(→DF)の3点交換が起こっていることに気づくと思います。
今度はFR手順をより細かく見てみましょう。
特にDF、FR、UBの3パーツの動きに注目してみましょう。
まずFR手順の「セットアップ」のU R U'を回した後です。
FR→UB、UB→BRとなります。
M2するとDFとUBが交換されます。
「逆セットアップ」のU R' Uを回すとUB→FR、BR→UBとなります。
M2してM列の反転を解消するとDFとUBが交換されて3点交換の完成です。
最終的にDFにいたターゲットはFRに移動し、FRにあった次のターゲットはUBに移動し、UBにいたパーツはDFに移動しています。
ポイントは「セットアップ」の手順でUB以外のM列が崩れないことです。
「セットアップ」によってM列に移動するFR、「セットアップ」や「逆セットアップ」によって影響を受けるUB、DFの3パーツ以外は全て元通りになります。
実際のキューブを使って動きをよく観察して、3点交換が起こる原理を理解しましょう。
なおこの3点交換のやり方だと次のターゲットになるパーツの居場所(=バッファ)が1手順ごとにDFとUBで交代する羽目になりますが、M2法では1手順ごとにM列自体を反転させたままにすることでバッファの移動を解消していたわけですね。
ここで説明した「M2法で3点交換が起こる原理」をより一般化したものがCommutatorです。
Commutatorについて
Commutatorというのはここでは2手順A、Bを用いてA B A' B'(A'はAの逆手順、B’はBの逆手順)と表せる手順のことを指します。
Commutatorを使うと任意のエッジやコーナーの3点交換手順が作れて色々便利なのですが、細かく説明するとそれだけで1記事になるので詳細は省きます。
以下に優秀な記事があるのでそっち読んでください。
「最もよく使われるCommutator」の章までの内容を理解できて直感的にも納得できれば大丈夫です。
読み進める場合はキューブを用意して回してみるといいでしょう。
この動画もわかりやすいです。
特に2:35〜のロボットアームとベルトコンベアを用いた図がインサート/インターチェンジの直感的な理解に役立つと思います。
一番は実際に回してみて動きを観察することだと思います。Orozcoの手順を回しながらパーツの動きを見てみましょう。
以下に読み進める上で必要な(この記事での)Commutatorを用いた手順の表記方法及びその性質についてまとめます。
[A, B] = A B A' B'
[C: A] = C A C'
[C: A, B] = C A B A' B' C'
([A, B])' = [B, A]
([C: A])' = [C: A']
([C: A, B])' = [C: B, A]
ちなみに簡単なCommutatorだけでもわかるとM2法の例外的な処理の手順やパリティ処理手順にもいくつか説明をつけられます。
UF手順 [U2 M' U2 M'] = [U2, M'] M2
DB手順 [M U2 M U2] = M2 [M', U2]
FU手順1 [D M' U R2 U' M U R2 U' D' M2] = [D: [M', U R2 U']] M2
FU手順2 [F E R U R' E' R U' R' F' M2] = [F: [E, R U R']] M2
BD手順1 [M2 D U R2 U' M' U R2 U' M D'] = M2 [D: [U R2 U', M']]
BD手順2 [M2 F R U R' E R U' R' E' F'] = M2 [F: [R U R', E]]
パリティ手順 [D' L2 D M2 D' L2 D] = [D' L2 D, M2] M2
UFとBDはちょっと特殊ですが、他は純粋な3点交換のCommutatorです。
というかM2法の手順も全部Commutator表記しようと思えばできますし、M2法の時に言っていた「セットアップ」ってCommutatorで言うところのインサートのことですね。
Orozco Methodの基本的な考え方
やっと本題です。でもCommutatorがわかればもう怖いものはありません。
Orozco Methodではバッファとは別にヘルパーと呼ばれるピースを設定し、
