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僕は歩兵でいい。(くぴぽの「絶対結婚しような!!!!」のライナーノーツのようなもの)

これははっきり言って贔屓目だが、くぴぽ「絶対結婚しような!!!!」はアイドルのアルバムとして間違いなく2021年でNo.1の作品であるし、「今の時代にアイドルが出すべきアルバム」を問うた作品であると僕は思う。

アルバム「絶対結婚しような!!!!」は既にライブでも披露されシングルとして発表されていた6曲に未発表の新曲5曲を加えた11曲構成のアルバムだ。
これはアイドルのアルバムとしてはなかなかにボリューミーだし、そもそもサブスクリプション全盛で新曲は出来たそばから単発で発表することも多いこのご時世にアルバム単位で作品を発表すること自体が珍しいかもしれない。
しかし、そんな時流に逆らいながらも「絶対結婚しような!!!!」はアルバムである必要があったように思う。

くぴぽの楽曲はあらゆるジャンルのミュージシャンによって書かれているし、それぞれの色が非常に濃く、サウンド面での統一感というものは無いに等しい。
しかし、このアルバムは非常にコンセプチュアルである。
「絶対結婚しような!!!!」というセンセーショナルなタイトルが、そのままアルバムのド真ん中を貫いているのだ。


このアルバムは、アイドルとアイドルオタクの、微妙で、儚くて、そして神聖な関係性を見事に表しているように感じる。
「絶対結婚しような!」はアイドルオタクの常套句であるが、もちろん本当に推しメンと結婚できる、したいと思ってこの言葉を発しているオタクは少ないと思うが(稀にいるかもしれないがあまり触れない方がいいと思うので触れません)、かといって、それがまったくのおふざけというか、本心じゃないわけではないのがミソだ。
この言葉には、オタクの、アイドルに対してしか言えない、微妙な、そして最大級の愛が詰まっているのだ。

アルバムの殆どの楽曲には主役となる人物像が見えていて、パーソナルな面を描く歌が多い。
どこか全体的に内省的で、個人の心象風景を辿っていくようなものが多いように思う。
そこからはアイドルとオタクが非常に近しい存在でありながら、お互いの深い内面の部分では決して交じり合わない、交じり合えないという虚しさや葛藤を感じるし、それでいて、アイドルとオタクの関係とはこれでいいのだ、とお互いに断じているようにも見える。

その微妙さ、ある意味では残酷な、他にはない関係性が、僕としては非常に美しく感じるし、そうであるべきだとも思っている。
それが、歌詞を辿りながらこのアルバムを聴くと、浮き彫りになってくるのだ。


ラストの曲、「しゃぼん玉ホリデー」の歌詞の最後の一節は「絶対結婚しような」と締めくくられ、アルバムをリピート再生していれば、1曲目の「絶対、結婚しような!」が再びスタートする。
これは推していたアイドルやグループが卒業、解散などをしても、なお、また別のアイドルやグループを推し続けるアイドルオタクをなぞらえているようにもとれるし、一途なオタクの推しメンへの純粋な愛が永遠にループし続けるようにもとれる。

「絶対結婚しような!!!!」は、アイドルと、アイドルオタクの本質に迫ったアルバムではないかと思う。
逆を言うと、アイドル側もオタク側も目を背けておきたいものが詰まっているといえなくもない。
実は「絶対結婚しような!!!!」はそのタイトル以上に、コンセプトや内容がセンセーショナルなのだ。
本当に凄いアルバムを作ったものだ。

このアルバムを聴いて、僕も今一度アイドルオタクとしての自分を省みている。

だが、アルバム10枚買うともらえる「推しメンと結婚できる」特典券が手元にある時点で省みてはいけないような気がしたのでやめた。

まぁそれはともかく、くぴぽ「絶対結婚しような!!!!」はアイドルオタクならば必聴のアルバムなのだ。

おわり

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