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「Packing Her Favorite」から見る久川颯のスタイル【第18回俺達の少女A本選】

お世話になっております、まつもと詩織です。
アイドルマスターシンデレラガールズで遊んでいます。

新総選挙「Stage for Cinderella」の形式に合わせて、4回の予選グループが行われてきたユーザー企画、第18回「俺達の少女A」もついに本選が開催されました。
まだTSがあるので、ぜひこの本選に向けて作られた珠玉の音源10件を聞いてほしいです!

俺達の少女Aとは
アイドルマスターのアナタの担当・推しアイドルを3分以内の音源で熱く語ってもらい、送って頂いた音源をニコニコ生放送で配信する「アイドルプレゼン生放送」です!

https://daisaku-noiru-circle.wixsite.com/syoujo-a

長いSfCを駆け抜けるためのひとつの大きなモチベーション、そして楽しい時間になってくださった当企画には本当に感謝しています。
今回のアイドルは久川颯。単品音源をアップしています。

題材選び

複数人を3分以内で紹介する予選レギュレーションから、本選ではもはや懐かしの1音源で1人紹介する形式に戻りました。

僕がこれまで作った単独音源は「氏家むつみ」について4件(内1件採用していただいて、落選音源もニコ動に一部上げています)。そのくらい語りやすいアイドルだったのもありますが、そもそも見てる幅が狭かったのもあります。

2018年末からの追加新アイドル7人のうち誰かは注目しようと思って、一番親しみやすかったのは久川姉妹。
素直に「応援よろしくね!」と言ってくるはーちゃんを応援できる良さを感じてフラスタ企画に参加したり、凪ちゃんが新しい世界に足を踏み入れて手探りで手触りを確かめていくような姿にイメージソングをあててみたりしていました。
そのうちモバマスのフリトレで151'sはじめ色んなアイドルに触れていく期間に入り、担当どうこうはぼんやりしていきましたね。そんな流れがSfCや複数人少女Aにもハマって、楽しい思いをさせてもらいました。

そして本選。誰を取り上げるかを悩むより先に、グループC期間中に颯でアイデアが思いついていたので、そのまま突っ切りました。noteで颯のことをめちゃめちゃ考察し狂っていたのもあって、あとは素材をどうピックアップするかだけだったんですよね。
無事どころかぶっちぎりで予選通過してくれてよかったです。

今回のフォーマットは、第17回俺達の少女Aの黒土さんによる「依田芳乃」音源に影響を受けています。当時聞きながら「3分で短歌2本紹介できるんだ!」って衝撃を受けたんですよね。

3分という短くも長い話を聞かせて印象に残すには、さらに端的なキラーフレーズみたいなものがあると強いので、短歌という気持ちいいリズムにテーマを集約させるっていうのも良いよな〜と思っていました。

僕が短歌や川柳に触れたのは主にオモコロチャンネルですが……自分でも氏家むつみのツイッター企画やMOIWの企画で詠んでみたり。なんでもやってみるもんですねえ。

そして過去の久川颯音源からもたくさん学ばせていただいて、ノリも寄せました。
モニパセルさんの「颯のすごさを分かりやすく伝える象徴としてのシンデレラガール」の話は、本選のモチベーションとして強かったです。
みくもさんの「いつか武器がバレる瞬間が来る」という話を受けて、僕なりに颯の武器をソロ曲から見出して伝えるという課題意識がありました。あとはーちゃんの声を乗せたり歌ったりして楽しかったです。

自分で語ってみて実感しますが、やっぱり颯ってロジカルでシステマチックに面白くて、それでいて実践に重きを置くことでの流動性とフランクさが周囲を巻き込んでいって、本当に楽しい。
今回の音源にしても、颯が僕を巻き込んで引き出してくれたという感覚があります。颯ってそういう子なんだよな〜

音源の話

さて、経緯語りが長くなりましたが、音源の話をしていきます。
どういう順番で思いついたかは忘れてしまったんですが、バーっと言いたいこと書いた中からテーマを見出して、細部の言葉を微調整するって流れでしたね。原稿に注釈を加えた画像がこちら。

構成は前半が「広く、吸収して自分なりに形にすることについて」後半が「特に、他人との関わりについて」
後半に他人との関わりをピックアップしようと決めたら、とっ散らかっていた前半を削ってまとめることができました。

1.颯のモチベーション

「向上心」というパブリックイメージを想定して、さらに踏み込んだ「探究心」をアピールしました。行動力のもとになっている颯の動機、欲求は色々考えようがありますが、今回僕は「ワクワクに向かう」「楽しいことが好き」に絞りました。