バッファ-(ターゲット)-ヘルパーの3点交換と
ヘルパー-(ターゲット)-バッファの3点交換を交互に繰り返します。
つまり1手順ごとに3点交換の方向が逆になります。
これにより
バッファにいたターゲットが揃う&次のターゲットはヘルパーに移動する
ヘルパーにいたターゲットが揃う&次のターゲットはバッファに移動する
バッファにいたターゲットが…
という風に1手順ごとにバッファとヘルパーが入れ替わることで擬似的な2点交換を可能にしています。
最初からヘルパーの位置にいたピースは1手順ごとにヘルパーとバッファを往復することになります。
分析の途中でヘルパーに当たった場合にこのピースが次のターゲットになります。
つまりヘルパーパーツのステッカーの手順は無変換です。やったね。ヘルパーパーツで別のステッカーの場合はEO/CO処理が入ります。カス
要は(3点交換のことも含めれば)M2法でM列を反転させずに一手順ごとにバッファを移動させるのと考え方は同じです。
エッジOrozco手順解説
奇数番目に実行する場合の手順を示します。前述した通り、偶数番目に実行する場合は逆手順(Commutatorの前後が逆の手順)を実行します。
L/R面:ヘルパーへのインサート
LU: [L' U' L U, M']
LF: [U' L' U, M']
LD: [U' L2 U, M']
LB: [U' L U, M']
RU: [R U R' U', M']
RB: [U R' U', M']
RD: [U R2 U', M']
RF: [U R U', M']
インサート手順でヘルパー(BU)に移動するパターンです。M2法と似ているのでとっつきやすい気がします。
ちなみにRUとRUの逆手順はOLLで使っています。4コーナー揃っていてエッジ2つが反転している2ケースです。
L/R列:バッファへのインサート
UL:[U2: M', R U R' U'] or [M, L U L' U']
FL :[M, U L' U']
BL :[M, U L U']
DL :[M, U L2 U']
UR :[M, R' U' R U]
FR: [M, U' R U]
BR: [M, U' R' U]
DR: [M, U' R2 U]
M2法ではB面を使った手順を使用しましたが、Orozcoではバッファ(UF)へインサートする手順を使うことでよりホームポジションから回しやすくなります。
バッファへのインサート手順なのでインターチェンジが先になります。
DF、DBピース:U面調整してS列インターチェンジorD面調整
FD: [U': S, R' F' R] or [D: U R2 U', M']
BD: [U': S, R B R'] or [D': U R2 U', M']
DF: [U: R' F' R, S] or [D: M, U' R2 U]
DB: [U: R B R', S] or [D': M, U' R2 U]
前者はU面を調整することでM列のインターチェンジからS列のインターチェンジになっているだけで基本的な仕組みはあまり変わりません。
後者のD面を調整する方はRDやDR手順へのセットアップです。
3BLDなら前者がかなり回しやすいのでオススメです。
後者は4BLD以上で使えます。
UBピース:EO or skip
UB:M' U' M' U' M' U' M' U2 M' U' M' U' M' U' M'
BU:skip
UBはEO手順なので偶数番目の時も同じ手順で大丈夫です。
手順間キャンセル読み
エッジOrozcoは殆どの手順のインターチェンジをMまたはM'で統一しているため、手順間でのキャンセルがしばしば発生します。
ぜひ短縮したいところです。
example: RF LB
[U R U', M'] [M', U' L U]
= U R U' M' U R' U' M M' U' L U M U' L' U
= U R U' M' U R' U2 L U M U' L' U
実行中の手順の先読みができれば結構キャンセル読みもしやすいです。状況次第ではS列インターチェンジのやつとかもちょっとだけキャンセルできたりします。
ちなみにM2法のM列反転は「手順間キャンセルが確定で入る」と表現することもできます。あれ、M2法って優秀?
