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ミームNFTの成功要因を探る(前編)

「NFTバブル」が過ぎ去って1年以上が経ち、現在はNFTが冬の時代に突入したと言われています。

このタイミングだからこそ、改めて「NFTバブルとはなんだったのか?」「NFTはなぜあんなにも価格が高騰したのか?」を振り返りつつ、その成功要因を探ってみようと思います。

はじめに:技術としての「NFT」と概念としての"NFT"


「NFT」とはなんでしょう?と聞かれたら、あなたはどう答えますか?
「=画像」でも「=アート」でもありません。

「NFT」の正体を端的に説明するとしたら「ブロックチェーン上で、唯一無二性を証明できる識別子が付いたトークン」となるのではないでしょうか。
少しわかりにくいので分解すると、

(1)ブロックチェーン上で
(2)唯一無二性を証明できる
(3)識別子が付いた
(4)トークン

この4つの要素を全て満たしたものが「NFT(非代替性トークン)」の実体です。つまり、ブロックチェーンの中で使える鑑定書みたいなものと僕は捉えています。しかし、一般的に"NFT"という言葉が使われる時には、画像やアート、さらにはコレクション全体を含めた包括的な意味で使われます。
事実、多くの人々がこのように概念的な意味で"NFT"を捉えているのではないでしょうか?ともすると、人々が"NFT"に感じる価値の源泉は、技術以外の何かであり、それを探ることがNFTプロジェクトの成功要因の分析になるのではないかと考えます。

なぜ最初にこのようなまどろっこしい説明から入ったかと言うと、技術としての「NFT」を活かしたプロジェクトが成功してるかというとそんなことはなく、概念としての"NFT"の成功は、実は「NFT」という技術がどうこうという話とは全く別物であるというのが僕の結論だからです。このような部分を意識しながら記事を読み進めていただけるとこの分析記事が理解しやすいと思い、あえてこのような説明を最初に書かせていただきました。

ユーティリティNFTとミームNFT


「NFTの価値ってなんだろう?」と考える時に、次に分けて考えないといけないのが実用性のあるNFTと、実用性のないNFTの存在です。

例えば、仮想通貨では、何かしら実用性を備えたトークンは「ユーティリティトークン」と言います。そして、実用性が無いにも関わらず、バズや共感だけで多くの人を惹きつけるトークンは「ミームトークン」と呼ばれます。

NFTにもこれと共通した分類ができるのではないかと思います。そこで、便宜上この記事では、実用性のあるNFTを「ユーティリティNFT」、実用性のないNFTを「ミームNFT」と分類して、主に実用性が定められていないミームNFTについて、その価値を探っていきたいと思います。

なぜミームNFTに絞って分析するかと言うと、ユーティリティNFTは機能的な理由から価値が付くことは理解できますが、なぜ実用性のないミームNFTに大きな価値が付くに至ったのかは明確な答えがないように思うからです。だからこそこれを考察することは、色んな意味があるのではないかと考えます。

ミームNFTの価値の源泉を、考えるにあたり、改めて、2021年のNFTバブルの重要イベントを振り返ってみましょう。

2021年のNFTバブルを振り返る


1月〜3月
「NBA Top Shot」の流行やデジタルアーティストのBeepleのNFT作品が高額で落札されます。これが世間でNFTが話題になった最初の出来事でした。ある特定の分野でNFTを使った商品が流行ったり、作品が評価されることが、NFTが知られるスタートでした。

4月〜6月
アート文脈でNFTを使った作品がいくつか高額落札されるというニュースが出てくるようになると、パリスヒルトンやEminemやThe Weekendといった海外のミュージシャンやセレブがこぞって自身のNFTを発表し始めます。このようにしてセレブリティカルチャーと一気に結びつくことで「NFT」という言葉が一気に広まり、ファッション(流行)性を帯び始めます。

これに目をつけたのがYuga Labsです。NFTに興味を持つ有名人に積極的にBAYCのプロモーションをかけて、有名人の保有者を増やしていきます。有名人にTwitterのアイコンにさせるなどのマーケティング戦略が大成功し、セレブがこぞってBAYCを保有することでその知名度を一気に加速させます。これをきっかけに「デジタル空間のアイデンティティの表現」という価値が形成されていきます。ちなみにBAYCにユーティリティはなく実用性は皆無です。完全なミームとして世界的に注目された初のNFTかと思われます。

7月〜8月
夏頃になると、OpenSeaの取引高が爆発的に増えているというニュースが世界を駆け巡ります。2次流通次にロイヤリティが付くことでクリエイターの新しいマネタイズの手法として注目を集め、多くのクリエイターがマーケットプレイスに出品を始めます。作品が増えることで、マーケットプレイスに訪れる人が増え、取引が活発化しました。このようにNFTに流動性が生まれることで、投機商品としての価値が認知されてきたように思えます。
また、Nouns DAOの立ち上げもこの頃で「NFT=コミュニティ参加券」としての価値観も作られていきました。

9月〜2022年前半
夏が過ぎると、いよいよバブル本番という状況を迎えます。OpenSeaには有名プロジェクトのコピープロジェクトが乱立し、それまで誰も注目していなかった『CryptoPunks』や『EtherRock』と言った古参ミームNFTに注目が集まり高額の値が付きます。日本でもイケダハヤト氏が紹介したことで、一気にNFTの認知が広がりました。

これ以降、多くのクリエイターがNFT市場に参入し、それまでweb3に興味がなかった人も巻き込むムーブメントとなりました。


つづきはこちら

ミームNFTの成功要因を探る(中編)

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