時間の不思議
充実した時間が過ぎるのは早い。
怠惰な時間が過ぎるのは遅い。
しかし、未来からそのときを振り返るとき、事態は逆転する。
充実した時間を振り返るとき、こんなにも長かったのかと思う。
怠惰な時間を振り返るとき、こんなにも短かったのかと思う。
あっという間に過ぎた時間は長く、だらだらと過ごした時間は短い。
時間は常に一定の速度で進んでいる。
しかし、ぼくたちの体感する時間は毎回異なる。
もう5分、と感じれば、まだ5分とも感じる。
時間を図る単位は人間が恣意的に決めたものに過ぎない。
万人に共通した時間認識を持たせるために、秒、分といった単位を作り出した。
これらは速度を尺度にしている。
ぼくたちは、時間を長さではなく質で捉えているのだ。
経験をしたことはないが、走馬灯というのはその最たる例であろう。
一般的な時間にして一瞬だが、自分の過ごしてきた人生を質として捉えているからあらゆる記憶を蘇らせることができるのだ。
ぼくの生きる1秒と、君の生きる1秒。
速度という尺度では同じだが、質は全く異なる。
ぼくたちは、全く違う1秒を生きたのだ。
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