ちなみにUFバッファURヘルパーってどうなの
U面インターチェンジのCommutatorが中心になります。Eが絡むインサート手順が多いです。
3styleやる上では役に立つ気がするので知っておいて損はないです。
例外的な処理が多く、手順間キャンセルが起きにくい(気がする)ので、速さを求めるならBUヘルパーでいい気がします。
コーナーOrozco手順解説
手順表でspeed-optimalとされているものとalternativeとして挙げられているものはどちらでも好きな方を使えばいいと思います。とりあえず前者の手順について解説します。
追加で説明した方が良いところなどあれば連絡ください。
ヘルパーへインサートしてU面インターチェンジ
LDB: [R D' R', U']
RDB: [R D R', U']
インサート手順でヘルパー(UBR)に移動するパターンです。奇数番目の場合はインサートが先になります。勿論偶数番目の場合はインターチェンジが先になります。
バッファへインサートしてU面インターチェンジ
LDF: [U, R' D R]
FDR: [U, D' R' D R]
FDL: [U, D R' D' R]
RDF: [U, R' D' R]
BDL: [U, R' D2 R]
BDR: [U, D' R' D' R]
インサート手順でバッファ(UFR)に移動するパターンは逆に奇数番目はインターチェンジが先、偶数番目はインサートが先になります。
R2してペルパーへインサート、D面インターチェンジ
LUF: [R2: R U' R', D']
BUL: [R2: R U2 R', D']
DBR: [R2: R2 U R2 U' R2, D']
U列の手順だとR2セットアップすることもあります。
特にDBR手順は大変なので丸暗記してもいい気がします。
R2してバッファへインサート、D面インターチェンジ
LUB: [R2: D, R' U R]
FUL: [R2: D, R' U2 R]
DFR: [R2: D, R2 U' R2 U R2]
DBR同様にDFR手順は丸暗記してもいい気がします。
バッファヘルパー間でインサートするやつ
DFL: [x': R U R', D2]
DBL: [x: D2, R' U' R]
UBL: [x R2: R U R', D2]
UFL: [U' x R2: R U R', D2] or [x' R2: D2, R' U' R]
少し異なる構造のCommutatorですが、DFLとDBLは簡単です。UBL、UFLも根本的なところは同じです。
UFL、UBLの手順はA-permです。正面と背面のどちらか片方しか使っていない人はこの機会にぜひ両方覚えてください。
ヘルパーピース
UBR: skip
RUB: R U2 R' U' R U' R' L' U2 L U L' U L
BUR: L' U' L U' L' U2 L R U R' U R U2 R'
分析でヘルパーピースに当たった場合です。
後ろ2つはCO処理ですが、EOとは違い偶数番目にこれらの文字が来た場合は反対側の手順(=逆手順)を実行してください!
Orozcoでは1手ごとにUFR-UBRの交換が起こるので、奇数番目と偶数番目ではCO手順でコーナーが回転する向きが逆になります(公式記録1敗)。
その他
M2/OPとは違いパリティ処理は一番最後に行います。
Orozco/Orozcoのパリティ処理:R U2 R' U2 R' F R U R U2 R' U' R U R' F'
UF-BU、UFR-UBRの2点交換2セットです。これどういう構造とかあるのかな…
M2/Orozcoのパリティ処理:U2 M' U2 M' U' M2 U2 M2 U' T-perm
[U2, M'] M2→[U': M2, U2]→T-permですね。
ヘルパーピースにEO、COがある場合は他の実行が終わった後などに処理する必要があります。忘れがちなので気をつけましょう。
ちょっと応用的な内容
上に書いてある内容のうち私が(ある程度)使っているものについて解説します。
M2/Orozcoで応用できる内容もあるので参考にしてください。
パリティ処理でラスト1ターゲットも簡単に処理できる場合
UFR-UBRの2点交換が絡む他の手順を使うことでパリティ処理が楽になるケースもあります。
以下に例を挙げます。
UF(ヘルパーの反転) + パリティ処理: F-perm
UR + パリティ処理: Jb-perm(+AUF)
UL + パリティ処理: Rb-perm(+AUF)
BUR + パリティ処理: r U' r' U' r U r' U2 r' D' r U' r' D r U'
M2/Orozcoのパリティ処理も同様にラスト1ターゲットの処理を同時に行える場合があります。
パリティ手順の最初「[U2, M'] M2」はM列反転時のDB手順なので、ラスト1ターゲットがDBの場合はDB手順を回さずに[U': M2, U2] T-permだけで大丈夫です。
他にも色々工夫できるパターンがあると思います。
パリティ処理でラスト1ターゲットも無理やり巻き込む場合
さらにパリティ処理手順に少し手を加えるだけでラスト1ターゲットの処理も同時にできる場合があります。
例えば通常のパリティ処理でUF-BU + UFR-UBRを行うところにM'のセットアップを加えるとUF-FD + UFR-UBRとなります。
なので[M': (通常のパリティ手順)]でFDとパリティの処理ができます。
DFの場合は[M': F-perm]で同様の処理が可能です。
D層にあるエッジは簡単にパリティ処理で巻き込むことができます。
コーナーでも同様の処理が可能です。色々実験してみてください。
…パリティあるなら交換分析すればいいじゃないかって?