競走動機、理解動機、感染動機という区分けは、僕の愛読書『14歳からの社会学(宮台真司 世界文化社)』で知りました。特に感染動機は他と比べてイメージしづらいですが、「スゴイ」と直感して乗り移られるように体が動く感覚です。「スゴイ人」に感染し、真似から入って学んで身についていき、やがて卒業してまた別の何かに感染して……を繰り返しているうちに自分も誰かから「スゴイ」と思われる人間になっている。
久川颯ってまさにこれをどんどんやっている子なんですよね。

颯はアイドルになってから見た色んなものにすごいすごいと目を輝かせてきました。仕事現場やライブでのファンとのやり取り、先輩アイドルや博物館のガイドさん。見たもの、聞いたことをさらに「今の自分にとってどう大事か」を言葉にする。
めちゃめちゃテンポよく感染と卒業を繰り返していけるのは、そもそも「アイドルってすごい!」という最初のカードからの衝動がずっと続いているからでしょう。
時に表現力に不足を感じることはあっても、経験を積んでどんどん豊かになっていくこと請け合いです。

2.パッキングとは

颯の魅力を端的に表現するのは難しいと言われていた中来たソロ曲の試聴。「旅支度」というテーマ取りには度肝を抜かされましたが、考えれば考えるほど颯の活動を象徴し支えるものとして素晴らしいと思い知ります。

中でも今回は「引き算」という言葉を引っ張り出せてよかったです。
バッグに詰めたいものをたくさん持っているけれど、お仕事のコンセプトや今の自分の身の丈に合わせてレギュレーションに収める。そして準備した自分で思いっきり飛び込んで目標達成を目指す。
制限があるからこその自由って本当に楽しいし、その繰り返しに挑んだ経験って、色んな場面で活きてくるんですよね。

3.颯の弱点と対策

颯のすごさを伝えるぞ!という意気込みでありつつ、やはり弱点も知ってもらったほうが親しんでもらえるものです。
颯の弱点は過剰に深刻に語られがちなので、その潮流への反発になってしまいそうにもなりますが、なんとか制御してちょうどいいバランスを目指しました。

弱点というものは初めからその人の属性としてあるわけではなくて、何かしたいことがあるという「姿勢」があって初めて隙、リスク、弱点が生まれるものだと今回思いました。
弱点が生まれてしまうことを容認してでも!やりたいことがある。颯にとってそれは「あえてバッグの片すみに隙間を空けて、お土産を入れたい」ってことなんです。すっごい。

あれだけ自分を魅せたい自分を好きになってもらいたいってアグレッシブな子が、独りよがりじゃなく現地で得たものを迎え入れようとしている。これって直感的なイメージに反するようで、「comic cosmic」や「VOY@GER」などで実態をよく見ると確かにそうなんですよ。これを捉える歌詞の表現力!

颯のそういうバランスがどう培われたかと言えば、14年間の実家での暮らしでしょう。「学校とかでは双子でよく比べられてたけど、両親はそういうんじゃなかった」「凪のアイドルといえば颯だった」といったエピソードから、自分が楽しむことで他人を楽しませることの楽しさを以前から知っていたことが分かります。
それをもっと広げていこうと思えばこそのスタイル。大好きな自分に胸を張りつつ、他者を迎え入れる隙間も作っておくことが、どれだけワクワクすることか!

そのためなら、姿勢を取ることで生まれる弱点だって乗り越えていこうと思える。すごい。

サマーサイダーで起きたことを「コンセプトのための自己犠牲になりかけた」と表現できたのは僕の中で会心ですね。
悩みに取りつかれた颯が「それっぽくやるのは得意だから」と空元気で仕事に向かうシーン。これは「本当の自分を見つけられずに表面的な何かのフリしかできなくて哀れ」という以上に、「異様な環境で自分を見失ってなお最善を尽くそうとしていてヤバイ」と思うんですよ。

それは「気前が良い」という姿勢ゆえに、本当なら休んだっていい状態でも自己犠牲で頑張ってしまうという弱点なんだと見ました。
でもアイドルって、損得勘定じゃない気前の良さで楽しさや幸せを振りまくものなんですよね。だからこの姿勢も弱点があるからって譲れない。

颯は「みんなそれっぽいこと言ってるだけじゃん!」と期待の言葉を振り払い、しかし「諦めたくない!」と奮起して「応援してくれるみんなを信じて頑張ってみるよ!」と期待の言葉を拾い直していく決意をすることで、自分も他人も大事にする道を選びました。とんでもねえな。

