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《今週のプリンス読書会 #79》1984 Week 28: 『Ice Cream Castle』40周年 ジェリー・ハバード

Duane Tudahl さんの(『PRINCE AND THE PURPLE RAIN ERA STUDIO SESSIONS: 1983 AND 1984』)を1週間分ずつ読む《今週のプリンス (What Did Prince Do This Week?) 読書会》で聞いたことのメモと感想です。
2024/7/14配信分。読書範囲は、SUNDAY, JULY 8, 1984〜SATURDAY, JANUARY 14, 1984


今週のプリンス読書会は、アトランタ・ブリスのRain Stormを聴きながら始まりました。

今週のメインテーマは1984年7月9日にリリースされたアルバム『Ice Cream Castle』です。

Funkatopia:ポール・ピーターソンとジェリー・ハバード(Interview: Paul Peterson & Jerry Hubbard (40 Years of Ice Cream Castle))

読書会プレイリストにも入っていますが、Funkatopiaでポール・ピーターソンとジェリー・ハバードの素晴らしいインタビューがアップされたとのことで、読書会の中でも紹介され、ロッキー・ハリスのことなどが取り上げられました。

Funkatopiaでは、別の日にマーク・カーディナスのインタビューもあったばかりで、すっかり『Ice Cream Castle』40周年セレブレーション体制になっています。

The Timeは、1983年のうちにジミー・ジャムとテリー・ルイス、続いてモンテ・モアが抜け、新しく入ったのが、セント・ポール・ピーターソン(Key)、マーク・カーディナス(Key)、ロッキー・ハリス(Bass)でした。1983年10月4日のファースト・アヴェニューでのライブもこのメンバーです。その後、ロッキーはパープル・レインの撮影に遅刻してクビになってしまい、短期間しか在籍していませんでした。

#EroticCity40シンポジウムの発表(Chris Robさん)では、“The Bird”の中に残っている貴重なロッキーのコーラス部分を聴かせてくれました。よくこの動画だけを見ると、もしかすると、ロッキーのパフォーマンスが良くないのでプリンスからクビにされたような印象を受ける可能性もありますが、Funkatopiaのインタビューを聞く限り、ロッキーはすごいミュージシャンだったと、みんな言っていました。写真を見てもかっこいいですし、10月4日のライブ音源もバリバリの演奏だと思います。映画の撮影での遅刻がどうしても許されなかったのだと思います。当日の朝に急遽呼ばれたベーシストがジェリー・ハバードだったというのが、インタビューでの話です。

シンポジウムの発表は、音源を流しながらの発表で他の部分もとてもおもしろかったです。

リリースされた“The Bird”はライブ音源をもとにしてプリンスが手を加えたものですが、Tudahlさんの本によると、ロッキーのベースは、プリンスが自分の演奏ですっかり録り直して置き換えてしまい、さらにミックスで低くされたということです。

個人的な妄想では、プリンスはロッキーたちメンバーの演奏が嫌だったのではなく、映画やアルバムには、ライブ感は欲しいけれど、ライブのままの音を使いたくなかったのかと想像します。自分で弾いたベースもミックスで下げて、キーボードは追加してるので、サウンドトラックとして欲しい音は、ライブそのものの音ではなかったのではないかと。メンバーで録り直す時間がないから自分で弾いちゃうしかなかったのでしょう。

Funkatopiaのインタビューに戻りますと、ジェリーもロッキーもミネアポリスのノースサイドから出たミュージシャンで、お互いをよく知っていましたし、The Timeに入ったときも、モーリスたちを知っていました。インタビューの中で、ジェリーは、NorthsideとCommunity Centerという言葉を使っていました。

ジェリーの話をかいつまんで書きますと、こんな感じです。

・The Timeのこと
ロッキーは知り合いで尊敬していたので、The Timeの仕事が入ったと聞いて「おめでとう」と言った。ジェリーは当時、アレキサンダー・オニールと仕事をしていて、アレキサンダーから「例の仕事の話は来なかったのか」といじられて何のことかと思っていたら、ロッキーが採用されたThe Timeの仕事のことだった。でも、ロッキーは朝の5時か6時に集合する『パープル・レイン』の撮影に遅刻してしまい、即、クビになった。ロッキーの後釜として自分がThe Timeに入ったときは、遅刻だけはできないと周りからも言われて緊張し、何時間も前に現場入りしていた。バンドのリーダーは基本的にジェシーで、とても厳しかった。自分は振り付けができず、ジェシーにも全くダメだときついことを言われた。自分の父親も厳しかったので、あまり気にはならなかった。ダンスは毎日練習していた。そのうち、ジェシーにOKをもらい、「きっと練習すると思っていたよ」と言われた。

後半では、辞めていったThe Timeのメンバーへの思いを、しっかりと話してくれました。

・The Stylle Bandのこと(59:00あたりから。The Time に入る前の話)
The Tasteで演奏していて、The Stylle Bandを紹介してもらった。そのとき、バンドはアンドレの妹の家の地下でリハーサルをしていた。マザラティのCraig "Screamer" Powellもこのバンドにいた。このバンドの稼ぎだけでは生活できなかった。ミネアポリス北部をバイク(自転車?)で移動していたとき、アレクサンダー・オニールが車から声をかけてきて、そこからベースの仕事をもえらえることになった。(よく知らないのですが、アレクサンダー・オニールはクセのある人だったようで)怖いものなしの振る舞いで、プリンスにさえ遠慮しなかった。ジェリーが急にThe Timeに加わる時はアレクサンダーともめた(プリンスにアレキサンダーの仕事があることは伝えたが、地元のクラブで演奏するのと映画に出るのとどっちがいいと言われ、すぐに映画撮影に入ることになった)。

