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レブロン・ジェームスと一緒にプレーするっていうこと

現地3月1日のCLE@BOS戦、イーストのエリートチーム2つによる激戦は、『4Q男』アイザイア・トーマスの活躍もあり、セルツが僅差で制した。
白熱した試合の結果の他方、終盤のキャブスのオフェンス選択が話題になった。その中で「チームメイトとしてのレブロン・ジェームス像」を上手く描いた記事があったので、和訳した。以下全訳。

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プレーオフの雰囲気さえ漂う、試合終盤の狂乱の応酬の中において、明晰な頭脳と冴えた局面の理解力は一番大切だと言っても過言ではない。それらを己の優れた才能と組み合わせれば、勝ちの目を自分に引き寄せることができる。
それはシュートが入ったか否か、プレーが奏功したか否か、の問題ではない。少なくとも良い形ーーその状況下における最善ではないにしてもーーを演出できるだろう、ということである。

試合終盤のこの考え方は、かつても今も、レブロン・ジェームスの代名詞だ。スーパースターはその双肩に全ての重責を担うべきだと考えられている一方で、レブロンは最も得点の可能性が高い選択肢を探す方を長く好み続けている。その選択肢は自分である時もあれば、他の誰かの時もある。
これについて以前は批判を受けたものだったが、近年ではめっきり聞かなくなった。彼はあらゆることに文句を垂れる批評家をことごとく黙らせてきたが、中でも彼の試合終盤のゲームプランはなかなか理解されないものの1つだった。

レブロンにとっては、彼が独りで困難に立ち向かう方がずっと易しかったことだろう。結論がシンプルだからだ。成功すればヒーロー、失敗しても、最低でも「勇敢に散った」ことになる。だが、試合の命運を自らの手に握る決意もさることながら、自分の読みを信じ、仲間を信じ、それでも責任は自分にあると理解していながら、結果と向き合う決意はそれ以上に重い。

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セルティックスとの試合で、残り数秒、2点差を追う場面で、その決意の新たな一例を目撃した。試合が終わって数分後、シャワーを浴びさえしないで、レブロンはメディアを集めた。

その1つ前のポゼッション、キャブスはカイリー・アービングの素晴らしいレイアップのおかげで得点できていた。ボストンがスイッチしたことで、アル・ホーフォードが自身よりずっと速いアービングをガードしなければならなかった結果、あの驚異的なフィニッシュが生まれた。
このシナリオこそ、レブロンとキャブスが次のポゼッションでもう一度求めていたものだ。ただこの時はセルティックスはスイッチせず、エイブリー・ブラッドリーがアービングについた。

2人のバトルは緊迫し、熾烈だった。アービングはドリブルで抜きにかかったが、彼の一挙一動に対しブラッドリーは一歩一歩ついていった。偉大なボールハンドラーと最高のオンボールディフェンダーによって、世界最高峰のスリリングな1on1が繰り広げられた。最も純粋なバスケットボールだ。

会場に緊張感が立ち込める中、ブラッドリーは一歩も引かなかった。アービングに難しいジャンプシュートを強いたのだ。勝負を制したのはブラッドリーだったが、キャブスにとって悪い形ではなかったし、ああいうシュートを打つことはリーグ全体を見てもよくあることだ。ヒーローのようにプレーする権利があるとしたら、昨年のファイナルで象徴的なショットを沈めたアービングはそれに値する選手だ。キャブスが恐ろしいのは、勝負どころでレブロンに拘泥しなくていいことだ。

リバウンドをトリスタン・トンプソンが取り、キャブスのポゼッションは延命した。ボールはレブロンの手に渡り、レブロンは再び計算する。フロアを見渡し、素早く正確に状況を読む。残り時間は溶けていく。
ジョー・クラウダーがチェックに来るのが見えた。彼が飛び出た穴を埋めようと、アイザイア・トーマスがそっちに走り出すのも。

つまり誰かがオープンになっている。そしてそれは、週の初めにキャブスデビューを果たしたばかりのデロン・ウィリアムズだった。レブロンは彼にしかできないパスをデロンに飛ばし、デロンはオープンスリーに備えた。

デロンは反対側のコーナーに、遠く1人で立っていた。セルティックスはダブルチームを試みたということだ。レブロンにとっては関係ない話だったが。

チームメイトとしてデロンとまだ23分しかプレーしてないことも関係なかった。デロンが外したこともまた、関係なかった。デロンはオープンだったからボールを受け取った、それだけのことだ。

「彼にチャンスを与えた。それを彼はモノにできなかった。それだけさ」シナリオを描いたレブロンは、敗戦後冷静に語った。「俺達は望み通りのショットを打てたんだ」

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正しいプレーを選択するのは、もちろんレブロンにとってはただの習慣だ。だが、彼のチームメイトーー多くは他のチームから来たベテランーーにとっては、全てを意味する。レブロンと一緒にプレーしたことで、キャリアが長引いた選手もいるし、完全に開花した選手もいる。これは偶然ではない。