そうですね
部分的に3style手順を覚える
UF、RUB、BURでEO、CO処理するくらいなら3style手順を覚えてしまおうというお話です。特にUFが絡む手順は4-moverが多いので理解しやすいです。
U面インターチェンジの手順も多いので、URヘルパーのOrozcoも理解しているとさらに取っ掛かりやすいと思います。
どうせ3styleに移行するなら今から覚え始めてもいいと思います。
3styleについては文献が山ほどあるのでここでは説明を省きます。
(4BLD以上)ウィング入門解法としてのOrozco
3BLDにおいてはOrozcoは3styleへ移行する予定がなければわざわざ習得する必要はない気がしますが、4BLDにおけるOrozco(UFrバッファ、BUrヘルパー)はr2法よりも習得しやすいと思っています。
3BLDのOrozcoの手順が書いてあったスプレッドシートにウィングOrozcoの手順も書いています。
以下におすすめする理由を挙げます。
エッジOrozcoから新しく覚える内容が少ない
3BLDのM2法はUF、FU、BD、DBの4ピースが例外であり、さらにUFとDBは一番シンプルな4-mover手順なので実質2つ覚えれば良く、あまり負担にはならなかったと思います。
しかしr2法では(UBr以外の)r列を崩すセットアップを使えないため、FUr、BDr、l列4ピースの合計6ピースが例外処理となります。ちょっと多くないですか?
一方ウィングOrozcoでは簡単なセットアップも含めれば全ターゲットの手順をr列インターチェンジで完結させることができ、殆どの手順はUFバッファBUヘルパーのエッジOrozcoと同じです。
4BLDのウィングにおいてはOrozcoの方が習得しやすいと思います。
UFrを使うナンバリングを使える
DFrバッファとUFrバッファだとナンバリングの位置が違います。
4BLDのウィング3styleではUFrバッファが主流な気がするので、最初からOrozcoを習得して後者のナンバリングに慣れていた方が3style習得する時にも便利な気がします。
あとなんか後者のナンバリングの方がなんか納得できる。
分割数が多い方がCommutatorがわかりやすい
分割数が多い方が保存されるピースが増えるため、Commutatorの2変換それぞれで崩れる場所が意識しやすくCommutatorの理解は簡単になるような気がします。
具体的な手順の解説は省きます。ここまで読める人なら大丈夫な気がします。てかエッジOrozcoの内容とほぼ同じ。
まとめ
OrozcoはCommutatorの理解に役立つ
コーナーOrozcoはOPよりは速いはず
エッジOrozcoはM2と同じくらい(M2の方が速い気がする)
4BLD以上やりたい人は是非Orozcoやろう、楽だよ
3BLDで3styleに移行するつもりならOrozcoやってもいい
Orozcoユーザーいないの?Orozcoの解説もっと書いてほしい
色々説明しましたが最終的に自力でまとめてみたり実際にキューブ回してみたりするのが一番理解に役立ちます。理解に困ったらとりあえずなんか手を動かしてみましょう。
すごい文字数になって草 めっちゃがんばった
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