・ジェシーかThe Familyか(The Time 休止後)
プリンスのもとを離れ、A&Mで 『Johnson's Revue』を作るジェシーに声をかけられる一方、プリンスのところではThe Familyが作られ、どちらかを選択しなければならなかった(1:10:00あたりから)。プリンスはヴォールトからマスターを何曲か出してきて聴かせてくれた。その中に“100 MPH”や“Wonderful Ass”などがあった(“100 MPH”を聴かされた話はTudahlさんの本にも書いてありました)。親とも話し、ここはプリンスだろうと決めていたが、ミュージシャンとしてプロデュースや作詞作曲をしたいという気持ちやThe Family のプロジェクトがなかなか始まらなかったこともあり、ジェシーのところへ少し手伝いに行ったら、誰にも話していないのにすぐにプリンスからの給料の支払いが停まった(狭い世界です)。

・プリンスとはよく話をした
他のメンバーはすぐに帰るけれど、みんながいなくなってからプリンスとよく話をした。プロデュースや曲を作ったりしたいと話したときは、プリンスは、どういうこと?と言い、理解してくれなかった。作曲家やプロデューサーはいらないと(音楽が大量に湧き出してくるプリンスに必要なのは演奏するミュージシャンということ)。

・プリンスやモーリスがファンに騒がれるところを目撃した話
マーク・カーディナスの運転でスタジオに向かうとき、バンの助手席に乗っていたプリンスは、リムジンに乗ったたくさんの女の子たちに見つかり騒がれたけれど、プリンスは完全にスルー。
モーリスがポルシェ911に乗せて遊びに連れていってくれたとき、やはり車に乗った女の子たちにキャーキャー騒がれ、モーリスは「Hello, ladies」みたいなことを言い、着いておいでよと言って、女の子たちの前を走り出したけれど、ポルシェ911で急発進してぶっちぎったというエピソードもあり大笑いでした。The Timeの大事なメンバーが抜けたあとに入った自分に対して、モーリスは優しく接してくれたという話が印象的でした。

・Drive Yo Cadillac
ジェシーの“Crazy”の7インチシングルのB面の“Drive Yo Cadillac”はジェリーの作曲です。スライとのセッションのとき、楽屋でこの曲をかけていると、スライが通りかかり、かっこいい曲だね、君たちの曲?ときいてきて、みんなが、うちのベーシストが作ったんと答えたという話はすごいです。

その後の音楽活動の話も、ミネアポリスのミュージシャンの話も盛りだくさんでした。2000年頃には、ジョン・ブラックウェルやマイク・スコットと日本で仕事をしていたそうです。

あまり話せないけれど、ジェシーと何か作ってるところだと言ってました。

The Time のオリジナルではないメンバー

Funkatopiaの二つのインタビューを聞くと、今回インタビューを受けた3人と、すでにこの世を去ったロッキーのことが、とてもよく伝わってきました。

セント・ポールは、高校を出たばかりの若者で初々しいというか緊張していただろうと思います。

マーク・カーディナスは、そのころミネアポリスでどんな仕事でもしながら演奏していて、年齢も30歳前後だったこともあり、セッション・ミュージシャンとしてプロっぽく、プリンスとの距離は遠いまま仕事をこなせる、普通の人らしい客観的な目線を感じました。気さくで、おもしろいおじさんでした。

そして、ジェリー・ハバードは、ミネアポリスの北部のコミュニティで、みんなと一緒に育ってきた人でした。Tudahlさんの本で、ハバードがプリンスと会話した内容が2箇所くらい書かれていて、プリンスは新メンバーと親しく話をしていて珍しいと思っていたのですが、もともとの知り合いだから会話ができたのだということがFunkatopiaのインタビューからわかりました。ポールやマークは、ほとんど会話をしていないようでしたし。

Black Male Confidant

プリンスを長く追いかけてきた方は詳しいのかもしれませんが、読書会でC. Leighさんが、各時代にプリンスには心を許せる黒人男性の腹心(親友)がいたという話をしていました。Funkatopiaのインタビューを聞いて、ジェリー・ハバードもその一人だったと気づいたと。その系譜は、アンドレ、モーリス、ジェシー、ジェリー・ハバード、ジェローム、リーバイ、ソニー・T、マイケル・B、ヘイズ氏、カーク、ジョシュア・ウェルトンという感じです。プリンスがThe Familyのプランについて話をしたのはジェリー・ハバートでした。


読書会の動画(1984 Week 28)
https://www.youtube.com/live/JTNVeK9Hs7Y?si=Ys7r1JcwFxlD3Og7


読書会プレイリスト(1984 Week 28)
https://youtube.com/playlist?list=PL6YE_-qkWwSmul0XUmev7Utxmv0nBupkG&si=uB2BIWrxMsKWMTsI

読書会のサイト

https://www.polishedsolid.com/what-did-prince-do-this-week/

https://bookclub.polishedsolid.com/

Duane Tudahlさんのサイト

https://www.duanetudahl.com/welcome

https://www.duanetudahl.com/prince-book

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