今シーズンだけを取っても、デリック・ウィリアムズはリーグをさまよった末ついにホームを見つけたし、アトランタから来たカイル・コーバーはキャブスに加入以降3Pを50%以上の確率で決めている。彼らはデビッド・グリフィンGMーー彼は自分の「持ち札」の余り物を使って手助けできるベテランを連れてくる芸当をマスターしているーーがロスターに加えた多くの選手のうちの、直近の例でしかない。

昨年、リチャード・ジェファーソンのバスケ人生には第3章が加わった。チャニング・フライはプレーオフでスターのようだった。その前の年に加入したJRスミスは、気まぐれな変人からファイナルでヒーローになった。イマン・シャンパートは不可欠なロールプレイヤーであり続けた。
クリーブランドを離れた選手ですら、レブロンとフロアを共にしたことで恩恵を受けている。ティモシー・モズゴフとマシュー・デラベドバが大きなFA契約を結んだことから明らかだ。
レブロンとプレーすること、それ自体が役得なのだ。

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リーグで最高の選手であることを主張するためには、いくつかの重要なアイテムが必要だ。同年代の選手を相手にどれだけの数字を残した?チームの成功にどれだけ貢献した?コート外ではどれだけ有意義な存在なのか?
だが、判断材料はもうひとつある。「チームメイトをどれだけ活かしたか?」である。

仲間を楽にしてやること、それがスーパースターがすることだ。ディフェンスの注意を引き付け、ダブルチームを引き付ける。その結果、チームメイトは自分たちの役割に徹することができる。能力の範疇を超えたことはしなくていい。

「周りの選手を活かすということなら、彼がナンバーワンだよ」とコーバーは語る。「もちろん、彼がみんなを成功できるシチュエーションに持ち込んでくれているのは明らかだけど、彼には自信が漲ってる。話す時も、彼は激しく、熱心だ。みんなに自信を注いでくれるんだよ。
彼の技術レベル、そして人間性とリーダーシップのおかげで、彼の周りの人間は向上するんだ」

コーバーはアトランタのオフェンスの焦点だった。クリーブランドではそうではない。エリートクラスの1on1の能力が欠如していたホークスは、持てる能力を賢く使った。コーバーで言えば、リーグでも有数のシューティング能力を。ホークスは彼を動き回らせ、スクリーンを使い、ディフェンスを引き寄せて味方をオープンにした。

彼らのオフェンスが機能する様には美しさすらあったが、肉体的疲労も相当なものであった。13年もリーグにいる彼を心配する声もあった中、いよいよコーバーは衰え始めた。しかし、彼は再生を遂げている。レブロンとプレーすることで。ベースラインからベースラインまで走り切ったら、今やコーバーは存在しているだけで良いのだ。レブロンが注意を引き付けてくれるだけでなく、他の誰にも出せないパスを出す能力と意志が彼にはあるからだ。

「レブロンにとっては、シューターのちょっと近くにディフェンダーがいるくらいなら、オープンと同じなんだ」とコーバー。「他の誰もがオープンだと思ってなくとも、彼がオープンだと感じたら、彼はパスを出せる」

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例のプレーから窺える要素は他にもある。もちろんリーダーシップ。目にはつきにくい要素ではあるが。レブロンは時々の激しい発言も注目を集めるが、デリック・ウィリアムズが感銘を受けたのは、彼がどれだけ技能の向上に努力を払っているかであった。

「レブロンは1日欠かさず努力を重ねている」とウィリアムズは語る。「努力量はスタープレーヤーの中でも人それぞれだが、彼は毎日本当に努力する。彼のワーク・エシックがロッカールーム全体に浸透してるんだ」

そのおかげで要求される水準は高くなり、それに満たないプレーヤーにとっては残念なことになる。適切なプレーヤーが、キャリアの適切なタイミングでレブロンと一緒にプレーするのは、悟りの境地に達するようなものだ。

「競い合い、正しいバスケをプレーする選手にとって、レブロンは最高のチームメイトの1人だよ」とジェファーソン。「高レベルの競争と正しくプレーする仲間たち、それこそレブロンが誇りにしてるものだ。」
「彼は非常にハードな練習をこなし、我々チームメイトは彼についていけばいいんだ。新しく加入したメンバーにとっても、難しいことじゃない」

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デロン・ウィリアムズのシュートの話に戻ろう。現状カンファレンスで1番のライバル相手にタフな試合を落としたので、彼らのロッカールームは悪い空気に満ちてるのではと考えた人もいたことだろう。そんなことはない。変な緊張感は無く、競争心は溢れたままだ。リーダーの言葉があるから。

「いい試合だった。両チーム見事な試合運びだった」レブロンが語りかける。「終盤、相手が少しだけ俺たちより多くシュートを決めただけだ。何も悪くはなかった」

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キャブスは分かっている。この先、より大きな舞台で、今回のような試合が多く控えていることを。それに向けて、新加入の選手がフィットできるよう努めなければならないことも。3月の厳しいスケジュールが待っていることも。
だが同時に、キャブスは分かっている。彼らにはレブロンがいることを。上昇のきっかけが手に届くところに多数存在していることを。

「全員があのショットは決まったと思っていた」ジェファーソンは語る。「みんなが良いシュートだと思った。良い形だった。彼にはあんな形で何百万本も打たせるよ。次は決まるだろうね」

これがレブロン・ジェームスと一緒にプレーするってことだ。