ここで少し話を戻すと、色々やれることはあるけれど、悩みのドツボに嵌まって視野が狭まるという「引き算」によって「今は何もできないけど頑張る青春らしさ」を出した仕事だと思っています。危なっかしいな。

というわけで、颯の姿勢とそれゆえ生まれる弱点、そしてその対策を呈示できました。

4.他者との混交

僕は颯の魅力を語るときよく「シンプルに魅せるその奥に、世界がそもそも持つ複雑さを備えている」という言い方をします。
というのも、久川颯が負うひとつの大きなテーマは「他者との混交」ではないかと思っているからです。

最近読んで衝撃を受けた『デリダ 脱構築と正義(髙橋哲哉 講談社学術文庫)』という、フランスの哲学者ジャック・デリダの解説書に出てくるのが「他者」や「混交」という用語です。

問題は、「差延としての反復」なのである。この反復可能性の議論によってデリダは、言語、記号、マーク、意味、経験などを「同一性」の支配下から「差異」と「他者性」に向かって解放しようとする。同じであることよりも異なること、つねに同一にとどまるのではなく、たえず変化し、他なるものとなり、多なるものとなっていくこと、自己同一性のうちに滞在するのではなく、「他化をめざして」外出し、他者に触れ、他者となること。こうしたことへの力強い肯定が、デリダの議論を貫いている。つまり、デリダはここで、言語や記号や一般に意味にかかわる活動のまっただなかに、プラトニズムを突き崩すあの流動きわまりない「決定不可能なもの」の次元を開き、「まったき他者の侵入」を迎えるチャンスをうかがっているのである。

『デリダ 脱構築と正義』

これを踏まえての僕の深読みがこのツイート。

あらかじめ想定された理想を目指すのでなく、準備したものを使って他者と出会い違う自分に出会うことを目指す。
颯を見るのに脱構築論が援用できるし、脱構築論を理解するのに颯のスタイルは参考にしやすいんじゃないかと思います。ややこしい話だけど面白いんですよ~(颯にこの話しても困りながら「まあ応援してくれてるってことでしょ!」って汲んでくれる)

原稿では[スタートアップ・ミライ]の話をしているのに、画像ではブランSSレア[メイク・ハー・スター]を使いました。未来もきっとすごいですが、今の颯がみんなと触れ合っている様子を見てほしかったのでこうしました。

最後は、僕が勝手に作ってダイマ画像などで多用している「みんなに会いに行くアイドル」というキャッチコピーで締めました。颯のシンプルさと複雑さを乗せられるフレーズで気に入っています。

というわけで、色んなものを詰め込んだ音源になりました。自分でもよくこんなにシンプルに削り出せたなあと感心しています。

あと地味にBGMのインスト音源をいじってギターソロが入るようにしたんですよ〜

放送を終えて

放送でも「今の時代らしい中庸を行っている」「要領の良さと自立心を持ちながら不安ながらもやっていく現代の若者っぽさがある」と拾ってほしい颯らしさを見てもらえてホッとしました。
そこから凪とともにシンデレラガールズやSfCを引っ張っている話に広がったのも嬉しかったですし、「はい色をはー色へ」って部分は自分でも気づいていなかったシンデレラフレーズだったのでビックリしました。

「ぱきはー」って略はずっとなんとなく使ってたので、初めて聞いたって人が意外といて、そういえば勝手に言ってただけだったと思い出しました>ヮ<

「俺達の少女A」には本当にお世話になりました。なんとなく夜中に放送URLが流れてきて「大人になってもこんなに楽しそうに遊んでいる人たちがいるのか!」と希望を持てました。
自分でも乗り込んでいきたくて、アイドルを付き合わせるような形にもなりましたが、それに報いることもできたんじゃないかと自惚れています。

主催のよしひこさん、コメンテーターの大作さん、あいうえおさん、聞いてくださった方々、ともに投稿したみなさん、本当にありがとうございました。

自分の中から思いもよらないしっくりくる表現が出てくる楽しさ、そして誰かに見てもらってまた発展していく面白さは、今後も何かの形でやっていきたいです。

本選の放送を終えたとき、こんなに肩の力抜いてまた頑張ろうって思えるのすごいなって思ったんですよね。あんなに大変だったのに。みなさんの音源もパーソナリティの方々も楽しんでいるし手引きをしてくれる。だからもっともっとシンデレラガールズを楽しんでいきたいですね。

さあいよいよSfCが決着!どんな結果になるか、その後どんなイベントが来るのか、とても楽しみです!
ありがとうございました~~!!

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